松山猛の台湾発見/梅山茶と文山包種茶

2019.01.19

台湾嘉義県にある国家風景区(国定公園)、阿里山。(画像提供:台湾観光局)
台湾には数多くの茶産地がある。それぞれに独特の茶を生産しているが、1980年代になると次々と新しい産地が開発された。そのひとつが高山茶の清らかな香りを求めて開発された阿里山の中腹の梅山の茶だ。そしてさっぱりした味わいを好む人には台北の東の山地の、坪山産の文山包種茶が好まれるようになった。さらにこの章では急須で入れるのが苦手という人のために、コーヒーメーカーでの新しい功夫茶の試みを紹介する。

松山猛・著『ちゃあい』より(1995年、風塵社刊)


梅山茶


 台湾に帰国していた義父がある時、今年は割合良い茶が手に入ったと、送ってくれたのが「梅山茶」だ。
「梅山茶」のふる里は、美しい御来光で有名な、あの阿里山のふもとにあるのだそうだ。昨年の物もおいしかったが、今年の茶はまた格別においしく思えた。
 茶の樹は植えられて5年くらいで、良い茶葉をつけ始めるが、もっとも旨味が出てくるのは7年目くらいからだと、以前台湾の茶商の人に聞いたことがある。
「梅山茶」は今、第1期の飲みごろの時期を迎えているのである。このチャンスをのがすわけにはいかない。
「梅山茶」も烏龍茶系で、その製茶の方法は、以前から有名だった南投県の「凍頂烏龍茶」と同じだ。一心二葉の手摘みの葉は、充分にねじれていて、熱湯をそそぐと、驚くほど大きくひろがる。
 僕はその畑を見たことがないが、地図によると相当な山地で、標高もかなり高い、いわゆる高山茶に属すわけだ。したがって香り高い茶ができあがる。
 さて、時々知人たちから、昔ながらの巧夫茶式に、小型の急須でいれる以外に、おいしい飲み方はないのかと、質問されることがある。
 読者のなかにも、せっかくいい茶葉らしいのに、おいしくいれられない、と思っている方もおられるかもしれない。そんな人へのおすすめは、フィルター式のコーヒーメーカーを使う方法である。
 紙フィルターに茶葉をちょっと多目にいれて、コーヒーのときと同じように、ただスイッチをいれるだけ。ただし僕のテストした結果だと、1回湯を通すだけでは不充分で、手間だけれど一度出した茶湯をもう一度タンクにいれてフィルターを通してやるとよい。
 つまり第一煎では、茶葉が充分に開ききらないのである。
 コーヒーメーカーなら、沸騰させた湯になるから、烏龍茶にはちょうどよい。それに必要以上に濃くですぎることもないから、いちどに多勢で飲むとか、オフィスで飲むのに都合がよろしい。ただたいていのコーヒーメーカーは、水以外は入れるな、と注意書きをしているので、その点は考えに入れておいて欲しい。
 暑い日本の夏場であれば、大量にいれた茶を冷蔵庫で冷まして飲むのも悪くはない。それにしても昨年は暑く長い夏だった。あの酷暑にしばしばめげそうになったけれど、そんなときだからこそと、僕は愛用の急須で、熱い梅山茶をいれて、そのかぐわしさで元気を出したのだった。