ダイバーズウォッチについて多く寄せられる質問に対して、防水性やダイビングスケール、水深計など、Q&A形式でお答えしながら掘り下げてみよう。
スキューバダイビングに防水性はどれくらい必要か?
ダイバーズウォッチを製造するブランドの中には300mまたはそれ以上の防水性が必要だと主張するところがある。他方、200m防水で十分とするブランドもあるし、ダイビング用とうたっている200m防水のウォッチも市場にはある。国際標準化機構の潜水時計規格(「ISO 6425-1996」、以下ISO)では、ダーバーズウォッチの防水性は100m防水以上であるべきだとなっている。
これらの深度はプロフェッショナルダイバーでない人が身に着けるには、明らかに深すぎる。趣味程度でダイビングを楽しむ人はほとんど40m(130フィート)以上には潜らない。それ以上深く潜るためには、減圧にかける時間の把握や、専用の呼吸ボンベといった特殊装備など、技術的で特別なトレーニングが必要となっている。
この矛盾がどこから来るかというと、時計が工房で防水検査を受ける時の環境は人工的に作りだされたものであり、実際にダイビングした際に体験する環境とは異なるという点にある。検査時には、時計は固定され、パッキンは新品であるし、ケースは組み上げられたばかりであるため、防水性を阻害する要素は何もない。検査機器には、着用者が着水した際や、水へ潜った際のさらなる圧力、あるいは潜水または浮上する際の温度変化によりケースが伸縮する現象などは組み込まれていない。その上、防水性はパッキンの劣化にも強く結びついている。また衝撃やその他の厳しい使用環境によって、ケース部品の組み合わせが完全な新品の時に比べて緩くなったりする。こういった要素が付加されていくため、着用者の時計に水が入り込んだりしないよう、より高い防水性をもって安全策としているのである。
どのような特徴によって、ダイビングに十分な防水性を持たせることができるのか?
ダイビングに必要な防水性を持たせるために、時計に求められる特徴はいくつかある。ほとんどすべてのダイバーズウォッチにはねじ込み式のケースバックとリュウズが採用されている。Oリングがリュウズ、チューブ、裏蓋、風防に取り入れられている。ケースとサファイアクリスタル製風防は、ダイバーズウォッチ以外の時計よりも厚めに設計されており、より水圧の高い深海へ潜ることを前提に作られた時計では圧力に抵抗できるようドーム型のサファイアクリスタル製風防やステンレススティール製リングによるケースの構造強化が図られている(ロレックスの「オイスター パーペチュアル ロレックス ディープシー」が例に挙げられる)。
その他のダイバーズウォッチの特徴は?
ほとんどのダイバーズウォッチには、潜水時間を計測するために回転ベゼルが備えられている。また水中でも視認性を高める蓄光塗料が、針とインデックスに使用されている。
ISOによるとダイバーズウォッチは回転ベゼルまたはデジタル表示装置のような「タイムプリセレクティング装置」の搭載と、また暗所でも25cmの距離から目視可能な文字盤が求められている。同時にISOは、瞬時に時計が稼動状況にあるかどうかを確認できる必要があると規定している。この要件を満たすひとつが秒針である。
多くのダイバーズウォッチはステンレススティール製またはチタン製ブレスレット、もしくはラバーストラップを備えている点も挙げられる。その他にもナイロンなど、さまざまな素材で作られたストラップもある。ダイバーズウォッチの中には、潜水スーツの袖の上からも装着できるよう調節ができるシステムを組み込んだブレスレットやストラップが付属しているものもある。
ヘリウムバルブまたは深度計、もしくはその両方を装備しているダイバーズウォッチもある。
ヘリウムエスケープメントバルブとは?
ヘリウムエスケープメントバルブとは、潜水中の時計ケースの内と外の圧力を同じにするためのツールである。より深く潜るための飽和潜水において、潜水タンク内はヘリウムガスを含んだ空気で満たされる。ヘリウムの分子は非常に小さく、時計のケース内に入り込み、内側からケースを支える役割も果たしている。減圧するプロセスにおいて、潜水タンクの中の圧力は時計ケース内の圧力よりも早く減圧が進む。その結果、サファイアクリスタル製風防が破損してしまう可能性がある。それを防ぐためダイバーズウォッチの中には、ケースサイドにバルブを設けて、減圧時にヘリウムがケース内から外へ排出されることによってケースの内と外の圧力を同じに保つことができるものもある。
ヘリウムエスケープバルブを装備した時計は多いのか?
ほとんどのダイバーズウォッチにはヘリウムエスケープバルブは装備されていない。この仕組みが必要とされるのは本格的な潜水スーツを着用して、飽和潜水によって水中で作業を行う、プロフェッショナルダイバー向けとなるからである。