ほとんどのダイバーズウォッチで、逆回転防止ベゼルが採用されるのはなぜか?
多くのダイバーズウォッチで採用されているのは、反時計回りの片方向のみに回転するベゼルである。これによって時計回りにベゼルが回転する誤作動を防ぎ、水中での経過時間を誤って実際よりも短く認識してしまうことを防いでいる。結果、より確実な経過時間を計測することができるのである。時計の中には、回転式インナーベゼルを採用することによって、誤作動による回転を防いでいるものもある。
ほとんどのベゼルのミニッツスケールが最初の15分間だけを表示しているのはなぜか?
これは1950年代に多く見られたダイバーズウォッチのデザインに倣ったものである(おそらくロレックスの「サブマリーナー」から始まっているのであろう)。この表示方法がどのようにして定まったのかは明らかではない。初期のサブマリーナーの広告ではダイバーが潜水時間をセットしている様子が描かれており、ミニッツスケールを使って自身の潜水時間を正確に読み取ろうとしている。ただし、この情報がなぜ役に立つのかは説明されていない(またダイビングプロセスもそれを求めてはいない)。
減圧停止の際に、このスケールを用いると説明する向きもあるが、これには問題がある。なぜなら、減圧停止するたびにベゼルをリセットする必要があるからだ。これではベゼルのもともとの使用目的であるトータルの潜水時間を測ることができなくなってしまう。
可能性の高い説明としては、減圧停止を要さない水深33mまでの一般的なダイビングにおいて、15分が最大潜水時間の目安とされるというものがある。15分のスケールによりダイバーは自身の潜水時間がどれぐらい残されているか正確に知ることができるのだ。
チューダー「ペラゴス」。自動巻き(Cal.MT5612)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Ti(直径42mm)。500m防水。Tiブレスレット。43万円(税別)。㉄日本ロレックス ℡03-3216-5671
水深計搭載のダイバーズウォッチはどのように機能するのか?
ほとんどの場合、ケースサイドにセンサーが備えられており、センサーは水圧に反応して変形する。変形の度合いが水深をフィートまたはメートルに変換し、針によって文字盤上に示す仕組みになっている。
オリスの「アクイス デプスゲージ」では、これと違ったタイプの水深計が用いられている。一方の端部がふさがれた、円形に曲げられた小さな導水管で構成される水深計だ。その管の中に入り込む水の量が管の脇に設けられた水深計に示されることで、ダイバーは水深を知ることができるのである。
水深計搭載の機械式ダイバーズウォッチはいくつあるか?
非常に少ない。前述したオリス「アクイス デプスゲージ」の他に、水深計を搭載した機械式時計は、ブランパンの「X ファゾムズ」、IWCの「アクアタイマー・ディープ・スリー」、ジャガー・ルクルトの「マスター・コンプレッサー・ダイビングプロ・ジオグラフィック」、パネライの「パネライ ルミノール 1950 パンゲア デプスゲージ」(ムーブメントは機械式だが深度計は電気式)などである。
水深計搭載の時計の中に、潜水中の最も深い深度を記録するものがある理由は?
それには3つの理由があり、まずは安全を目的とするためだ。潜水時間の限界をあらかじめ潜水プランに記録させておき、これによってダイバーは最も水深の深いところまで潜水時間内に向かうことができる。つまり潜水プランを立てるために、ダイバーは自分が潜水するだろう最も深い水深を知る必要がある。ふたつ目の理由としては、一般的なダイビングルールとして、ダイバーはその潜水で予定されている最も水深の深いところまで最初に向かうべきだという点である。これにより、深く潜る際に吸収した大量の窒素を排出するために、最大どれくらいの時間が必要となるかを知ることができる(深く潜れば潜るほど、血中窒素濃度は高まる)。3つ目の理由は、多くのダイバーが推奨していることだが、減圧停止を要求しない減圧不要のダイビングであっても、最も深い水深と水面の中間地点で数分間の「安全停止」を行い、窒素ガスの排出を行うためだ。
IWC「アクアタイマー・ディープ・スリー」。自動巻き(Cal.30120)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。Ti(直径46m)。10気圧防水。ラバーストラップ。販売終了。㉄IWC ℡0120-05-1868
機械式時計で、最も高い防水性を備えているものは?
CXスイス・ミリタリー「20000フィート」だ。チタン製で厚さは30mmもあり、サファイアクリスタル製風防だけでも10mmの厚みがある。
潜水管理がコンピューターによって行われる現代において、ダイバーズウォッチは必要か?
必ずしも必要とは言えないが、ダイバーたちがダイバーズウォッチを着ける理由は、コンピューターが潜水中に充電切れを起こした際のバックアップとするからである。現在では腕に着ける潜水用コンピューターも多く出回っており、価格もリーズナブルだが、ただこれらのコンピューターであっても、あくまでも気休め的な意味合いのバックアップ程度にしかならない。もしダイバーが腕時計をコンピューターのバックアップとして用いるなら、水深計や圧力計、潜水プランなど、潜水用コンピューターが提供する情報を網羅するバックアップデバイスも必要となるだろう。
では、なぜ多くの人々がダイバーズウォッチを買い求めるのか?
理由はいくつかある。高い防水性がもたらす安心感を好む人たちも多い。深い潜水に耐える時計であれば、水泳やシュノーケリングなどでの使用に耐えるであろうと結論付けるのである。ダイバーズウォッチの回転ベゼルや、暗所でも視認性を保つ蓄光性の針やインデックスを好む人たちもいる。またスポーティーで技術力が表れるその外観に心引かれる人も多いのだ。