CAMPANOLA COMPLICATION PERPETUAL CALENDAR
カンパノラの第1作としてデビューした「パーペチュアルカレンダー」のトノー型が2019年、13年ぶりのフルモデルチェンジを果たした。ダイアルの立体感とケースの造形により一層の磨きをかけた新作は、カンパノラにふさわしい高品質な1本に仕上がっている。
細田雄人(本誌):文 Text by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
2000年に産声を上げたカンパノラ。国産高級時計というカテゴリーに属する同ブランドは、“宙空の美”をデザインコンセプトに、星空や銀河を連想させる優美なプロダクトを数多く送り出してきた。特に近年は、螺鈿(らでん)細工を文字盤に取り入れたモデルを積極的に展開。日本の伝統工芸を巧みに用いて表現される〝宙空の美〞は、「皨雫(ほしのしずく)」や「千夜燈(ちよのとぼし)」といった難読なモデル名と相まって、日本らしさを詰め込んだ高級時計のイメージを確立することに成功した。
しかし“和”の要素をまとった高級時計という認識だけでは、決してこのブランドについて正しく理解したとは言えないだろう。カンパノラといえばクォーツ式の複雑時計を得意とした希少なブランドであるからだ。今回はカンパノラが持つ複雑時計の作り手としての魅力を、「コンプリケーション」コレクションから新たに発売される「パーペチュアルカレンダー」で見ていきたい。
「パーペチュアルカレンダー」は永久カレンダーと200年カレンダーを備えたシリーズである。後者は、1900年3月1日〜2100年2月28日までの期間であれば、2時位置と4時位置のプッシャーを押すことで、任意に選んだ日が何曜日であるかを知ることができるというものだ。ごく一部のモデルを除き、一般的に日付戻しがタブーとされている機械式ムーブメントの永久カレンダーでは実現し得なかった機構である。そもそも永久カレンダーといえば、2100年まで修正がいらない、つまりカレンダー機構は一度合わせたら理論上、時計を止めない限りは触れる必要のないものだ。従って、この「パーペチュアルカレンダー」は、カレンダー操作の必要をなくすことで所有者の手をわずらわせないという永久カレンダー本来の利便性に加え、カレンダーを操作することで“過去と未来を旅している気分”が味わえるエンターテイメント性という、相反する魅力を持った時計なのだ。
フルモデルチェンジされる新作の特徴は主に外装にある。まず、かつてラインナップされていたトノー型ケースが復活した。そしてトノー型の採用にあたり、旧型トノーよりも縦の長さが約3㎜ほど短くされ、より腕なじみが向上。さらに3つのプッシュボタンのガタつきが抑えられるなど、使い勝手が改善されている。また特筆すべき点にケースの仕上げが挙げられる。同モデルではラグと一体化したケースバックに、ミドルケースをはめ込む2ピース構造が採用されており、これらは二度組みされる。つまり、ケースバックとミドルケースの両方を磨いた後、組み立てた状態でも磨くために一度ムーブメントを入れずに仮組みし、さらに磨きをかけるのだ。その後分解し、ムーブメントをケーシングする。結果、2ピースの別体ケースながらチリは精密にそろう。
クォーツ式の複雑時計を所有する喜びと楽しさを兼ね備える「パーペチュアルカレンダー」。これまでより一層質が向上した同作は、まさに国産高級時計を代表するブランドにふさわしいモデルだ。
トノー型として13年ぶりにフルモデルチェンジを果たした新作。永久カレンダーの利便性と、“時間旅行”を可能にする200年カレンダーの遊び心を併せ持つ。電気鋳造で作られた立体感ある文字盤や、二度組みによるチリのそろったケースなど、高品質な1本。クォーツ(Cal.6704)。SS(縦52.8×横41.0mm)。日常生活防水。38万円。2月15日発売予定。
こちらは黒文字盤&ストラップモデル。五徳リングをはじめとする立体感のある文字盤は、古代の天体観測機器、アストロラーベからデザインの着想を得たものだ。なお、カンパノラのストラップにはワニ革が使用されている。クォーツ(Cal.6704)。SS(縦52.8×横41.0mm)。日常生活防水。36万円。2月15日発売予定。
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