「伝説」に新たな1ページを加えるG-SHOCK金無垢モデルがついに製品化

ウォッチジャーナリスト渋谷康人の 役に立つ!? 時計業界雑談通信

「伝説」に新たな1ページを加えるG-SHOCK金無垢モデルがついに製品化

渋谷ヤスヒト:取材・文・写真
Text & Photographs by Yasuhito Shibuya

限定G-SHOCK

「G-SHOCK FAN FESTA SHIBUYA 2018」でステージに登場した伊部菊雄さん。この日は、G-SHOCKの歴史解説や「PUFFY&OKAMOTO’S」のジョイントライブ、注目のバンド「アレクサンドロス」のライブや空手世界チャンピオンの演舞、柳家花緑師匠によるG-SHOCK開発秘話落語なども披露された。

 時計ブランドがジャーナリストの僕たちに、発売前に試作品を見せてくれることは、20年を超える経験でもほとんどない。でも2015年3月のバーゼルワールドのあるブースで、ある人からひとつの試作品を見せられた。

 あるブースとはカシオのブースで、ある人とは“G-SHOCKの生みの親”である伊部菊雄さん。そして見せられた試作品は、初代G-SHOCK「DW5000」シリーズ(DW5600)の金無垢バージョンだった。

 それから約3年9カ月が経った2018年12月13日の木曜日、渋谷で開催されたG-SHOCK 35周年を記念したイベント「G-SHOCK FAN FESTA SHIBUYA 2018」のステージに伊部さんが登場。2015年のあの金無垢のG-SHOCKを35本限定で製品化、発売することを発表した。そして、その場でその落下試験、耐衝撃試験の動画を上映した。新構造によって金無垢ケースでもG-SHOCKが掲げる“ABSOLUTE TOUGHNESS(アブソリュート・タフネス)”が実現できたのだという。なお、価格等は2月中にも発表される予定だ。

35本限定で発売予定のDW5600の金無垢モデル(ゴールド製ケース&ブレスレット。ただし最終仕様ではない)。価格と販売方法は2019年2月中に発表される予定。外観は、筆者が2015年のバーゼルワールドで見せてもらった試作品とほぼ同じようだ。なお、DW-5600C-1Vは映画『スピード』(1994年)で主演のキアヌ・リーブスが着用したことで世界的に有名になった。

 スクリーンに映し出された金無垢モデルを見て、2015年に試作品を見た時のことを明に思い出した。あの時、即座に「これは凄い!」「売らないんですか」と思わず口にしたこと。金無垢ならではの圧倒的な存在感に衝撃を受けたことを。

 しかしその時、伊部さんは「見せた人がみなそうおっしゃるので、驚いています。でもこの試作品には耐衝撃性はありません。製品化のためには、社内テストをクリアしなければ売れません。これは、これまでのご褒美に、遊びで作ることを許されたものなんです」と語っていた。

 G-SHOCK の35周年を記念してわずか35本の限定発売だが、今改めてひしひしと感じるのは、G-SHOCKのオリジナリティーの偉大さである。中でもこの初代DW5000シリーズのデザイン、スタイルの独創性だ。
 日本製ウォッチの機能性や品質、コストパフォーマンスの高さは、世界の誰もが認めるもの。でも、ここまで独創的なものは、日本の時計作り百数十年の歴史でも他にない。

 1983年に誕生したG-SHOCKは、電池交換式からタフソーラー&電波&スマートフォンリンクへと劇的に進化を遂げた。そしてこの先も、「G-SHOCK伝説」は進化しながらさらに輝きを増すだろう。世界を驚かせた金無垢モデルという新たなページを加えて。