2017年10月26日、ポール・ニューマンが所有していたロレックスのデイトナが、フィリップスのオークションで1775万2500USドルで落札された。これは時計オークションにおける最高落札額を更新する巨額であり、当時大きな話題となった。
世界にはこの他にも世界最高を記録して人々を驚かせてきた時計がいくつかある。今回は、薄型化や小型化において世界記録に輝いたタイムピースをいくつか紹介しよう。
Text by Thomas Wanka
極薄の自動巻き腕時計
ピアジェの「『アルティプラノ』アルティメート・オートマティック」は、2018年の発表当時、それまでにないような圧倒的な極薄時計として認められた。その厚さわずか4.3mmのケースに、200を超えるパーツを組み込んだ自動巻きキャリバー910Pは技術面でも注目を集めた。これは名機900Pの文字盤側外周に自動巻きのペリフェラルローターを載せることにより、自動巻き化しても薄型化を実現させたものだ。ローターの素材は22KゴールドをPVD加工したもので、時計を巻き上げるのに十分な慣性を確保している。ケースの直径は41mm、18Kホワイトゴールドと18Kピンクゴールドの2モデル展開がある。
ピアジェ
「『アルティプラノ』アルティメート・オートマティック」
世界最薄のミニッツリピーター
厚さわずか3.12mmの手巻きキャリバーBVL362を搭載し、ケース厚6.85mmの薄さを誇るブルガリ「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター」。ミニッツリピーターとしてムーブメントとケースの両方が世界で最も薄いと認められているモデルである。ケース素材には密度が低く軽量なチタンを採用。チタンはケース素材だけでなく、文字盤にも用いられた。この文字盤はインデックスとスモールセコンド外周部分がくり抜かれており、これにより音響効果が高められている。ケースサイドにあるリピーター作動用のプッシュボタンを押すことで、遠心力を利用したガバナー(リピーターの調速装置)がハンマーを一定の間隔で駆動させ、ゴングが規則正しく鳴らす音を聞くことができる。
ブルガリ
「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター」
世界最小機械式ムーブメント
ジャガー・ルクルトの手巻きキャリバー101は世界最小の機械式ムーブメントであるというだけでなく、その記録を他のどのブランドよりも長く保持しているという点でも世界記録を更新している。キャリバー101が誕生したのは1929年のこと。それ以降現在まで、ジャガー・ルクルトはこれを作り続けているのだ。14×4.8mm、厚さ3.4mmのムーブメントは98点のパーツで構成されており、重量はわずか1gのみ。これほどまでに小型の機械を組み立てることができる職人は少数に限られ、年産は数十点程度だ。ジャガー・ルクルトはこのキャリバーをレディースのジュエリーウォッチに搭載している。
ジャガー・ルクルト
「キャリバー101」
世界最薄トゥールビヨン
5スイスフラン硬貨よりも薄い、わずか1.95mmというブルガリ「オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック」のムーブメントは、トゥールビヨン搭載腕時計として世界最薄の記録を誇っている。極薄ケースに内蔵されるのは手巻きのオクト フィニッシモ トゥールビヨンをベースに自動巻きの両方向巻き上げ式ペリフェラルローターを加えたキャリバーBVL288である。この設計にさまざまな工夫をちりばめることで、ブルガリはムーブメントを可能な限り薄く仕上げることに成功した。例えば地板の外周にペリフェラルローターを採用し、加えてリュウズの巻き真を廃すなどである。ケースはチタン製で、サイズは直径42mm、厚さ3.95mmである。
ブルガリ
「オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック」
自動巻き(Cal.BVL288)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約52時間。Ti(直径42mm、厚さ3.95mm)。30m防水。世界限定50本。1347万円(税別)。㉄ブルガリ ジャパン ℡03-6362-0100