革新的で創造性に溢れる時計製造を続け、名だたるコレクターたちを顧客に持つグルーベル フォルセイ。グルーベル フォルセイは2004年にロベール グルーベルとステファン フォルセイのふたりが共同で設立した時計ブランドで、これまでに22の自社製キャリバーを発表してきた。
グルーベル フォルセイがブランド初となるGMTモデルを発表したのは2011年のこと。立体地球儀や、25°に傾斜しながら24秒で1回転する「トゥールビヨン 24 セコンズ」、ワールドタイムや、ケースバックの24タイムゾーンなどを特徴とするものだった。それからGMTは小さなアップデートを続けてきた。しかし、2019年のSIHHで新たに発表された「GMT アース」に見られた変化は、これまでにない規模のものだった。
今回、ステファン フォルセイ氏に、グルーベル フォルセイにおけるGMTモデルの変遷と重要性について語ってもらう機会を得た。インタビュー形式でお届けする。
Text by Logan R.Baker
なぜグルーベル フォルセイにとってGMTが重要なのか?
ローガン R ベイカー(インタビュアー/以下、LRB):なぜグルーベル フォルセイは、トゥールビヨンの次に手掛ける複雑機構として、GMTを選んだのでしょうか?
ステファン フォルセイ(以下、SF):仕事を始めた当初、共同創業者のロベール グルーベルと、機械式時計に必要な要素は、もしかしたらもう全て発明され尽くしているのではなかろうか? という話をしたことがあります。しかし例えそうだったとしても、時計にはまだまだ革新的なことをやる余地はあるし、複雑機構にも改良できることは多くあるだろうという結論に至りました。だから私たちは高品質であるこを前提に、クラフツマンシップと改革性を発揮して、創造性を追求し続けることを決めました。同時に、時計師としての限界に挑戦していきたいと考えたんだ。そうして私たちが世界中の時計愛好家と会うための旅に出たとき、彼らの多くがより良いGMTを求めていたことを知った。だから私たちはGMTの再定義を行うことにしました。
そして完成したグルーベル フォルセイの「GMT」は、独創的な立体地球儀で、昼夜表示と時間表示を直感的に視認させるものです。この立体地球儀は、従来のワールドタイムよりずっとコンパクトな表示だから、ローカルタイムの時・分・秒表示だけでなく、パワーリザーブ表示と文字盤側のトゥールビヨンのための十分なスペースを確保することにも寄与します。ケースバック側では、サマータイム表示を備える24タイムゾーンに、24都市名を記した回転式の大きなディスクを配している点も見どころです。
LRB:「トゥールビヨン 24 セコンズ」はグルーベル フォルセイが3つ目に取得した特許ですね。なぜこれをGMTに搭載することが重要なのでしょうか?
SF:24秒トゥールビヨンの大きな利点は、わずかなスペースしか必要としないのに、パフォーマンス性が高いことです。品質を高めつつ、用途を広げることも可能にしてくれるものだからです。
LRB:あなたのGMTへの考え方は変化しましたか? 2011年の頃と比べてどうでしょうか?
SF:グルーベル フォルセイの時計はユニークな創作物であり、現代の時計作りにおける独自のビジョンを共有したいという願望を満たすもの。だからGMTへの欲求は以前と変わらず強くあります。パフォーマンス、構造、外観と、利用者にとっての使いやすさを絶妙なバランスで表現できるものだと今でも考えています。
LRB:なぜGMTを改良し、新作を出し続けることが、グルーベル フォルセイにとって重要なのでしょうか?
SF:グルーベル フォルセイの精神の本質的なものであり、哲学における重要な部分であること。それはスタンダードとされているものを拒否し、自分たちの世界観で、新しい挑戦に継続的に取り組むことです。GMTの背景にあるアイデアは、大きな立体地球儀とその眺めを使って、直感的でかつ真に革新的な腕時計を世に送り出すことです。技術の進歩は目の前の課題を克服する助けにはなるけれど、乗り越えた先でしばしば、更なる困難を与えるものでもあります。グルーベル フォルセイのGMTファミリーの場合、それは「GMT アース」を加えることで起こりました。新しいムーブメント構造で地球儀を360°眺められることを目指したため、複雑なサファイアクリスタル製ベゼルを作成するという、解決せざるを得ない新たな難題が生まれました。