あなたにとって、腕時計のケースの価値とはどんなものだろうか。ゴールドは特別で、ステンレススティールはありふれたもの、というところだろうか? 時計ブランドの中には、タイムピースの魅力を、ケース素材によって更に特別なものとさせるブランドがある。そんな格別な素材を使用した時計8選をお届けする。
ブライトリング 「アベンジャー ハリケーン ミリタリー」
ブライトリングの「アベンジャー ハリケーン」着用経験者は、ブライトライト®は金属のような冷たさがないことや、大理石のような風合いがあること、ステンレススティールよりもはるかに軽量であることを覚えているだろう。ブライトリングによると、ブライトライト®はチタンより3.3倍、ステンレススティールより5.8倍軽いということだ。実際に「アベンジャー ハリケーン」の重さは、ストラップ無しの状態でわずか69gのみである。またブライトライト®の素材であるポリマーファイバーは耐傷性に優れる素材でもある。ブライトリングはこの素材を「アベンジャー ハリケーン」発表の2016年より導入している。上の画像は「アベンジャー ハリケーン」の通常モデルとはインデックスや針の色が異なる世界限定1000本の「アベンジャー ハリケーン ミリタリー」である。
ウブロ 「ビッグ・バン ウニコ レッドサファイア」
リネンやオスミウム、カーボンといった慣例に捕らわれない素材使いで名高いウブロは、2016年にケース全体がサファイアクリスタルでできた「ビッグ・バン ウニコ サファイア」を発表した。その翌年には、サファイアクリスタルの透明感をそのままに、ブルーやレッドといったカラーバリエーションを追加した。20世紀初頭からカラーサファイアクリスタルは存在していたが、人工的に同じ色調にすることは困難であった。それをウブロは、サファイアクリスタルの原料である酸化アルミニウムに、ブルーサファイアの場合は鉄を、レッドサファイアにはクロミニウムを合わせ、原材料から色を作り出すことで均一性を実現した。これらはサファイアクリスタルの特徴である耐傷性や高硬度、透明性を維持しているがゆえ、その加工プロセスも、素材を作り出す以上に難題であった。複雑なケース、ベゼル、ケースバックはサファイアクリスタルの塊から切り出された後、必要な形状に削りだされる。これらの工程には特殊なツールを要し、時間もコストもかかるのである。
パネライ 「サブマーシブル BMGテック™ 3デイズ オートマティック」
意図的にチタンのような見た目に仕上げられているが「BMGテック™」は金属ではなく「メタリックガラス」と呼ばれる素材である。BMGは「bulk metallic glass」を略した言葉であり、組成はアルミニウム、チタン、ニッケルとジルコニウムとなっている。この合金は高温で高圧をかけて注入することによって作られ、その後、急冷することにより原子が規則的に戻る時間を与えない。その結果できあがった不規則な構造によって、BMGテック™には非常に高い硬度と、腐食、外部からの衝撃への耐性が備わるとともに、耐磁性をも持たせることになった。またパネライによれば経年劣化もしにくい素材だという。それに加えて軽量化したことは特に、ダイバーズウォッチとしての装着感を向上させた。
クリストフ・クラーレ 「エクストリーム1」
「エクストリーム1」には18Kレッドゴールドとステンレスを混ぜ合わせた「ダマスカススティール」が採用されている。ダマスカススティールは、その手間のかかる複雑な製造方法のため、時計業界ではほとんど使われていない。この素材を作るには、異なるスティール素材を重ねたものを、鍛金して仕上げる。鍛金加工後にスティールは半分の厚さになり、それを再度ふたつに折り重ねる。そのような「折り重ね」によってダマスカススティールは生まれ、重ねられた異なる素材の特性を合わせ持つ素材となる。外観的な特徴として、表面をエッチング加工した際に模様が浮き上がる点が挙げられる。クリストフ・クラーレではダマスカススティールをローズゴールドと組み合わせて、「エクストリーム1」に採用している。このモデルは、ふたつの時・分表示のスケール脇にあるチューブの中空で、スティールのボールが磁力によって動き時と分を表すという、その型破りな時間表示方法で知られている。