アクティブな“アドベンチャー・トラベラー”のための「L Collection」に追加された限定モデルは、土と緑をイメージしたアースカラーをまとう、冒険心をかき立てる1本。クロノグラフのほかに高度・気圧・方位計測、ウェイポイント機能を搭載。ライトチャージGPS衛星電波時計。クォーツ。T(i 縦57.2×横46.3mm、厚さ15.5mm)。10気圧防水。限定200本。27万円。
ケースは軽量かつ強靱なチタン製で、エプソン独自のストーンフィニッシュ(バレル研磨)と筋目仕上げを併用することで大人のツール感を演出。さらに表面硬度を上げるプロテクトコーティングを施す。サバンナグリーンカラーのセラミックベゼルが自然を連想させる。
空への憧憬から生まれた「S Collection」最新作は、大型機を操縦し、空を飛ぶエアラインパイロットをイメージ。青空を彷彿させる「紺碧」カラー文字盤のモデルはSSブレスレットが付属。クロノグラフと高度・気圧計測機能付き。ライトチャージGPS衛星電波時計。クォーツ。SS(縦57.2×横45.9mm、厚さ15.5mm)。10気圧防水。22万円。ケース素材はずしりとした重厚さ、美しい輝きが魅力の316Lステンレススティール。鏡面と筋目、ふたつの仕上げを巧みに使い分けることで、端正な美しさを実現した。表面にはもちろん、その輝を長く保つためのプロテクトコーティングが掛けられる。
多彩なセンサーでさまざまな機能を実現する、多機能アナログウォッチの究極を目指すエプソンの「TRUME(トゥルーム)」から、待望の新作が登場した。都市から荒野まで世界のあらゆる場所を旅するトラベラーに向けた「L Collection -Break Line-」。空を飛び回るアクティブなエアラインパイロットにこそ活用してほしい「S Collection Airline Pilot」。いずれも彼らが求める機能を叶えた微に入り細を穿った逸品だ。
渋谷康人:文 Text by Yasuhito Shibuya
TRUME
今やプリンターやプロジェクター、各種のセンサーやディスプレイまで、電子機器や電子デバイスメーカーとして世界的な存在であるセイコーエプソン。その創業事業は、腕時計の部品製造や組み立てであった。時計好きには有名だが、世界初のクォーツウォッチの開発を手掛けるなど、腕時計の進化に多大な貢献をし続けているウォッチメーカーでもある。さらに、クォーツウォッチの要である人工水晶まで自社製造できる、世界でも稀有な存在だ。こうした背景を持つセイコーエプソンが手掛ける自社ブランドが「TRUME(トゥルーム)」である。同社が持てる技術を惜しみなく投入して開発され、2017年にデビューを飾った、操作する楽しさにあふれたアナログ電子ウォッチだ。
その特徴は、地球の上空を周回するグローバル・ポジショニング・システム衛星の電波を受信するGPSモジュールに加えて、空気の圧力を精密にキャッチし、気圧や高度を計測する気圧・高度センサー、地磁気を検出することで方角が分かる方位センサーなど、同社が誇る各種センサーを内蔵し、計時以外にも多彩な機能を実装している点にある。
独自開発のGPSモジュールとリングアンテナがGPS衛星電波を確実にキャッチするため、現在地が地球上のどの場所で、どのタイムゾーンに属し、今は何時何分何秒なのか、秒単位までの正確な時刻を教えてくれる。こうした腕時計として究極の機能を実現しているだけでなく、これらセンサーがキャッチしたデータを文字盤上にリアルタイムで表示することで、オーナーは活動に役立つ多くの情報を手にすることができるのだ。
他社にも同様にソーラー駆動のGPS衛星電波腕時計はあるが、TRUMEほど多機能でさまざまなユーザーに向けて多彩なラインナップをそろえるものはない。使うフィールドを明確にしたうえで、最高の機能と使いやすさを追求した製品作りが同ブランドの強みである。陸(LAND)、海(MARINE)、空(SKY)、そして都市(CITY)と、それぞれのシーンで求められる機能とデザインを真摯に追求した製品作りで、筆者はもちろん、本物を知る大人たちをも魅了してきた。
そして「平成」最後の年となる2019年の3月、このTRUMEのふたつのコレクションから新作が登場した。陸を舞台にする人へ向けた「Lコレクション」より、ワイルドな新ライン「ブレイクライン」の限定モデル2本。そして、空を舞台にする人のために生まれた「Sコレクション」の新テーマ、「エアラインパイロット」の3モデルだ。
L Collection
2モデル構成の「L Collection -Break Line-」。アウトドアテイストの強いTR-MB7008と比べると、こちらは大人の落ち着きが漂うシックなグレー×ブラウンの組み合わせ。クロノグラフと高度・気圧・方位計測機能を搭載。ライトチャージGPS衛星電波時計。クォーツ。Ti(縦57.2×横46.3mm、厚さ15.5mm)。10気圧防水。限定200本。27万円。
(中)ケースの4時位置側面にある、カバーで覆われた気圧・高度センサー。そのカバーにもきっちりとIP(イオンプレート)加工が施されている。その色味も絶妙だ。
(右)文字盤は、日本伝統の蒔絵技法をヒントに梨地を模した繊細な凹凸を成形したマット仕上げ。アウトドアの強い光の中でも反射が少なく十分な視認性を確保する。
まず、「Lコレクション」第2弾の「ブレイクライン」からその魅力を紹介しよう。このふたつの限定モデルは、未知の絶景やエキサイティングな体験を求めて大自然の秘境に踏み込むことを厭わない、アクティブな〝アドベンチャー・トラベラー〞をサポートするために生まれた。
ひと目見てまず心引かれるのが、アウトドアファッションにフィットする、大自然をたくましく生きる草木や土を彷彿とさせるアースカラーのセラミックベゼル。そしてバレル研磨で仕上げたストーンフィニッシュのチタン製ケースサイドに見られる味わい深い質感だ。
上記に掲載されたTR-MB7008 リミテッドエディションは、マットなゴールドカラーケースとサバンナグリーンカラーベゼルの組み合わせ。そして112ページに掲載のTR-MB7009 リミテッドエディションはチャコールグレーケースとキャニオンブラウンカラーベゼルの組み合わせ。この絶妙なカラーコンビネーションも、これまでのTRUMEにはない新鮮なものである。
このケースとベゼルカラーに合わせて、やはり絶妙な色合いのコーデュラバリスティックナイロン製と、アメリカ・ホーウイーン社のクロムエクセルレザー製の2種類のバンドがそれぞれ付属。引き通しタイプで、オーナーが自身の手でいつでも簡単に交換できるのがうれしい。
さらにTRUMEの全モデルが搭載する気圧・高度センサーに加えて、方位センサーも内蔵。気圧や高度の変化やその傾向、現在地での方位を針で教えてくれるほか、見知らぬ土地を移動する際に役立つウェイポイント機能も備えている。これは移動する際に最初に起点を記憶させれば、10時位置の小秒針が現在地から起点への方向を示すとともに、2時位置の計測針がスタート地点までの距離を最大9.9㎞まで表示してくれるというもの。この間センター針は常に北を指す。未知の世界を自身の足で旅するトラベラーにとって好ましい機能だ。