3月20日のプレスデーで幕を開け、26日に閉幕したバーゼルワールド。100年以上の歴史を持つ世界最大規模の同展で、現地に足を運んだジャーナリストたちはなにを見て、なにを思ったのか。国内外の著名ジャーナリストにバーゼルワールドで発表された2019年新作からベスト5をそれぞれ選んでもらった。
時計ジャーナリストのギズベルト・L・ブルーナーが選ぶ新作ベスト5(順位なし)
●ブルガリ/オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT オートマティック
ジェラルド・ジェンタがオリジナルモデルのデザインを手掛けた「オクト」は、ブルガリの中でも最上級のラインである。2019年、「オクト フィニッシモ」がその名の通り、圧倒的な名声にふさわしい仕上がりで脚光を浴びている。今年のバーゼルワールドでイタリアのブランドが発表したのは、スイス製マニュファクチュールムーブメントを載せた世界最薄の自動巻きクロノグラフである。クロノグラフムーブメント、Cal.BVL 318は、ペリフェラルローター、約55時間のパワーリザーブ、コラムホイール式の制御方式、水平クラッチ、GMT機能を備えていながら厚さはわずか3.3mmである。そして世界記録を達成したムーブメントを包むのは、直径42mm、厚さ6.9mmのチタン製ケースである。
自動巻き(Cal.BVL 318)
37石
2万8800振動/時
パワーリザーブ約55時間
サンドブラスト仕上げチタン(直径42mm、厚さ6.90mm)
30m防水
サンドブラスト仕上げチタンブレスレット
国内発売予定2019年6月
192万円(税別)
●ショパール/L.U.C フライング T ツイン
ショパールはマニュファクチュールとしての23年間の活動において、トゥールビヨンを搭載した数多くのムーブメントを開発してきた。家族経営を貫いてきたショパールは、厚さわずか7.2mmの「L.U.CフライングTツイン」によってトゥールビヨンの新たな世界へと足を踏み入れた。マイクロローターを搭載した同社の自社開発ムーブメント、Cal.L.U.C 96.24-Lは190点の部品で構成されている。カール-フリードリヒ・ショイフレ氏と彼のチームは、メゾンの歴史で初めて「フライング」トゥールビヨンを設計した。このトゥールビヨンは、後方のみ、セラミックス製のボールベアリングで支持されている。内部機構は2万5200振動/時で振動し、秒単位の正確な時刻合わせを可能にするため、ストップセコンド仕様になっている。スイスクロノメーター検定協会(C.O.S.C.)の認定書とジュネーブシールが付与されたこの腕時計のケースは、フェアマインド認証を受けたエシカルゴールドでできている。
自動巻き(Cal.L.U.C 96.24-L)
25石
2万5200振動/時
パワーリザーブ約65時間
18Kローズゴールド(直径40mm、厚さ7.2mm)
30m防水
世界限定50本
価格未定
●ウブロ/クラシック・フュージョン フェラーリGT
2019年、ウブロはフェラーリと同社のチーフデザイナーのフラビオ・マンツォーニ氏と共に、クリエイティブな新天地に参入した。「クラシック・フュージョン フェラーリGT」 の3Dカーボン製ケースモデルは、流線型の要素によって自動車のエスプリを手首にもたらす。もう一度見直すと、このクロノグラフがウブロの時計であることに気付き、さらに観察するとアッパーケースが4本のねじで固定されていること発見する。内部で時を刻む自動巻きクロノグラフムーブメント、Cal.HUB1280 UNICOは、薄いだけでなく、革新的なスプリングの効いた歯を持つクラッチホイールを備えており、4つの特許で守られている。
自動巻き(Cal.HUB1280 UNICO)
2万8800振動/時
パワーリザーブ約72時間
直径45mm
10気圧防水
チタニウムモデル/世界限定1000本、予価233万円(税別)
キングゴールドモデル/世界限定500本、予価412万円(税別)
3Dカーボンモデル/世界限定500本、予価289万円(税別)
●パテック フィリップ/アラーム・トラベルタイム5520P
パテック・フィリップにはこれまで、アラーム機能や目覚まし機能を備えた腕時計はごく一部のハイコンプリケーションウォッチを除いて存在しなかった。だからこそ、CEOのティエリー・スターン氏はこうした時計を強く望んでいたのだが、氏の念願は今年のバーゼルワールドでようやく叶えられることとなった。発表されたのは、新開発の手動巻きムーブメント、Cal.AL 30-660 S C FUSを搭載した「アラーム・トラベルタイム」(Ref.5520P)である。だが、プラチナ製のこの時計は市場で通常見られるような標準的な目覚まし機能付きの腕時計ではない。アラーム時刻を15分刻みで正確に設定できるグランドコンプリケーションなのである。アラーム時刻はもちろん、ケース左側のプッシャーで合わせるローカルタイムと連動している。響きは極めて魅力的で、ハンマーが最大40秒間、1秒間に2回半の間隔でゴングを鳴らす。
自動巻き(Cal.AL 30-660 S C FUS)
52石
2万8800振動/時
パワーリザーブ約52時間
Pt(直径42.2mm)
3気圧防水
価格未定
●ポルシェデザイン/1919グローブタイマー UTC
ポルシェデザインが発表した「1919グローブタイマー UTC」では直感的な操作を存分に楽しむことができる。伝説の名車、ポルシェ901(後の911)をデザインしたフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェが、人間工学に基づいて設計されたケース右側のプッシャーで前後に動かすことのできる12時間針を見たら、どれほど喜んだことだろう。日付は12時間針に連動している。セリタSW200ベースの自動巻きムーブメント、Cal.WERK 04.110に載せられた、ここでしか見られないデュボア・デプラのモジュールには、標準時刻の24時間表示針とデイナイト表示を備えている。量産に入る前、この時計は自動車同様、数多くの過酷な耐久性テストをクリアしなければならなかった。
自動巻き(Cal.WERK 04.110/セリタ200ベース)
26石
2万8800振動/時
パワーリザーブ約38時間
Tiもしくは18KYG(直径42.00mm、厚さ14,90 mm)
10気圧防水
18KYGモデルは年間限定25本
2019年9月発売予定
ブルーダイアルモデル(チタンブレスレット)92万円(税別)
ブラック、ブラウンダイアルモデル(レザーストラップ)88万円(税別)
18KYGモデル(レザーストラップ)430万円(税別)
選者のプロフィール
Gisbert L. Brunner/ギズベルト・L・ブルーナー
1947年生まれ。ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンで法律、心理学、教育学を研究。64年から時計の収集を開始。83年、腕時計に関する重要な本として知られる、『Wristwatches』(ドイツ語、英語、フランス語、イタリア語)の3人の著者のうちのひとりとなる。それ以降、良く知られたブランド、例えばオーデマ ピゲ、コルム、エテルナ、モンブラン、パテック フィリップ、ロレックス、タグ・ホイヤーなどについての書籍を20冊以上執筆している。他に『クロノス』(ドイツ版、日本版)『Focus Online』『Ganz Europa』『Handelszeitung』『Prestige Magazine』『Terra Mater Magazine』『ZEIT Magazin』などで執筆。また、www.uhrenkosmos.comの共同創立者であり、共同所有者。