現代は、時間計測をデジタル機器に頼る時代になった。仕事の時間は金属とプラスチックで作られた電子機器に制御され、街ではアスファルトやガラス、鉄やコンクリートに取り囲まれている。
そのため、レザーなどの天然素材や木目調、温かみある色合いのテキスタイル、そして経年変化を見せるブロンズに心引かれたとしても、なんら不思議ではない。ブロンズは産業革命以前の時代や、さまざまな大陸を発見して探検していった大航海時代をも想起させる。
今回は、ブロンズやナチュラルな雰囲気をまとった、温かみのある時計を5本紹介する。
Text by Jens Koch
ウブロ
「クラシック・フュージョン ベルルッティ スクリット」
ウブロはラグジュアリーな靴づくりで有名なベルルッティとコラボし、クラシック・フュージョン ベルルッティ スクリットを作り上げた。ここではフランスのレザーのスペシャリストのふたつの特徴的な要素が組み合わされている。濃淡のトーンのついたヴェネチアカーフレザーと18世紀のカリグラフィーに由来する書体だ。レザーは生きている素材のため、気密性の高いケースの中のムーブメントに湿気が影響を与えないよう、特殊な仕上げが施されている。ウブロ独自のキングゴールドは、ブラウンカラーの革の文字盤とよく調和が取れている。
オリス
「カール・ブラシア リミテッドエディション」
オリスは、1948年にアフリカ系アメリカ人として初めてアメリカ海軍のダイバーとなったカール・ブラシアに捧げるブロンズのダイバーズウォッチを製作した。ブラシアはまた、義足のマスターダイバーとして仕事を続けた最初の兵士でもあった。直径42mmのケースは、1950年代までブロンズで製作されていた古いダイビングヘルメットを思わせる。逆回転防止機能付きの回転ベゼルとレザーストラップに装備されているクラスプもまたブロンズ製で、経年変化に伴い独特の色合いを見せる。ブロンズ素材に合わせられたブラウンのレザーストラップとダークブルーの文字盤が、趣のあるカラーコンビネーションとなっている。自動巻きムーブメント、セリタSW200をベースにしたキャリバー733を搭載する。
チューダー
「ブラックベイ ブロンズ」
チューダーはブラックベイ ブロンズに、味わいのある経年変化が表れるブロンズ製ケースを合わせた。海水に対する耐腐食性に優れるため、ダイバーズウォッチにとって好ましい素材と言える。ベゼルと文字盤はブラウンカラーでまとめられている。ストラップにはベージュとカーキ色のファブリックストラップが合わせられ、レトロミリタリー調を醸し出している。かつてフランス海軍が使用していたチューダーのダイバーズウォッチにも、これに近いストラップが採用されていた。搭載される自社製自動巻きキャリバーMT5601は約70時間のパワーリザーブを保持し、C.O.S.C.によるスイス公式クロノメーター認定を受けている。エイジドレザーストラップモデルもある。
ベル&ロス
「BR 01 インストゥルメント ドゥ マリン」
ベル&ロスでは、BR 01 インストゥルメント ドゥ マリンの製作にあたって、そのインスピレーションを18世紀の大航海時代に用いられたマリンクロノメーターに求めた。文字盤のデザインだけでなく、ブロンズ製ケースとスクエア型のインディアンローズウッド製フレームがデッキ用クロックを想起させる。希少性の高いローズウッドは硬度と耐久性があり、ブロンズケースとブラウンクロコダイルストラップとの調和を見せている。搭載されている手巻きムーブメントBR-CAL.203はユニタス6498ベースである。
ラルフ ローレン
「オートモーティブ スケルトン」
ラルフ ローレンのRL オートモーティブ スケルトン モデル-45MMは、ショットブラスト加工が施されたブラックケースにインド紫檀製ウッドベゼルが合わせられている。このハードウッド素材は、アジア原産の広葉樹から作られ、その模様の美しさから楽器にもよく使われるものである。この天然素材を使用することにより、時計はひとつひとつが1点ものとなるのだ。ブランド創業者のラルフ・ローレンは、黒のブガッティ、1938年製タイプ57Cアトランティック・クーペを所有しており、そのダッシュボードの素材とカラーがこの時計のインスピレーションの源となっている。スケルトン加工が施されたブラックのキャリバーRL1967はIWC製ムーブメントをベースとしている。