長らく秘密主義を貫いてきたブレゲ。しかし今回のタイム・トゥ・ムーブでは、ハリー・ウィンストン同様、工房を全面的に公開した。CEOのティエリー・エスリンガーはこう説明する。「長らくブレゲは工房を見せてきませんでした。しかし、今回は私たちがどうやって時計を作っているかを知らせる、良い機会だと思ったのです」。そんなブレゲは今年、女性用モデルにフォーカス。マリーンにレディースモデルを追加したほか、クイーン・オブ・ネイプルズには、ラッカー文字盤のモデルを加えた。今年の新作に共通するのは、ハリー・ウィンストン同様の鮮やかな文字盤だ。やはり文字盤の表面に吹く保護用のラッカーを省くことで、従来以上に鮮やかな色味を与えることに成功した。
クラシック 5177 グラン・フー・ブルーエナメル
2019年の“Wonderful Buy”。ベースとなったのは、ブレゲ ブティック銀座の10周年記念限定モデル。そこに日付表示を加えたのが本作である。限定版の出来栄えの良さに、ブレゲの本社がレギュラー化を決めたとのこと。日付表示の追加はどうかと思ったが、実物はまったく違和感がない。デイト窓の周囲をウォータージェットで加工することにより、うまくデイト表示をなじませている。このモデルについてはいろいろ書くことがあるので、6月3日発売の『クロノス日本版』7月号第83号で詳説する。
クラシック トゥールビヨン エクストラフラット スケルトン 5395
エクストラフラット トゥールビヨンをスケルトンに改めたモデル。併せて、Ptモデルの地板と受けは、18KRGに変更された。ブレゲいわく「ゴールドムーブメントの採用は、“マリー・アントワネット” No.1160以来」とのこと。基本は従来に同じだが、至る所が面取りされている。細かい箇所にも「入り角」と「出角」を施した仕上げは、いかにもブレゲのハイエンドモデルらしい。開発を担当した副社長のナキス・カラパティスは「スケルトンにした結果、丸穴と車ケースが当たって巻き上げに不具合が生じた。その部分は変更した」とのこと。
マリーン レディ 9517
女性用モデルにフォーカスするブレゲ。それを象徴するのが、新しく追加されたマリーンのレディースモデルだ。用意されたのは大きく3種類。SSモデルの9517と、SS+ダイヤモンド入り、そして18KRG+ダイヤモンド入りの9518だ。文字盤はベーシックなものと波模様を施した2種類のマザー・オブ・パール、そしてグラデーションカラーのラッカー塗装がある。なお、波模様のマザー・オブ・パールは、ブレゲの他コレクション同様、ギヨシェで彫り込んだもの。このために専用のカムを開発したという。個人的にお勧めなのは、ラッカー文字盤を用いたこのモデル。十数回ラッカーを重ねることで、独特の色味を得ている。サイズを考えれば5気圧防水はまずまずの性能か。