ブライトリング「スーパーオーシャン ヘリテージ II B20 オートマチック 42」装着レポート

FEATUREWatchTime
2019.05.22
ブライトリングとチューダーは、ブライトリングの会社組織に変化が起こる以前に、両社の経験値をデザインとプロダクションに生かすことで合意していた。これはブライトリングのCEOジョージ・カーンのインタビューの中で明言されただけでなく、両社がその後発表した新作の中で色濃く表されていた。ブライトリングのキャリバーB01をベースとしたムーブメントは、チューダーのクロノグラフにキャリバーMT 5813として搭載された。一方ブライトリングは、チューダーの自社製キャリバーMT 5612を採用した「スーパーオーシャン ヘリテージ II B20 オートマチック」を発表したのだった。
Originally published on watchtime.com
Text by Martina Richter

スーパーオーシャン

Photograph by OK PHOTOGRAPHY
ブライトリング「スーパーオーシャン ヘリテージ II B20 オートマチック」には、チューダーとのコラボレーションから生まれた自動巻きキャリバーB20が搭載される。なお今回の装着テストで用いたのは、直径42mmのケースにステンレススティールとローズゴールドを合わせた3針モデル「スーパーオーシャン ヘリテージ II B20 オートマチック 42」だ。

 キャリバーB20を搭載する「スーパーオーシャン ヘリテージ II B20 オートマチック」は、2017年に発表された。この初出モデルは直径42mmと46mmのサイズ展開だった。続いて2018年のバーゼルワールドでは44mmの3サイズ目を発表し、加えて42mmモデルではステンレススティールとローズゴールドという珍しいツートーンカラーをお披露目した。ベゼルや文字盤、メッシュ状のエアロクラシック・ラバーストラップなどにあしらわれたブラックカラーが、存在感と優雅さを引き立てるデザインだ。
 1957年に発表されたオリジナルモデルの特徴を残しつつ、スーパーオーシャン ヘリテージ II B20 オートマチックの印象的な変更要素は逆回転防止機能付きのベゼルを採用したことだ。このベゼルは超硬質のハイテクセラミックスを使用し、傷が付きにくく、外からの衝撃にも強い耐性を持つ。ベゼル外周のゴールドの刻みは、1/2秒ごとに動くラチェット機能の備わったベゼルを回転させやすくする上に、外観に繊細な印象を与えるという効果を生み出している。しかし、プロフェッショナル向けのダイバーズウォッチとして使用するには少々緩いようだ。


B20

チューダーのムーブメントをベースにしたB20は、安定した精度と約70時間のパワーリザーブを備える。

 ベゼルに接する文字盤上にミニッツトラックがあるためか、スーパーオーシャン ヘリテージ II B20 オートマチックのベゼルには細かい分表示は無い。このため潜水時には分単位までの正確な設定は行えない。だがこれは、ユーザーの活動として想定するレクリエーション程度のダイビングでは問題とならない。また秒針には蓄光塗料が塗布されていないが、時分針には塗布されており、暗所でも視認性を保つ。


セラミックインレイ

Photograph by OK PHOTOGRAPHY
新しいセラミックインレイのベゼルを備えた、考え抜かれたコントラストが映えるローズゴールドとブラックのケース。

 
 先端が三角形の時針、菱形の分針、わずかに丸みを帯びたアワーマーカーは1957年のオリジナルモデルに近い意匠だ。潜水時間を計測するのに重要となる分針は、ミニッツトラックまで届くように長めにデザインされている。暗所での視認性に関しては、文字盤のミニッツトラックには8か所のみにしか蛍光塗料は塗布されておらず、高くはない。セラミックスベゼルの12時位置の蛍光塗料は、時分針と同様に明るく見えはするが、正確な分単位の潜水時間を測るまではできない。いずれにせよプロフェッショナルダイバーズ向けではないのだ。日中の陽の光の下など明るい場所では、ブラックを基調としてあしらわれたホワイトとローズゴールドの組み合わせが、高い視認性を確保する。

B20

日中の陽の光の下など明るい場所では、太い針とインデックス、そしてカラーコントラストによって高い視認性を誇る。蓄光塗料の塗布の具合は、プロフェッショナルダイバーズ向けではない。

 1979年から導入されていた、翼と錨がデザインされたロゴ(航空とダイビングの結び付きを表現するものだった)の代わりに、曲線を描くBの、それ以前まで使われていたより古いブライトリングのロゴが文字盤に戻ってきた。ブランド名の下には、公式クロノメーター取得の証が記されている。

 文字盤の下半分には、"SuperOcean"のコレクション名が独特の書体で描かれ、自動巻きと防水性能の表示がある。ケースバックはクローズドのステンレススティールケースバックのため、ムーブメントを直接見ることはできない。

 直接は見えないがムーブメントには、見どころがいろいろある。オリジナルのチューダーのデザインと異なり、ブライトリングのB20はコート・ド・ジュネーブやサテン仕上げ、オリジナルより2個多い軸受け石など、より細部に装飾仕上げが施されているのである。それ以外は、ふたつのムーブメントは同じ仕様だ。4Hz振動のテンプは安定しており、チューダー同様、クロノメーター取得レベルまでの微調整はネジによって行われている。

B20

Photograph by OK PHOTOGRAPHY
角ばった形のケースバックが、B20ムーブメントを覆っている。


 スーパーオーシャン ヘリテージ II B20 オートマチックは、C.O.S.C.認定を取得している。姿勢差による日差は約3秒あり、約70時間のパワーリザーブが切れる間際には振り角が200度以下に落ちるが、平均値+2秒という安定性は保持する。
 完全にゼンマイがほどけた後でも、巻き上げるのは難しくない。大きな刻みのついたリュウズはつかみやすいため巻き上げが滑らかで、ねじ込みからも外しやすい。時間合わせも、日付合わせも手ごたえのある分かりやすいものとなっている。針合わせの際は針飛びもなく、禁止時間帯の日付送りも問題ない。ねじ込み式リュウズを押し込むときに、わずかに力を入れる必要がある程度だ。

B20

Photograph by OK PHOTOGRAPHY
フォールディングクラスプはふたつの展開ボタンによって開くことができる。上部には9mmの調整ができるエクステンションが組み込まれている。


 エアロクラシック・ラバーストラップを手首に合わせるのは、容易ではない。採寸後に裁断し、その後の調整は効かない。しかしフォールディングクラスプによって9mmの調整ができる。これは扱いやすいスライド式で、7段階にわたってストラップの長さを調整する。ポリッシュ仕上げのクラスプは、サイドにあるふたつの展開ボタンによって開く。ここには翼と錨のロゴが刻まれている。 
 ストラップの調整が済むと、時計は手首にぴったりと収まる。ケースの厚さはあるものの、そのデザインにより重すぎる印象を与えない。ダイビングを楽しむブライトリングのファンにとっては、まさに素晴らしいタイムピースだ。


ブライトリング「スーパーオーシャン ヘリテージ II B20 オートマチック 42」


Ref.UB2010121B1S1

〈機能〉
時・分・スイープセコンド表示。デイト表示。ラチェット式逆回転防止機能付きダイビングベゼル。ねじ込み式リュウズ。

〈ムーブメント〉
自動巻き(Cal.B20)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。インカブロック。スクリュー式ジャイロマックス式テンプ。直径30.8mm、厚さ6.50mm。

〈ケース〉
ステンレススティール+18Kローズゴールド製。両面に反射防止加工を施したドーム型サファイアクリスタル製風防。200m防水。直径42.06mm×厚さ14.31mm。

〈総重量〉
144グラム

〈ストラップ〉
片開きフォールディングクラスプ付きエアロクラシック・ラバーストラップ。

〈精度安定試験(T24の日差 秒/日、振り角)〉
クロノグラフ停止時/クロノグラフ作動時
文字盤上:+3.3/+3.6
文字盤下:+0.9/+0.1
3時上:+4.1/+4.3
3時下:+2.2/+3.2
3時左:+4.8/+5.9
最大姿勢差:+3.9/+5.8
平均日差:+3.1/+3.4
平均振り角:
水平姿勢 294°/290°
垂直姿勢 256°/247°

〈税別価格〉
65万5000円
 
〈バリエーション〉
ステンレススティール+18Kローズゴールド、ブレスレットモデル 69万円(税別)。
ステンレススティールケース、ラバーストラップモデル 52万5000円(税別)。
ステンレススティール、ブレスレットモデル 56万円(税別)。
「スーパーオーシャン ヘリテージ II」シリーズには他にクロノグラフシリーズもある。


Contact info: ブライトリング・ジャパン Tel.03-3436-0011