機械式腕時計を手に入れてみたい人にとって、さまざまなブランドから出されているベーシックモデルやその価格は気になるところだろう。アメリカの腕時計情報誌"WatchTime"が選出した、10ブランドの実力派ベーシックモデルを価格帯ごとに紹介する。今回は、範囲を限定するためにもメンズウォッチでケース直径38mm以上のモデルをセレクトしている。選者は、ドイツ語版のクロノスでお馴染みの論客、アレクサンダー・クルップだ。
Text by Alexander Krupp
◆5万円以下
ティソ 「エブリタイム スイスマティック」
「エブリタイム スイスマティック」のコストパフォーマンスには驚きを隠せないかもしれない。4万6000円(税別)で、サファイアクリスタル製風防、ミネラルガラス製ケースバック、3気圧防水、約3日のパワーリザーブといったスペックを享受できる。コストパフォーマンスが高い理由のひとつは、スウォッチ グループの一員であるということが挙げられるだろう。同じグループのティソに、他のブランドからムーブメントやパーツが供給されるのである。この時計にはアリゲーター柄型押し牛革ストラップが組み合わされる。
自動巻き(Cal.スイスマティック)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SS(直径40mm)。重さ101g(ストラップ付き)。3気圧防水。4万6000円(税別)。(問)ティソ ℡03-6254-7361
セイコー 「プレザージュ SARY123」
セイコー「プレザージュ」のポートフォリオは、低めの価格帯から始まる。わずか5万円ほどをかけるだけで、自社製自動巻きムーブメント、ステンレススティール製ケースとブレスレット、ねじ込み式ケースバックを備えた良質なモデルが手に入るのだ。キャリバー4R35は約41時間のパワーリザーブを保持し、手巻きと自動巻き両方が可能だ。時・分・センターセコンドと日付の表示機能が備わる。プレザージュはボックスシェイプの風防を備え、防水性は5気圧を保持する。
自動巻き(Cal.4R35)。23石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約41時間。SS(直径40.5mm、厚さ11.8mm)。重さ135g。5気圧防水。4万7000円(税別)。(問)セイコーウオッチ お客様相談室 ℡0120-061-012
https://www.webchronos.net/2020-new-watches/45477/
◆50万円以下
ユンハンス 「フォーム A」
ユンハンスは長い間、マックス・ビルやマイスターといったコレクションで手の届きやすいデザイナーズウォッチを提供してきたが、今回紹介するモデルはそれよりもさらに入手しやすい価格の「フォーム A」だ。このモデルはETAキャリバー2824-2をベースにしたJ800.2を搭載し、価格は12万8000円(税別)。サファイアクリスタル製風防とミネラルガラス製ケースバックを備えている。興味深いディテールとしては、四角いミニッツスケールが文字盤にスタンプされていることであろう。
自動巻き(Cal.J800.2)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径39.3mm)。50m防水。12万8000円(税別)。(問)ユーロパッション ℡03-5295-0411
タグ・ホイヤー 「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 キャリバー5」
先に挙げたブライトリング同様、タグ・ホイヤーもエントリーモデルをダイバーズウォッチに投入してきている。逆回転防止ベゼル、ラバーストラップ、200mの防水性などのスペックを備えた、直径41mmのステンレススティール製ケースモデルだ。タグ・ホイヤーのキャリバー5はETAの自動巻きキャリバー2824-2もしくはその代替機であるセリタSW200のことであり、これらのムーブメントはほかの機械式時計のエントリーモデルにもよく搭載されている。
自動巻き(Cal.5)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径41mm)。200m防水。17万円(税別)。(問)LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー ℡03-5635-7054
https://www.webchronos.net/features/41995/
ジン 「556」
ドイツの時計ブランド、ジンからは18万円(税別)で販売されている「556」をエントリーモデルに薦める。これは20気圧の防水性を持つステンレススティールケースの腕時計で、反射防止加工が施された風防とケースバック、そしてねじ込み式リュウズを備えている。ケースサイズは直径38.5mm、厚さは11mmで、使い勝手も良い。スマートでシンプルかつ堅牢なETA製自動巻きキャリバー2824-2が、蛍光塗料の塗布された視認性の高いインデックスと、マットな仕上げのケースに収められている。
自動巻き(Cal.ETA2824-2)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径38.5mm、厚さ11mm)。重さ65g(ストラップをのぞく)。20気圧防水。型押しカウレザーストラップ。18万円(税別)。(問)ホッタ ℡03-6226-4715
ブライトリング 「コルト オートマチック」
ブライトリングの手が届きやすい機械式時計として「コルト オートマチック」が挙げられる。この1本で、オーナーはC.O.S.C.認定クロノメーターの精度を手に入れるだけでなく、ダイバーにとって有益な仕様を享受できることとなる。逆回転防止ベゼル、200m防水を誇る44mmのステンレススティールケース、ねじ込みロック式リュウズ、スーパールミノヴァが塗布された視認性の良いインデックスの文字盤などである。文字盤のカラー展開はブラック、ブルー、シルバーの3色だ(編集部注:2020年の6月時点で該当モデルはカタログにないが、文字盤違いの「オートマチック ジャパン リミテッド エディション」は存在する)。
自動巻き(Cal.ブライトリング17)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径44mm)。200m防水。ラバーストラップ。32万円(税別)(問)ブライトリング・ジャパン ℡03-3436-0011
オメガ 「デ・ヴィル プレステージ」
オメガ「デ・ヴィル プレステージ」は38万円(税別)で販売されており、オメガのメンズウォッチの中では入手しやすい価格に設定されている。自社製キャリバー2500は耐磁性に優れ、搭載される初期のコーアクシャル脱進機付きのムーブメントは、最新のものに引けをとらぬ安定した精度を示す。精度は、C.O.S.C.認定クロノメーターによって証明されている。
自動巻き(Cal.2500C)。29石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約48時間。SS(直径39.5mm)。3気圧防水。38万円(税別)。(問)オメガお客様センター ℡03-5952-4400
◆100万円以下
ロレックス 「オイスター パーペチュアル 39」
2015年、ロレックスはメンズウォッチのなかでもエントリーレベルに位置する新しいベーシックモデルを発表した。「オイスター パーペチュアル 39」の購入者は、ロレックスの典型的な利点を享受することができる。それらは高品質な仕上げ加工、現代的な自社製キャリバー、海水に耐性のある904Lステンレススティール製ケース、目減りしない価値である。直径39mmのケースには、自動巻きクロノメーター認定のキャリバー3132が搭載される。オイスター パーペチュアル39の文字盤カラーはブラックまたはブルー、ホワイト、レッドグレープ、ダークロジウムの展開がある。
自動巻き(Cal.3132)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。SS(直径39mm)。100m防水。54万円(税別)。
ウブロ 「クラシック・フュージョン チタニウム」
機械式時計ファンで77万円(税別)の予算を確保できるのであれば、ウブロのメンズウォッチの中でも最も入手しやすい直径42mmの「クラシック・フュージョン チタニウム」を勧めたい。なお、これより3mm大きいモデルは82万円(税別)だ。このモデルは定番として量産されており、手に入れやすい。なお、ウブロのアイコンでもあるスポーティーなコレクション「ビッグ・バン」も100万円台からスタートする。より手に入れやすく、かつエレガントな選択肢となるだろう。
自動巻き(Cal.HUB1110)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。Ti(直径42mm)。5気圧防水。77万円(税別)。(問)LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ ℡03-5635-7055
◆200万円台
パテック フィリップ 「アクアノート 5167A」
アクアノートの他モデルと同様に、Ref.5167Aはスポーティーなデザインと細部まで磨き抜かれたムーブメントを合わせ持つ。自動巻きキャリバー324 S Cはデイト表示、40.8mmのステンレススティール製ケース、サファイアクリスタル製ケースバックを備える。ストラップには防水性、牽引耐性、紫外線耐性に優れたハイテク・コンポジット素材が採用されている。価格は207万円(税別)だ(編集部注:現在このモデルを、正規店から定価で購入することはほぼ不可能である)。
Ref.5167A-001。自動巻き(Cal.324 S C)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SS(直径40.8mm(10-4時方向)、厚さ11.8mm)。12気圧防水。207万円(税別)。㉄パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター ℡03-3255-8109
編集部補足:いずれのモデルも、メインストリームではないが、良質で実用的なモデルである。「実力派ベーシック」とは言い得て妙だ。共通するのは、以前と比べて外装の仕上げが良くなった点にある。セイコーやオメガは言うまでもなく、タグ・ホイヤーとウブロはその典型と言える。ブライトリングのコルトは傑作といって良い時計だが、残念ながら今あるのは店頭の在庫のみか、より魅力的なデザインを持つ「コルト オートマチック ジャパン リミテッド エディション」のみとなる。また、アクアノートは現在もカタログに載っているが、入手はまず不可能だ。
https://www.webchronos.net/features/35355/