2019年に誕生半世紀を祝されるモデルがいくつかある。そのうちのひとつが、角型防水ケースで初の自動巻きクロノグラフを発表したタグ・ホイヤー「モナコ」だ。まだ全容は明かされていないが、タグ・ホイヤーは2019年5月から2019年を通して5本のスペシャルエディションを発表すると公表している。5本はモナコの誕生した1969年から10年ごとの時代を反映したものであり、かつそれぞれのオリジナルを再現していくという。最初の1本は、2019年5月のF1モナコグランプリというふさわしい機会においてデビューを果たした。今回はその「モナコ 1969-1979 リミテッドモデル」を詳しく伝える。
Text by Mark Bernardo
タグ・ホイヤー
「モナコ」
まずはモナコの誕生から見ていこう。ホイヤーのモナコは、世界を揺るがした最初期の自動巻きクロノグラフムーブメントのひとつ、キャリバー11を搭載し、1969年3月3日にニューヨークとジュネーブで同時に開催されたプレスカンファレンスで発表された。(なおゼニスのエル・プリメロやセイコーのキャリバー6139も同じ年に市場に投入されている。またホイヤーからタグ・ホイヤーと社名を変えるのは1985年のことである)。キャリバー11はホイヤー、ブライトリング、ビューレンとその親会社であるハミルトン(1968年から)、そしてデュボワ・デュプラによる共同開発の成果であったが、その中でもキャリバー11を搭載したモデルで最もアイコニックな存在となったのが、防水性を備えたスクエアケースのモナコであった。
その名の通り、車に関する要素も盛り込まれている。創業家の4代目ジャック・ホイヤーは熱心なモータースポーツファンであり、F1で最も地位の高いグランプリレースの名を、彼は時計に付けて世に送り出したのである。モナコはカーレースと強い絆を築き上げ、それぞれの時代で活躍したドライバーたちの手首を飾った。ジョー・シフェールや、モナコを広く世に知らしめた1971年の映画『栄光のル・マン』に出演したスティーブ・マックイーンなどである。
タグ・ホイヤーが近年発表してきたトリビュートモデルは、文字盤のカラーリングに特徴のあるものが多い。例えば2018年発表の「モナコ ガルフ スペシャルエディション」では、映画『栄光のル・マン』でスティーブ・マックイーンが運転するポルシェから着想を得た、ブルーとオレンジの「ガルフカラー」のストライプが文字盤に採用されている。
このたびの50周年記念モデルは、1970年代を彷彿とさせるアースカラーがあしらわれた。グリーンをベースに、インデックスや針にブラウンとアンバーカラーを配し、3時位置と9時位置のサブダイアルには、サンレイ仕上げのブラックのメッキがかけられている。3時位置はスモールセコンド、9時位置は30分積算計となっており、デイト表示は6時位置に置かれている。文字盤には陰影のあるコート・ド・ジュネーブが施され、特別感を演出している。
ステンレススティール製ケースは縦横それぞれ39mmで、ヘアラインとポリッシュ仕上げが組み合わされている。カーブを描く風防はサファイアクリスタル製で、防水性は100mを保持する。ケース右側の2時位置と4時位置にクロノグラフのプッシャーが設けられ、リュウズは通常と異なり左側の9時位置に配されている。文字盤上のロゴが"TAG Heuer"ではなく"Heuer"となっているのは、オリジナルの1969年製モナコに忠実であるためだ。同様にオリジナルになぞらえたソリッドケースバックにも、"Monaco Heuer"のロゴが刻まれる。加えて"1969-1979 SPECIAL EDITION"と、限定数を伝える"ONE OF 169"の刻印がある。
搭載する現代版キャリバー11は、日付早送り機能、毎時2万8800振動、約40時間パワーリザーブというスペックを備えるクロノグラフムーブメントだ。ブラウンのカーフレザーストラップは、伝統的なレーシンググローブを思わせるパンチング仕様で、ポリッシュ仕上げのフォールディングバックルが合わせられる。納品ボックスは1970年代の意匠が再現され、ダークブルーのボックスに、"HEUER"のロゴ、水平に走るストライプパターンが描かれている。ウォッチクッションはイエローで、ボックス内部は文字盤と同じグリーンとなっている。
なお、これに続く第2弾「モナコ 1979–1989 リミテッドモデル」も6月に入ってから発表されている。他3本の発表も引き続き楽しみに待ちたい。