腕時計を選ぶ際「GMT」というワードをよく目にする。時間を表示する腕時計には欠かせない「標準時」の知識を深めるためにも、GMTやUTCの意味を理解する必要がある。本記事では、各国の標準時やGMT機能を搭載した腕時計の使い方について解説する。
GMTについて知ろう
腕時計は時間を表示しているが、そもそもこの「時間」は何を基準にして決められているのだろうか?
すべての時計に関係する、GMTとUTCについて、まずは見ていこう。
GMTとは?
「GMT(Greenwich Mean Time)」とは、国際的な基準時刻のひとつである。イギリスのグリニッジ天文台を通る子午線(南北線)を基準とした「平均太陽時」を指し、「グリニッジ標準時」や「グリニッジ平均時」と訳すものだ。
平均太陽時とは、恒星である太陽と地球の自転の関係から求められる、年間を通じた24時間(8万6400秒)という1日の平均時間である。
恒星の運動から観測する1日の長さは季節によって変動し、地球の自転速度は一定ではない。これらを平均して24時間を定義し、グリニッジ天文台を基準としたのがGMTである。
なお、大陸のプレート運動によりグリニッジ天文台の位置は少しずつ変化しているため、現在の「本初子午線(経度0度0分0秒)」は「IERS基準子午線」に修正されている。
UTCとは?
「UTC(協定世界時)」とは、セシウム原子時計に由来する国際原子時(TAI:temps atomique international)と、複数存在する世界時のひとつ(UT1:Universal Time 1)を同調させた、GMTに代わって世界の「標準時」に採用されている基準時刻である。
なお、UTCは“Coordinated Universal Time”を意味し、言語によって語順が変わるためUTCと表記統一する。
平均太陽時は、地球上のどこで観測するかで誤差が生じる。UT1ではこの誤差を修正し、世界中のどこでも同一の時刻となるものの、1日の長さ(LOD:Length of Day)が季節により8万6400秒からわずかに前後することは避けられない。
UTCでは、1秒の間隔をTAIと揃えている。さらに、UT1で起こってしまうLODの誤差を、1年で1秒を超えないようにし、3年に1回ほど「閏秒」を1秒挿入して標準化を図っているのだ。
国や地域の標準時
世界の標準時は、UTCを基準にして表記している。航空や通信の分野では、GMTを同義として扱うことも認めているため、GMT表記も珍しくはない。
イギリスのグリニッジを基準(UTC・GMT)として、キリバス共和国ライン諸島のUTC+14(最も早く1日が始まる)から、アメリカ合衆国ベーカー島のUTC-12までの、26時間の時差を表現しているのだ。
なお、時差は経度15度につき1時間である。標準時はUTCまたはGMT表記で「タイムゾーン」に分け、国や地域ごとに規定している。
日本の場合
日本の標準時は日本標準時(日本時間)といい、英語では「JST(Japanese Standard Time)」と表記している。時報が鳴るのはJSTによる時刻だ。
兵庫県の明石市立天文科学館を通る東経135度線の時刻を指し、UTCから9時間進んでいる。
日本標準時は、「UTC+9」の時刻を指し、JSTとUTCの差を表す場合には「12:00:00(UTC+0900)」といった表記が一般的だ。GMTとの差で「GMT+0900」という表記もある。
JSTと同じ標準時の国・地域は以下の通りである。
- KST : 韓国標準時
- YAKT : ロシア ヤクーツク時間
- WIT : インドネシア東部標準時
- PWT : パラオ時間
- TLT : 東ティモール時間
- PYT : 平壌時間
アメリカの場合
アメリカの標準時は、国土が東西に長く、飛び地もあるため複数のタイムゾーンを使い分けている。
- UTC+10 : ChST(チャモロ標準時)。北マリアナ諸島、グアム島
- UTC-4 : AST(大西洋標準時)。アメリカ領ヴァージン諸島、プエルトリコ
- UTC-5 : EST(東部標準時)。ワシントン、ニューヨーク、ボストンなど
- UTC-6 : CST(中部標準時)。シカゴ、ダラス、ヒューストンなど
- UTC-7 : MST(山岳部標準時)。デンバー、ソルトレークシティーなど
- UTC-8 : PST(太平洋標準時)。ロサンゼルス、サンフランシスコなど
- UTC-9 : AKST(アラスカ標準時)。アンカレジ
- UTC-10 : HAST(ハワイ・アリューシャン標準時)。オアフ島、ハワイ島など
- UTC-11 : SST(サモア標準時)。マヌア諸島など
ヨーロッパの場合
ヨーロッパの標準時は、飛び地を除いてひとつの国にひとつのタイムゾーンを規定している。
- UTC+2 : EET(東ヨーロッパ時間)。フィンランド、ウクライナ、ギリシャなど9カ国
- UTC+1 : CET(中央ヨーロッパ時間)。フランス、ドイツ、イタリア、スペインなど、ヨーロッパの大部分の国。機械式時計の本場、スイスもここに含まれる
- UTC+0 : WET(西ヨーロッパ時間)。イギリス、ポルトガル、アイルランド、アイスランドなど
イギリスでは伝統的にGMT、夏時間(Summer Time)は英国夏時間(BST:British Summer Time、UTC+1)と表記している。他のタイムゾーンの夏時間は、EETではEEST、CETではCESTである。
なお、アメリカではDaylight Timeという意味でDTを用い、ESTをEDT、PSTをPDTと表記している。