電波時計のギモンを徹底解説! 正確に時を刻む理由は? GPSウォッチとの違いは?

2024.07.13

今や当たり前となった電波時計の存在。寸分狂わず正確な時刻を示す電波時計は、掛け時計や置き時計、腕時計と小型化・高性能化し、広く普及していった。では電波時計はどのような原理で正確な時刻を示しているのか? 今回はその仕組みや代表的なモデルを紹介する。

広田雅将


正確な時刻を示す電波時計

 今や、日本製時計の標準となりつつある電波時計。「常に正しい時刻を表示する」という腕時計としての目的を見事に果たし、1秒たりとも狂わず正確に時を刻む電波時計は、主に日本の時計メーカーが得意とし、進化させてきた。

他局受信型電波時計

シチズンは1993年、世界初の「他局受信型電波時計」を発表した。受信感度が金属ケースに影響されることを考慮し、文字盤の中央にアンテナを配した大胆なデザインが取り入れられている。

 では、その仕組みを説明しよう。掛け時計や置き時計、小型の腕時計など、サイズの違いに限らず、ベースとなるのは一般的なクォーツ時計である。内蔵した水晶の振動子を用いることで、アナログな機械式時計では実現できなかった精度を実現したクォーツ時計。電池や回路を使用し、安価なものでも月に±20秒ほどの精度で動作する。

 ただし、精度の調整を水晶振動子や電気回路で完結させるクォーツ時計では、必然的に「常に正確な時を刻む」ことはできない。そこで電波時計では、外部から送られてくる電波(=時刻情報)を頼りにしたのだ。

送信局から発信される「標準電波」を受信し、その時刻コードを時刻情報に変換した後、針を駆動するモーターにその情報を送って、表示される時刻を常に補正する、というもの。そのため標準電波を正しく受信できる環境であれば、正確な時刻を知ることが可能である。

はがね山標準電波送信所

標準時刻電波を送信する電波塔は日本に2カ所ある。写真はそのうちのひとつ、佐賀県佐賀市と福岡県糸島市の県境、羽金山山頂付近にある「はがね山標準電波送信所」だ。

 ただ現在、標準電波の送信所を持つ国は限られており、イギリス、ドイツ、アメリカ、中国、そして日本の5カ国だ。そして日本では、福島県の「おおたかどや山標準電波送信所」と、福岡県・佐賀県の県境にある「はがね山標準電波送信所」の2カ所から標準電波が発信されている。

2カ所の送信所による電波は干渉しないように異なる周波数で発信されており、前者は40kHz、後者は60kHzだ。これにより日本列島全土のエリアをカバーしている。そして、それぞれの送信所から発信される電波の時刻情報は、およそ10万年に1秒の誤差で動作するセシウム原子時計によって作られるため、極めて正確である。


電波を受信する条件

 送信所は電波をほぼ1日中送信している一方、電波時計は電波を1日中受信しているわけではない。メーカーやモデルによって異なるが、1日に数回決まった時刻に電波を自動で受信し、時刻の補正を行う。

 携帯電話と同じように、電波を受信しやすい環境としづらい環境がある。周囲に障害物がない開けた場所が望ましく、室内にいる場合でも高い場所や窓際に移動するとよいだろう。反対に、電化製品の近くや高圧線の下、鉄筋コンクリートの建築物内などは電波を受信しにくいとされる環境だ。

 また、電波時計の受信方法には、「定時受信」と「マニュアル受信」の2種類が挙げられる。定時受信は決まった時刻に時計が自動的に受信するもので、マニュアル受信は自身で操作を行うことで強制的に受信するもの。

 加えて受信にかかる時間は、受信開始から時刻修正が終わるまでに10分程度かかる。環境によって受信にかかる時間は前後するが、正確な時刻情報を得るためにはある程度の時間が必要とされるのだ。


高級機に見られる「GPS電波時計」との違い

セイコーやシチズンなどの時計を見ていると、電波時計の中に「GPS電波時計」というワードを目にすることがあるだろう。特に高額なモデルに採用されている仕組みである。

 これは、前述したような送信所からの電波ではなく、地球の周りを周回するGPS衛星からの電波を受信して時間を調整するものだ。

セイコー アストロン

「セイコー アストロン」は、GPS電波時計の技術を進化させてきた。写真は2014年に発表された「SBXB003」。光による発電が可能なソーラー電波ムーブメント、キャリバー8Xを搭載し、価格は当時26万4000円だった。

 GPS衛星からの電波を受信するメリットは、送信所のない場所でも正確な時間調整ができること。しかし、GPS衛星からの電波受信は、送信局からの電波受信と比較して、電池の消費量が大きいというデメリットが挙げられる。

 このようなことがあり、最新の電波時計の中には、送信局とGPS衛星のどちらからも電波を受信できる「ハイブリッド型」が次々と開発されている。機能はかなり複雑になるうえ、価格も高額になりやすいが、送信局のない大半の国々ではGPS衛星によって自動時刻調整ができ、送信局の受信する範囲であれば、消費電力も抑えられる。

 なお、電波時計を選ぶ際の条件は、できるだけ受信速度が早くて確実なものを選ぶこと。もっとも、最新の電波時計は、10年以上前のものとは異なり、受信速度や正確性はかなり改善されている。また、衝撃を受けた際の針ずれを修正できる機能が付いているものが望ましいだろう。


日本の時計ブランドが誇る高機能電波時計

 ここからは、電波時計として優れた現行モデルを3ブランドから紹介する。技術の進歩が目覚ましい現在、毎年のように次々とモデルが発表され、そこに新たな技術が投入されている。国産のセイコー、シチズン、カシオの3強だ。

セイコー アストロン「ネクスター シリーズ GPS ソーラーモデル」

 セイコー アストロンは、1969年にセイコーが世界に先駆けて発売したクォーツ時計、「クオーツ アストロン」から名を継承しているシリーズだ。高い時間精度で世界の人々のライフスタイルを一変させた「クオーツ革命」の意思を継ぎ、2012年に世界初のGPS ソーラーウオッチを誕生させた、セイコーの先進性を象徴する存在となった。

ネクスター シリーズ GPS ソーラーモデル

セイコー アストロン「ネクスター シリーズ GPS ソーラーモデル」Ref.SBXC109
2022年5月に発売された、セイコー アストロンの新世代シリーズ。力強くもモダンなルックスに仕上がっている。GPSソーラー(Cal.5X53)。セラミックス×Tiケース(直径42.7mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。30万8000円(税込み)。

 GPS ソーラーウオッチ誕生から10年の節目を迎えた2022年に披露されたのが、新デザインシリーズNEXTER(ネクスタ―)である。これからの未来を見据え、次世代リーダー達の活躍を後押しすることをテーマに、これまでにないスタイリッシュなデザインが採用されている。

 最新のGPS電波ソーラームーブメント、キャリバー5Xを搭載しており、高い機能性は申し分ない。

シチズン アテッサ「ACT Line エコ・ドライブGPS衛星電波時計」

 シチズンは世界初の「他局受信型電波時計」を発表した歴史もあり、電波時計の開発技術は群を抜いている。現在シチズンが展開する中で最高峰のシリーズがアテッサだ。

 光発電のエコ・ドライブ機能はシチズンを代表するもので、電池交換や時刻設定など、煩わしい操作から解放する画期的なもの。ここで紹介する「シチズン アテッサ ACT Line」の1モデルは、シチズンの技術が詰め込まれた高級機である。

CC4055-65E

シチズン アテッサ「ACT Line エコ・ドライブGPS衛星電波時計F950 ダブルダイレクトフライト サファイアベゼルモデル」Ref.CC4055-65E
光発電エコ・ドライブ(Cal.F950)。スーパーTi×デュラテクトDLCケース(直径44.6mm、厚さ15.4mm)。10気圧防水。30万8000円(税込み)。

 エコ・ドライブGPS衛星電波時計の最上位ムーブメントであるキャリバーF950を搭載する本作。ケースとブレスレットに使用されているスーパーチタニウムは、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のランダー(月着陸船)脚部パーツに採用されている強度に優れた素材だ。

カシオ オシアナス「マンタ」シリーズ

 G-SHOCKで有名なカシオは計算機メーカーであったが、その優れた技術を腕時計に応用し、世界的シェアを誇る時計ブランドとしても成長を続けている。ここで紹介する「オシアナス(OCEANUS)」は、ギリシャ神話に登場する海の神「オケアノス」に由来し、海を連想させるようなデザインが魅力のシリーズだ。

カシオ オシアナス

オシアナス「マンタ OCW-S5000B-1AJF」
タフソーラー。フル充電時約18カ月(パワーセーブ時)。Tiケース(直径42.3mm)。10気圧防水。22万円(税込み)。

 本作はオシアナス「マンタ」シリーズのひとつで、マンタの特徴である薄型でエレガントな外観と優れた先進テクノロジーが融合し、精悍なブラックも魅力的な1本である。ケース、ベゼル、ブレスレットをブラックで統一しながら、文字盤にアクセントを加えるため、見返しや針にはブランドカラーの青を取り入れている。

 チタン素材にDLC加工を施すことで、耐摩耗性の向上が図られているほか、よりソリッドなブラックを演出するなどデザイン面での効果も見られる。また標準電波受信機能を利用した時計単体での時間調整に加え、スマートフォンリンクでも世界約300都市の時刻設定が可能だ。


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