スウォッチ グループの主なブランド
スウォッチ グループはトラディショナルウォッチの大手ティソや、フライバック機構をいち早く導入したロンジンなど、時計製造の歴史を語る上で欠かせないブランドを多数傘下に収めている。
ここでは、スウォッチ グループの看板ブランドとも言える、プレステージ&ラグジュアリーレンジの3ブランドを解説しよう。
王族や貴族も愛した ブレゲ
1775年創業のブレゲは、マリー・アントワネットやナポレオン・ボナパルトといった王侯貴族を顧客とした、由緒正しき最高峰の時計メゾンのひとつである。
ブレゲの代名詞であるトゥールビヨンは、創業者アブラアン-ルイ・ブレゲの発明であり、懐中時計に生じる重力の影響によるヒゲゼンマイの重心のずれによる偏差を相殺する機構であった。
特殊な複雑機構として歴史に埋もれたトゥールビヨンは、1980年代に再発見されることとなる。アブラアン-ルイ・ブレゲの死後、孫のルイ-クレマン・ブレゲが工房を売却した後、紆余曲折を経て、1999年にスウォッチ グループ傘下となり復活を果たした。
現在では、全面スケルトン仕様の極薄型自動巻きトゥールビヨンや、永久カレンダーと連動する均時差表示など、アブラアン-ルイ・ブレゲの天才的設計思想を現代に伝えるウォッチを発表している。
現存する世界最古の時計ブランドとされる ブランパン
1735年創業のブランパンは、現存する世界最古の時計メゾンとされる。1953年にフランス海軍の依頼により開発された「フィフティ ファゾムス」は、現代的なダイバーズウォッチの原型となった。
いわゆる“クォーツショック”を受け70年代には危機的状況に追い込まれたが、1983年にはエボーシュメーカーのフレデリック・ピゲ当主のジャック・ピゲとジャン-クロード・ビバーによって、複雑機構の時計ブランドとして再興を果たした。
1991年には、ウルトラスリム、スプリットセコンドクロノグラフ、ミニッツリピーター、トゥールビヨン、ムーンフェイズ、永久カレンダーという6大機構を搭載する前代未聞のウォッチ「1735」を発表した。
1992年にSMHグループ(現スウォッチ グループ)傘下となった際に「クォーツは使わない」と宣言し、数々のオリジナルムーブメントとグランドコンプリケーションを創り出している。
五輪公式タイムキーパーも務める オメガ
1848年創業のオメガは、スイス高級時計の信頼性を象徴する時計メーカーである。1894年に発表された「19 ライン キャリバー」をオメガと名付け、1903年にこれを社名とした。
1932年オリンピック ロサンゼルス大会では、ラトラパンテ機構搭載ストップウォッチがオフィシャルタイムキーパーに採用され、1957年に発売された「スピードマスター プロフェッショナル」は1969年、アポロ11号とともに月に降り立った。
1999年にはコーアクシャル脱進機を自社開発し、現在、オメガの「マスタークロノメーター」のすべてにはコーアクシャル脱進機が搭載され、1万5000ガウス以上の耐磁性を持つ。
スウォッチ グループの修理サービス
機械式時計は、オーバーホールなしに永遠に動き続ける機械ではない。スウォッチ グループでは、傘下のブランドの修理サービスでも丁寧な仕事を行っている。
高品質なウォッチを安心して使い続けるための、スウォッチ グループのピックアップサービスについて触れておこう。
ピックアップサービスを活用して
梱包資材と配送料を無料でオーバーホール
機械式時計は3年に一度の分解掃除・注油・調整が推奨される。クォーツ式時計であっても、また、脱進機のガンギ葉と爪石の摩擦係数が低く壊れにくいオメガのコーアクシャルムーブメントであっても定期なメンテナンスは必要である。
スウォッチ グループのウォッチは、ブレゲ、ブランパン、オメガを含む12のブランドで、ピックアップサービスにより、梱包資材と時計配送が無料でオーバーホールを依頼できる。
メンテナンスへ進行した場合、返送料も無料だ。キャンセルの場合、返送料は自己負担となる。受け付けは1点ずつ行われることにも注意しよう。
ピックアップサービスの流れ
まずはスウォッチ グループ公式サイトにアクセスしよう。「Customer Service」ページ内の「Pick Up Service」ページを開くと、取り扱いブランドなどの情報がチェックできる。
ページ下部の「ピックアップサービスのお申し込み」から申し込むと1週間以内(年末年始と大型連休を除く)に専用の梱包キットが届く。症状をチェックシートに記入の上、指定運送業者による引き取りサービスを利用しよう。
診断の結果、見積もりが必要なら同ページ内の「マイページ」から確認できる。ただし、スイス本国でオーバーホールすることになれば見積もりは表示されない。
オーバーホールが完了すると、ブランド専用ポーチに入ったウォッチが返送される。料金の支払いは代金引換となる。
背景を知ると時計の見方が変わる
時計メーカーの歴史をひもとけば、巨大資本の傘下に収まる理由が見えてくる。コングロマリットの歴史は時計産業の歴史でもあり、現在の有名ブランドのすべてが順風満帆であったわけではないことにも気付くだろう。
歴史を語る上で「もしも」はタブーであるが、コングロマリットの介入がなければ失われていた技術もあったかもしれない。エボーシュメーカーとの関わりも知り、ウォッチの進化を系統立てて捉えてみてはいかがだろうか。