「通な高級時計」を着けたいと思うなら、時計愛好家を中心に人気を集めているゼニスがおすすめだ。知る人ぞ知る「エル・プリメロ」や「パイロット」といった製品の魅力は言わずもがな、決して順風満帆ではなかった歴史など、“語れる”要素を多数備えた高級時計ブランドなのだ。今回は、そんなゼニスの特徴やおすすめモデルを紹介する。
ゼニスの基本情報
ゼニスとはどのようなブランドなのか、基本情報や名前の由来、歩んできた歴史を確認しよう。
ゼニスとは
ゼニス(ZENITH)は、時計職人のジョルジュ・ファーブル=ジャコにより1865年に創業された、スイスの老舗高級時計ブランドだ。
創業地のル・ロックルは、ラ・ショー・ド・フォンの中心市街とともに、「時計製造業の都市計画」として2009年に世界遺産登録された、スイス時計産業の聖地として知られている。
自社一貫生産の哲学を貫いたゼニスは、時計製造に関わるすべての工程をひとつに集約させ、マニュファクチュールを時計業界の中でもいち早く完成させたブランドでもある。
また、ゼニスのアイコン的な存在であるムーブメント「エル・プリメロ」の開発や、文字盤の一部をスケルトンにしたデザインを世間に広めるなど、技術とデザインの両面で類まれなアイデアを発揮してきた歴史を持つ。
名前の由来
ゼニスとは、「天空の頂点」を意味する言葉である。
創業後まもなくして、ゼニスはそれまで分業の体制をとっていた職人を一堂に集め、マニュファクチュールを整えた。
その後、国内外の博覧会や天文台コンクールなどで製品が受賞を重ねていく中で、1900年のパリ万博に出品した懐中時計用ムーブメント「ゼニス」が金賞を受賞する。
この受賞がきっかけとなり、1911年に社名として正式に「ゼニス」という名称が採用されたのである。
さらに、新たな生産技術の開発や画期的な製造機械の導入、自動化システムの構築にも積極的に取り組んだ結果、1925年には従業員約1000人の大企業に成長した。
ゼニスの歴史
ゼニスは、2015年に創業150年を迎えた老舗の時計メーカーだ。この間に600種類を超えるムーブメントを製作し、2000を超える受賞記録を達成している。
創業以来、急速に成長を続けていたゼニスは、歴史に残る傑作ともいわれるムーブメント「エル・プリメロ」を1969年に発表したことで、世界的な名声を博し絶頂期を迎える。
しかし、クォーツ時計の台頭により引き起こされた“クォーツショック”により経営危機に陥り、アメリカの企業に買収されると同時に、機械式時計の製造停止も余儀なくされた。
その後、スイスの企業に再び買収されスイス資本に復活し、1984年にはエル・プリメロ製造も再開し現在に至る。
冬の時代を乗り越えたストーリーは、いまだに輝きを放ち続けているゼニスを語るうえで欠かせないものとなっている。
ゼニスの腕時計の魅力
ゼニスは、多くの人を引きつける、ゼニスならではの魅力をいくつか併せ持っている。それらの中から主なものをふたつ紹介しよう。
オープンワークが人気
ゼニスには、「オープンワーク」といわれる、デザイン面での大きな特徴がある。
文字盤の一部をくり抜き、ムーブメントの心臓部が見えるようにすることで、機械式ムーブメントの複雑な構造やメカニカルに動作する様子を楽しめるユニークさが好評なのだ。
今でこそ多くのブランドに同様のデザインを確認できるが、ゼニスはトレンドを巻き起こした先駆的な存在だ。
文字盤の一部ではなく全面をスケルトン化し、ムーブメントを丸ごと視覚的に楽しめるモデルもリリースしており、2017年に発売された「デファイ エル・プリメロ21」は、現在に至るまで注文が絶えないヒット作となっている。
https://www.webchronos.net/features/24218/
復活のストーリー
かつてゼニスには、シャルル・ベルモという名の技術者が在籍していた。後に「ゼニスの英雄」として称賛される、ゼニスの歴史を語るうえで欠かせない人物である。
ゼニスは、経営危機によりアメリカ企業に買収された際、新オーナーの方針によりエル・プリメロを含む機械式時計製造の停止を余儀なくされ、設計図や製造道具なども全て廃棄するよう指示されている。
これに反発したシャルル・ベルモは、設計図や道具を黙って隠し続けたのだ。その後、再びゼニスを買収したスイス企業は、機械式時計の復活を信じる企業だったが、一度全てを失ったゼニスは1からのスタートになると誰もが確信していた。
しかし、シャルル・ベルモが長年隠していた設計図や道具のおかげで、ゼニスは見事な復活を遂げることになる。彼の勇気、機転、情熱がゼニスを救うことになったという、知る人ぞ知るエピソードだ。