5月中旬にスイスで開催されたスウォッチ グループのプレステージ&ラグジュアリー レンジの6ブランドの展示会「TIME TO MOVE 2019」において披露された新作で、個人的に「これは!」と思ったモデルを紹介する連載企画。第6回はブランパンの新作パート2をお届けする。
ブランパン「フィフティ ファゾムス バラクーダ」
伝説の「フィフティ ファゾムス」の復刻版
前回は、2019年のブランパンの新作で、No.1の注目モデルとして、コレクター垂涎の超希少モデルとして有名な存在だった1960年代初頭のフライバック・クロノグラフ「エアコマンド」の復刻版を紹介した。
そして、エアコマンドのベースになったモデルが、1953年に誕生した現代ダイバーズウォッチの原点「フィフティ ファゾムス」だ。今回紹介するのは、60年を超える歴史の中で膨大なバリエーションを誇る同モデルの中でも、特徴のある文字盤で知られる「フィフティ ファゾムス バラクーダ」の復刻版である。
「フィフティ ファゾムス バラクーダ」が誕生したのは1960年代末のこと。1960年代、ドイツ海軍に「フィフティ ファゾムス」を供給していた仲介業者、バラクーダ社がドイツ市場に投入した一般モデルである。このバラクーダ社は潜水用器材も扱っており、その社名がモデル名の由来となっている。今でもアンティーク市場では当時のモデルが流通していて、コレクター垂涎のモデルのひとつである。
ちなみに「バラクーダ」は、プロフェッショナルダイバーは言うまでもなく、アマチュアダイバーの間でも、サンゴ礁に棲む「要注意の危険な魚」として知られている。肉食性の上に獰猛で、時にダイバーを襲うこともある。だからこのネーミングは、ダイバーにとってはインパクトのあるモデル名であり、ダイビング器材を扱う会社にとってはもちろん、ダイバーズウォッチの愛称にもピッタリであったと言える。
「温故知新のセンス」が光るブランパン
話をこのモデルに戻そう。「フィフティ ファゾムス バラクーダ」の最大の特徴は、“オールドラジウム”と呼ばれるスーパールミノバを使って再現された、太くて視認性抜群のアイボリーがかったホワイトのバーインデックスと、そのバーインデックスの文字盤外周側に配された鮮やかなレッドの差し色である。
この当時のダイバーズウォッチの復刻モデルは今、他社からも数多く出ているが、オリジナルを見事に再現したストラップも含め、これほど魅力的なヴィンテージ感のあるものは見当たらない。
当時より進化したスペックやディテールも、このモデルの大きな魅力である。直径40.3mmのケース、サファイアクリスタル製インサートの逆回転防止ベゼルやサファイアクリスタル製風防。搭載されるムーブメントは、約100時間のロングパワーリザーブを持つキャリバー1151で、かつてのものから格段に向上した信頼性と美しさを兼ね備えている。
ウエットスーツが常識だった筆者のようなオールドダイバーには懐かしく、また若い世代には、今どきのダイバーズウォッチにはない精悍さが新鮮に映るはず。あらためてブランパンの「温故知新のセンス」に感心させられる1本だ。
ブランパン「フィフティ ファゾムス バラクーダ」
自動巻き(Cal.1151)。28石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約100時間。SS(直径40.3mm、厚さ13.23mm)。30気圧防水。世界限定500本。139万円(税別)。
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ブランパン「フィフティ ファゾムス」の歴史
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