過去十数年の間、クォーツウォッチの開発は進み、時計業界にもHAQ(High Accuracy Quartzの略)という精度を第一義とする新しいジャンルが誕生している。これは年差±10秒前後の精度を求めるものだ。この領域においては日本ブランドが牽引している状況ではあるが、いくつかのスイスブランドも参入意思を表明し、次の段階へ進もうとしている。
 今回は、HAQを原子周波数標準器やGPSなど外部の力によって精度を維持するのではなく、固有のクォーツレギュレーターを持つものから選んだ。

Originally published on watchtime.com
2019年9月17日掲載記事

ロンジン「V.H.P.」

V.H.P.

ロンジン「コンクエスト V.H.P.」。クォーツ(Cal.L288)。SS(直径41.0mm)。50m防水。SSブレスレット。12万1000円(税別)。(問)ロンジン Tel.03-6254-7351

 ロンジンのHAQへの参入は、2017年バーゼルワールドで発表された「コンクエスト V.H.P.」で結実した。他の多くのスイスブランドがスマートウォッチへと参戦したのに対し、ロンジンはあえて身をかわし今までにない高精度のクォーツウォッチ製作へと向かった。知りうる限り、これは初めての年差5秒、つまり月差0.5秒以下を実現したスイス時計だろう。この時計の素晴らしい特徴はギアポジション検知システムを搭載していることにあり、これによって衝撃や磁力によって誤った時刻を表示してしまった場合でも、自動的に針を再同期させることができる。さらにデイトにパーペチュアルカレンダーを搭載しているため、大小の月やいつ閏年があるのかも認識できる。リュウズにもおもしろい仕掛けがあり、時刻合わせをゆっくり分刻みで行うことや、分針は正確な時を指したままで時針を1時間単位に早送りすることができる。2018年のバーゼルワールド以降、V.H.P.にはクロノグラフモデルとGMTモデルも加わった。


グランドセイコー「9F」

9F

グランドセイコー「ヘリテージコレクション SBGV207」。クォーツ(Cal.9F82)。SS(直径40mm、厚さ10.4mm)。10気圧防水。SSブレスレット。32万円(税別)。(問)セイコーウオッチ お客様相談室 Tel.0120 -061-012

 セイコーは1969年に最初のクォーツウォッチを量産体制を整えて市場に導入した。低価格帯の腕時計を実現したクォーツは当時、目新しいものという以上に革命的なものであった。それ以降セイコーは現在まで多くのクォーツモデルを発表しており、中でも最も上位に位置するのはグランドセイコーの9Fキャリバーである。9Fキャリバーは温度補正機能を搭載しており、1日に540回温度を計測し、その情報をクォーツの振動調整に反映して、わずかな誤差も補正するものだ。なお、年差は±10秒を誇る(グランドセイコーのスプリングドライブ9Rも非常に高精度だが、月差は±15秒である)。


ブライトリング「スーパークォーツ」

スーパークォーツ

ブライトリング「エクゾスペース B55 ヨッティング」。クォーツ(Cal.ブライトリングB55)。Ti(直径46mm、厚さ15.25mm)。5気圧防水。ラバーストラップ。101万円(税別)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.03-3436-0011

 クォーツウォッチのハイエンドモデルを占めるのは、ブライトリングのスーパークォーツウォッチコレクションだろう。ブライトリングは長年、温度補正機能付きのクォーツムーブメントをETAから調達してきた。2014年に発表された「コックピット B50」からはスーパークォーツの技術で特許を取得し、自社生産を開始している。温度補正機能、C.O.S.C.認定取得、年差±15秒以内、アナログとデジタルの両表示といったスペックを備えるコックピット B50はブランドに新しい波を起こし、エグゾスペース B55やコルト スカイレーサーへと続いた。なお、「コルト クォーツ」などシンプルな3針のクォーツモデルに関しては、少しずつカタログ掲載を減らしていくことをブライトリングCEOジョージ・カーンは表明している。ブライトリングのHAQモデルのファンには留意いただきたい。


オメガ「スペースマスター Z-33」

スペースマスター

オメガ「スペースマスター Z-33」。クォーツ(Cal.5666)。Ti(直径43mm、厚さ19.85mm)。30m防水。ラバーストラップ。59万円(税別)。(問)オメガお客様センター Tel.03-5952-4400

 誰もがオメガのスピードマスターやシーマスターを知っているが、スペースマスターについてはどうだろう? 1969年初出のアイコニックな「パイロットライン」のケースラインにインスピレーションを受けた「スペースマスター Z-33」は2012年に初めて発表されている。もともとは飛行記録を測るためのプロパイロットウォッチ向けとしてデザインされたものだ。10のフライトの記録、UTCとふたつのタイムゾーン、12時間および24時間表示、アラーム、クロノグラフ、カウントダウンタイマーを搭載している。このマルチファンクションはキャリバー5666が司っており、年差は±10秒となっている。ストラップ素材はラバーのほか、レザーやチタンブレスレットもある。


シチズン「ザ・シチズン」

ザ・シチズン

シチズン「ザ・シチズン AQ1010-54A」。クォーツ(Cal.A010)。SS(直径37.5mm、厚さ11.5mm)。10気圧防水。SSブレスレット。25万円(税別)。(問)シチズンお客様時計相談室 Tel.0120-78-4807

 シチズンは、以前までは日本限定ブランドとしていた「ザ・シチズン」を世界展開へと広げた。アメリカ・ニューヨークのタイムズスクエアにあるブティックでは、取り扱いのある主力クォーツモデルのAQ1010-54A、AQ1030-57H、およびAQ1040-53AにはいずれもキャリバーA010が搭載される。これは2011年に最初に発表された年差±5秒を誇るムーブメントで、パーペチュアルカレンダー機構を搭載するものである。温度補正機能によって精度を保ちつつ、太陽光発電エコ・ドライブの技術を採用している。なおシチズンは2018年のバーゼルワールドで年差±1秒のエコ・ドライブ ムーブメント「Caliber 0100」発表しており、その実装機は2019年に発売された(年差±1秒)。


超絶クォーツ、ザ・シチズン キャリバー 0100、渾身の使用レポ!

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