6月に開催されるニューヨーク・オークションでの重要なポイントはこれのみ、である。品質の重要性と希少性が優先されること。事実、最も重要なリファレンスの最良の個体は、世界における最高のコレクションに加えられており、また市場に出ることは滅多にない。一方で、ありきたりなモデルは、魅力的な価格が伴わなければ、買い手を見つけるのは困難になった。
クリスティーズは6月、パテック フィリップがこれまでに作った初の自動巻き永久カレンダー腕時計の偉大な例である、ref.3448を販売した。元の所有者の孫娘によって委託されたこの個体は、おそらく市場でこれまでに見られたホワイトゴールドの最良のものである。
1969年に作られた、ほぼユニークな初期のモデルは、ロゴの部分を彫り込んだハードエナメルダイヤルで知られる4つのホワイトゴールドケースの3448のうちのひとつであり、尖ったインデックスではなくフラットなインデックスを備えた4つの個体のうちのひとつにあたる。
パテック フィリップが1960年代初頭/中期から1980年代初頭までの20年間に作成した合計586の個体のうち、約130がホワイトゴールドで作成され、そのうち50の個体が特定されている。ホワイトゴールドの50個の既知の個体の大半が1970年以降に製作された。その際、パテック フィリップは文字盤にロゴを彫り込み、その上にエナメルを焼成させることを止め-これは過去の専門職人だけが完璧になしえた、手間と費用のかかるプロセスだった-、単純なプリント文字盤に改めた。理由は、明らかにコスト削減のためだった。アーカイブで確認されたオリジナルの取り外し可能なホワイトゴールドのブレスレットに加えて、時計の完璧な状態は世界中から激しい入札を呼び、最終的にこの個体の落札価格は115万5000USドルに達した。
クリスティーズの残りの販売は波乱のないもので、売れ残りの在庫の多くは、カバーロットを含めて、買い手を見つけることができなかった。それらには、大幅に修復されたピンクゴールドケースにクロワゾネのエナメルダイヤルを備えたパテック フィリップのref.2481、そして1954年に製造された素敵なイエローゴールドのヴァシュロン・コンスタンタンのref.4261がある。この希少で非常に美しい、ミッドセンチュリーに作られた「ティアドロップ」型ラグを備えるミニッツリピーターは35万6250Sドルで販売された。また希少なホワイトゴールドのオーデマ ピゲ ロイヤルオーク ref.5402のB番は11万8750USドルで販売された。
サザビーズのニューヨークでのセールには、パテック フィリップの腕時計と懐中時計の素晴らしいセレクションが含まれていたものの、質の高いものはほとんどなかった。ref.2499の第4世代のふたつの個体は同じオークションで販売されたが、どちらも1984年に作成された後期モデルであり、生産の終わりに向かう時期の個体であった。比較可能な条件を挙げるなら、ひとつは文字盤にティファニーの名前が記されており、80万USドルで販売された。もうひとつの「標準的」な個体が45万USドルで販売されたことを考慮すると、これは大きな「Tiffanyプレミアム」を反映したものである。
目の肥えた愛好家にとって、おおむね「工業的」な仕上げを持つプリント文字盤とモダンなサファイアクリスタル風防を備えた第4世代のref.2499は、もっとも最も蒐集の需要が乏しいモデルであり、最近の市場で比較的大量に見られるようになったことは、おそらくこれを反映している。なお同じオークションで、1954年に製造されたパテック フィリップのピンクゴールドケースを持つref.2497は、平凡なコンディションを持ち、41万2500USドルで販売された。
これは、5月にジュネーブ・オークションで、98万USドルで販売された最高品質のref.2497の約40%だった。他のふたつの注目すべきロットは、1987年に製造されたイエローゴールドケースとスナップバックを持つ、最初のシリーズのref.3970である。この個体は15万6250USドルで販売された。また1925年に製造された、アールデコスタイルを持つカルティエの「コメットクロック」は35万USドルを達成した。
真に優れた時計を見つけるのがますます困難になりつつある、という厳しい現実を考えると、世界的に政治と経済的が不安定な状態にあっても、「品質プレミアム」-つまりは最高の個体と平凡な個体の価格差-がとりわけ最も重要なブランドの最も重要なリファレンスにおいて、予見可能な範囲でいっそうの広がりを見せることは、予期すべきだろう。
重要な腕及び懐中時計の世界的な愛好家にしてコレクター。