チュチマ「パトリア」
Text by Masayuki Hirota(Chronos-Japan)
老舗ヒラノの限定チュチマ「パトリア」
クロノス日本版及びwebChronosで大絶賛の、チュチマ「パトリア」SSモデル。18Kゴールドケースと同じムーブメントを持ちながらも、このモデルの価格はなんと約70万円台。筆者は、かのブルーナー先生にぜひ見ろと言われ、実物を触る機会を得た。これぞ、時計好きにとっての理想的なエントリーモデル(というには少し値段は高いが)ではないだろうか。ロービートにフリースプラングテンプと巻き上げヒゲを持つキャリバー617は、加えて高級機然とした仕上げと、いかにも高級機らしい巻き味や針合わせの感触を持っていたのである。これがアンダー100万なら大バーゲンだろう。
ちなみにどういう時計かは、筆者のブログを参照すべし。
https://www.webchronos.net/blog/31049/
名古屋にある時計・宝飾 ヒラノは、目利きの“ヒラノブラザーズ”が牽引する、中京圏の名店だ。顧客もみな眼が肥えていて、ヒラノで講演してくれと頼まれると、さすがに筆者も緊張する。仕事柄、どの店が好きかは公言しないが、実のところ、時計・宝飾ヒラノは筆者が最も好きな時計店のひとつである。
今春、チュチマの工房を訪れたヒラノブラザーズは、ミリタリー系の新作のあとにパトリアのSSモデルを見せられた。筆者がバーゼルワールドで触った、まさにそのモデルである。対してヒラノブラザーズは、会長のディーター・デレカーテ氏に「このモデルの針を、18Kゴールドに変えられますか、しかも同じ値段で」という無茶な注文を出したのである。曰く「18Kゴールドケースモデルに使われている剣型の18Kゴールド針が美しく、白文字盤との相性も良かったため」。
果たして完成したのが、ヒラノスペシャルのパトリアである。基本的なスペックは、レギュラーのパトリアSSに同じ。しかし、針がゴールドに変更されたほか、文字盤もブルーからオパーリン仕上げのシルバーホワイトに改められた。より好ましいルックスを得たパトリアだが、年内入荷分は5本のみ。運が良ければ来年も入荷するかもしれないが、時計・宝飾 ヒラノの平野明良氏曰く「来年の入荷はまだわかりません」とのこと。
実物は未見だが、バーゼルでレギュラー版を触った筆者は断言したい。とりあえず、手巻きでムーブメントの良い時計が欲しい人は、これを買っておきましょう、と。サイズは多少大きいけど、ケースにみっちり詰まった巨大なムーブメントは、いつ見ても見飽きることがない。それに、この限定版を触った訳ではないが、ヒラノブラザーズが監修している以上、仕上がりは間違いないはずだ。
Contact info: 時計・宝飾 ヒラノ Tel.052-935-5278