世界有数のメゾン、シャネルは腕時計においてもそのデザイン哲学を表現し続けている。シャネルの創業者ガブリエル・シャネルの思想を受け継ぎ、既存のコードを打ち破る時計を追求しているのだ。今やムーブメントを自社開発するシャネルの魅力を紹介しよう。
時計ブランドとしてのシャネル
シャネルの腕時計はレディースから始まっているが、現代ではメンズモデルや男女兼用のモデルも数多く展開している。
また高いファッション性からデザインに注目が集まるが、ムーブメント開発にも積極的で、現在はマニュファクチュールとしての道を歩んでいることにも注目いただきたい。
1987年に初の腕時計プルミエールが誕生
シャネルの時計業界への参入は、1987年に発表した「プルミエール」から始まった。これは、パリのヴァンドーム広場からインスピレーションを得てデザインされた、女性のための時計だ。
小ぶりな八角形のケースが特徴的なプルミエールは、30年代風のレトロな雰囲気とコンテンポラリーなテイストを同居させる。
「最初」あるいは「一番」を意味するプルミエールは、誕生から30年を超えてなお人気の高い、シャネルを代表する時計コレクションだ。
その材質と色で時計界を驚嘆させたJ12
シャネルが2000年に発表した「J12」は、ケースとブレスレットにブラックのセラミックを用いた革新的な時計として登場した。
セラミックはステンレススティールより加工が難しい。製造途中で破損や収縮などが起こりやすく、その品質の管理や保証の難しさから時計に採用される例は少なかった。だが、金属アレルギーを起こさない素材であること、艶やかな質感はセラミックならではであり、その美しい輝きは驚きをもって迎えられた。
技術力向上とともに本格的な機械式時計へ
ファッションブランドとしてのイメージが強いシャネルだが、機械式時計の技術力向上にも余念がない。
シャネルは、ETAから上級グレードのエボーシュを無条件で購入できる数少ない時計メーカーのひとつである。
しかし、シャネルはこの地位に甘んじることなく「自社開発ムーブメント」を求め、自動巻ムーブメントの製造会社ケニッシに資本参加している。
2019年に発表された「J12」に搭載されている「キャリバー 12.1」はケニッシ製ムーブメントであり、専門家からの評価も高い。なお、キャリバー 12.1はC.O.S.C.認定クロノメーターとなっている。
シャネルの時計に関するポイント
シャネルの時計には、メゾンとしての歴史に裏打ちされた特徴が見られる。そのポイントを見ていこう。
納得のハイセンスなデザイン
シャネルの時計はどんなモデルでも、一目でシャネルと分かる。
その理由は唯一無二のアイコニックなデザインだ。
2019年、誕生から20年目を迎えた「J12」は見た目の印象はほとんど変えることなく、7割以上構成要素をリニューアルしている。外観上のディテールの改善が各所に加えられ、ムーブメントも一新しているのだ。
やや細身に仕上げられたベゼル。外周の刻みの数は30から40へ増やされている。インデックスはセラミック製に変更されるなど枚挙にいとまがない。特筆すべきはセラミックケースの成型だ。
2019年のリニューアルに伴い、ステンレススティール製の裏蓋を廃し、セラミック製のミドルケースと裏蓋が一体となった新しいセラミック製ケースが採用されている。
J12はメンズにもおすすめ
シャネルの時計は、女性用あるいは男女兼用のものが多い。
明確に男性をターゲットにしたコレクションは「ムッシュー ドゥ シャネル」である。ムッシューとは、英語におけるミスターやサーにあたる男性の敬称だ。
「ムッシュー ドゥ シャネル」は、シャネル初の自社開発ムーブメントを搭載したモデルである。バリエーションが豊富な人気コレクション「J12」は、男性の使用を意識したモデルと男女兼用モデルを展開する。
「プルミエール」のデザインを踏襲した「ボーイフレンド」は、男性からすればフェミニン、女性からすればマスキュリンといった印象を受ける多面性を持ったモデルだ。
シャネルの時計は単なるファッションアイテムではなく、目の肥えた機械式時計ファンの要求を満たすクォリティーも備えている。