ブルガリの時計を知る。特徴や代表的なモデルをチェック

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2021.08.08

ブルガリの時計の特徴

時計メゾンとしてのブルガリには、ローマ的なデザイン思想が根底に流れている。

まずローマがあり、これをさまざまな角度から再解釈して最先端の技術を用い、自分自身で時計を刷新し続けているのだ。

伝統に根ざしつつも独創的なデザイン

イタリア文明館

1942年に竣工した「イタリア文明館」。「四角いコロッセオ」という異名のとおり、コロッセオに共通する大きな開口部を持つ。コンクリート造だが、古代ローマ建築同様、表面にトラバーチン大理石が貼り込まれている。

ローマには、「イタリア文明館(文明宮)」という建築物がある。これは、古代ローマのコロッセオを直線的なデザインに再解釈した形状をしており、「四角いコロッセオ」と呼ばれるものだ。

そしてまた、八角形と円形の組み合わせはローマのいたる所に発見できる。ブルガリはローマの建築物や芸術を基礎として、新古典主義的解釈により独創的なデザインを生み出し続けているのだ。

ブルガリのメンズ時計は非常に薄いことも特徴である。薄さにおいて世界記録を更新し続けるほどだ。

それでいて立体感があり陰影による奥行きを感じさせるが、これは建築物にヒントを得た光と影のコントロールによるものである。

ローマ時代に普及した幾何学模様は、その後も繰り返し用いられる。写真はヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂の内部で、「オクト」に共通する八角形のパターンを見ることができる。

スポーツモデルも充実

ブルガリの時計は、ジュエラーとしての歴史に立脚した、ハイラグジュアリーでドレッシーなモデルが多い。

一方でチャレンジ精神あふれるモデルも登場させている。そのなかで特筆すべきが、1998年に発売された「アルミニウム」だ。これは、ジュエラーとしての高級なイメージを覆す衝撃的なモデルであった。

ブルガリ アルミニウム

1998年に登場した「アルミニウム」。手軽な価格と品質を兼ね備えたモデルとして、人気を博した。レディスモデルやクロノグラフモデルなどもラインナップ。

このモデルでは名前のとおり、一般的に時計の素材として用いられることがないアルミニウム製のケースを、ベゼルにラバーを採用するという斬新な素材づかいで、スポーツカジュアル路線に一石を投じている。軽く、薄い仕様で使い勝手も良かった。

2015年に発売された「ディアゴノ マグネシウム」では、これも珍しいマグネシウムをケース素材としている。ダイヤルにブルーやレッド、イエローなどインパクトあるカラーリングを採用し、ブルガリ独自のスポーツウォッチスタイルをつくりあげた。


ブルガリの主なコレクション

ブルガリは1977年以降、さまざまな高級時計のコレクションを発表してきた。このうち、現行ラインでは生産が続けられていないものもある。これは、イタリア的なもの、あるいはローマ的なものを求め続ける姿勢の証といえるだろう。

ブルガリの代表的なコレクションを紹介する。

オクト

オクト

オクト
2012年初出。04年にリリースされたジェラルド・ジェンタ オクトのデザインを継承しつつも、スポーツウォッチの要素を加味した基幹モデルである。写真のモデルは、自社製ムーブメントを搭載した直径38mm版。自動巻き(Cal.ソロテンポ)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS。100m防水。

「オクト」は、今やブルガリのアイコンといっても過言ではないコレクションである。

「オクト」は2012年に登場。2004年にジェラルド・ジェンタが考案した八角形フォルムを踏襲し、新たな解釈を加えて誕生。名前のとおり八角形をベースフォルムとしたコレクションである。

なかでも2014年に発表された『オクト フィニッシモ』コレクションは、そのデビューから“薄さ”への追求が命題となっていることがわかる。

その追求の結果は、手巻きトゥールビヨン(2014年)、ミニッツリピーター(2016年)、自動巻き三針(2017年)、自動巻きトゥールビヨン(2018年)において、当時のワールドレコードを樹立。そして2019年にはGMT機構搭載のクロノグラフムーブメントで、こちらもワールドレコードとなる驚異の厚さ3.30mmの実現に結実している。

またオクトのオリジナル(現 オクト オリジナーレ)は、他に類を見ない110面という複雑多面体構造も見事のひとことに尽きる。薄さにいかに奥行きを表現するのか。この実現も容易ではなかったはずだ。

「オクト」のコレクションからは、2010年にブルガリが時計メーカー宣言をして以降、ブルガリが歩んできたオートオルロジュリーとしての道が見てとれる。

ブルガリ・ブルガリ

ブルガリ・ブルガリ Ref.BB41BSLD

ブルガリ・ブルガリ Ref.BB41BSLD
自社製ムーブメントを初搭載したブルガリ・ブルガリ。2000年以降の垂直統合化を反映して、外装の質感もいっそう高まった。最大の特徴は、1975年のブルガリ・ローマと同じラッカー仕上げの文字盤。ブルガリらしいツヤのあるニュアンスを取り戻しており、完成度は極めて高い。自動巻き(Cal.ソロテンポ)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径41mm)。50m防水。

「ブルガリ・ブルガリ」は、1977年に登場。ブルガリのマニュファクチュールとしての道を切り開いた同社初の時計のコレクションである。

ベゼルに古代ローマのコインに丸く刻まれた文字にインスパイアされたダブルロゴが刻印される。登場時に「最もアイコニックな高級時計」と歓迎されたデザインはブルガリの創造性を今に伝える。

大胆に配された12時と6時のアラビア数字と長いバーインデックス、そして細くストレートなラグは「ブルガリ・ブルガリ」の存在を印象づける。ブルガリの歴史に輝くファーストコレクションだ。

アイコニックピースの肖像 / ブルガリ・ブルガリ
傑作「ブルガリ・ブルガリ」の歩みを、ファーストモデルから見ていく

https://www.webchronos.net/iconic/16283/


ディアゴノ

ディアゴノ マグネシウム

「ディアゴノ マグネシウム」。自動巻き(Cal.ソロテンポ)。26石。2万8800振動/時。約42時間のパワーリザーブ。マグネシウム+セラミック+PEEK(直径41㎜、厚さ9.5㎜)。ラバーストラップ。

ジェラルド・ジェンタ

「ジェラルド ジェンタ ウォッチ 101932」スケルトン仕様に仕上げられたGG8000キャリバーを搭載したトゥールビヨンモデル。6時位置にジェラルド・ジェンタの銘とキャリバー番号が記されてる。手巻き。パワーリザーブ70時間。18KPGケース。ケース径53mm。30m防水。世界25本限定。

「ジェラルド・ジェンタ」は、ブルガリ時計の歴史において不可欠な、今は亡き伝説的時計師チャールス・ジェラルド・ジェンタの設計思想を引き継いだコレクションである。

そのコレクションは複雑機構をブルガリの独特なケースに収めるもので、特にジェンタが得意としたレトログラードとジャンピングアワーはコレクションの代表的な機構だ。

ブルガリの初代「オクト」、「ブルガリ・ブルガリ」は彼の作品である。デザイナーとしての名声を獲得する一方、複雑機構搭載モデルも多い。

現在、コンプリケーテッド・ウォッチにおいても名声を得るブルガリは、このコレクションを礎として成長したのである。