シチズンは2020年もバーゼルワールドに出展する事を表明した。
シチズンは2020年もバーゼルワールドへ出展
「シチズンウオッチグループは、100年以上も続くバーゼルワールドに引き続き出展することで、他の出展ブランドと共に時計業界全体を盛り上げていきたいと考えています」(抜粋、ただし原文ママ)
これは、このコラムに「セイコーのバーゼルワールド出展中止」の記事をアップした後、筆者がシチズン時計に行った書面での質問、「シチズングループは2020年もバーゼルワールドに出展するのか」「バーゼルワールドの意義と価値をどう考えているのか」に対し、11月8日に届いた回答の一節だ。この出展継続の決定は、今夏に行われたという。
時計ジャーナリストとして個人的には、まずはホッとした、というのが正直な感想だ。
セイコーの出展中止報道を受けて、webChronosユーザーの多くが「日本メーカーの撤退ドミノ」を予想したのではないだろうか。正直に言えば、筆者も心配していた。図らずも四半世紀にもわたってバーゼル詣でを続けてきたが、日本メーカーの待遇にはずっと疑問を抱いてきたし、日本という国の「同調圧力」の強さは、個人ばかりでなく企業社会にも共通する問題だからだ。
しかしうれしいことに、そうはならなかった。もちろん、カシオの動向も気になるし、バーゼルワールドが依然として危機的な状況にあることは変わらない。
この件について筆者のコラムを始める前に、まずは改めて「バーゼルワールド2020」出展についての、シチズンの2020年の回答を整理してお伝えしよう。
シチズン時計とその傘下の「シチズン」「ブローバ」「フレデリック・コンスタント」「アルピナ」「ミヨタ」(ムーブメントブランド)は、従来通り「バーゼルワールド2020」に出展。さらに、これまでバーゼルワールドに出展していた「アーノルド&サン」は、バーゼルワールドに先駆けて行われる「WATCHES & WONDERS GENEVA」(ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ、旧SIHH)に出展する。
大きな、ではないがこれまでと違う点、新しいニュースは「アーノルド&サン」が、バーゼルからジュネーブに発表の場を移すことだ。WATCHES & WONDERS GENEVA(以下、長いので勝手ながらWWGと略させていただく)の展示会場の構成がどうなるのか、まだ分からないが、従来通りなら「カレ・ド・オロロジェ」と銘打たれていた新進&独立時計師ブランドのエリアに出展することになるだろう。
しかしWWGは、トップページのキャッチコピー「a lively, immersive, city-wide circuit」つまり、ジュネーブ市全体を会場にした活気ある体験型のイベントをコンセプトに掲げている。展示会場が市内になる可能性もある。
いずれにせよ、出展中止と出展拡大。セイコーとシチズン、日本を代表する2大、そして老舗の時計メーカーで、スイス2大時計フェアへの対応が鮮やかに分かれたかたちとなった。
ただ今回の両社の決定を「スイス2大時計フェアへの対応の違いから、世界規模でのウォッチビジネスに対して、セイコーは消極的でシチズンは積極的だ」と考え、決めつけてしまうのは大きな間違いだ。このことは強調しておきたい。