ジャン-ジャック・ブランパンが1735年に工房を開いたことでブランドの歴史をスタートさせたブランパンは、現存する世界最古の時計ブランドと呼ばれる。1970年代にはクォーツ革命によって大きな打撃を受けるが、1983年にジャン-クロード・ビバーを経営陣に迎え、「シックス・マスターピース」と呼ばれる機械式時計の伝統的なコンプリケーションを次々に発表。スイス機械式時計の復活に大きく貢献した。以後も、機械式時計のみを製造し続けて現代に至る。今回はそんな同ブランドの2019年新作を見ていこう。
text by Yuto Hosoda(Chronos-Japan)
ブランパンの2019年新作を振り返る
例年参加していたバーゼルワールドからスウォッチ グループが撤退を表明。ブランパンを含む上位6ブランドは新たに「TIME TO MOVE」を独自開催し、各ブランドのアトリエにて2019年の新作を発表した。その新作をコレクションごとに紹介していきたい。
Tiケースを採用し、インナーケースを廃したことで、大幅な軽量化を果たしたモデル。軽快な取り回しにより装着感が向上している。ダイバーズウォッチらしからぬ高級感は素材が変わっても健在だ。自動巻き(Cal.1315)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。Ti(直径45.00mm、厚さ15.40mm)。300m防水。155万円(税別)。
シリコンヒゲを採用した“ニュー・フィフティ ファゾムス”
ブランドの顔と言える「フィフティ ファゾムス」コレクションでは、定番として人気の高い「フィフティ ファゾムス オートマティック」のブラックタイプにチタンケースを初採用。さらに搭載されるCal.1315のヒゲゼンマイを非磁性素材のシリコン製とすることで、耐磁性能を担保すべく必要だったインナーケースが使用されなくなった。そのため、直径45mmという大型ケースは大幅な軽量化を果たしている。また、文字盤をセラミックス製にした18KRGケースモデルやフランス海軍特殊潜水部隊へのトリビュート、さらにはドイツ連邦海軍へフィフティ ファゾムスを納品する仲介業者の希望で製作された民生用モデルの復刻など、積極的に新作が投入された。
硬度が高く加工の困難なセラミックスをダイアルに使用した意欲作。このモデルでは美しいコバルト色を採用し、中心部をサンバースト仕上げにしている。自動巻き(Cal.1315)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。18KRG(直径45.00mm、厚さ15.40mm)。300m防水。352万円(税別)。
初代フィフティ ファゾムスの開発に大きく貢献したフランス海軍特殊潜水部隊へのトリビュートモデル。ケースバックには同部隊の記章がエングレービングされる。自動巻き(Cal.1315)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SS(直径45.00mm、厚さ15.70mm)。300m防水。世界限定300本。153万円(税別)。
米国空軍向け試作機を復刻したエアコマンド
19年新作は前述のフィフティ ファゾムスや後述するヴィルレ以外からも発表されている。それが「スペシャリティ」コレクションと呼ばれる、通常のコレクションとは別に発表された「エアコマンド」だ。エアコマンドといえば1990年代にも同様のコレクションが存在したが、本作は50年代にアメリカ空軍向けとして12本のみが製作されたプロトタイプクロノグラフを復刻させた限定モデル。古風なツーカウンタークロノグラフはもちろん、日焼けしたような風合いの蓄光塗料、ボックス型サファイアクリスタル製風防に至るまで、かつてのデザインを忠実に再現している。
プロユースを想定して開発されたパイロットウォッチのプロトタイプを復刻。カウントダウン式の両方向回転ベゼルとフライバックを搭載。自動巻き(Cal.F388B)。35石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径42.50mm、厚さ13.77mm)。30m防水。世界限定500本。195万円(税別)。