カルティエ「タンク」コレクションの尽きぬ魅力。主要モデルや特徴を紹介

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2021.05.25

性別問わず人気のカルティエ「タンク」

「タンク」の魅力は多様な派生モデルがラインナップしていることにある。現在「タンク ルイ カルティエ」から最新の「タンク マスト」まで、8種類のコレクションを誇る。

カルティエはパリ、ロンドン、ニューヨークの3カ所を拠点として成長した。ゆえに母国フランス、イギリス、アメリカの3国は、カルティエにとって重要な意味を持ち、タンクには現在フランスとアメリカの名を冠したコレクションがラインナップされている。

ここでは特に人気の高い4種類と最新モデルを紹介する。

タンク フランセーズ

タンク フランセーズ

Photo 2000 © Cartier
ケースとブレスレットの滑らかなラインが魅力の「タンク フランセーズ」。究極のモダニティを感じさせる、ジュエラーだからこそつくり上げることができたモデルだ。クオーツ。SS×YG(縦30×横25mm、厚さ6.65mm)。日常生活防水。72万500円(税込み)。

「タンク フランセーズ」は“フランスの「タンク」”を意味するコレクションだ。正面から見れば直線的だが、ケースはアーチ状に湾曲しており、ブレスレットとの滑らかな一体感が美しい。

正方形に近いダイアルには、伸びやかなローマンインデックスとブルースティール剣型針がよく映える。カボションが際立つリュウズの存在感は、シンプルなデザインをさりげなく飾り立てるアクセントだ。

1996年に登場してから20年以上に渡って、デザインに大きな変更は加えられていない。「タンク」の中で特に人気が高く、代表的かつ普遍的といえるコレクションだ。

タンク アメリカン

タンク アメリカン

Photo 2000 © Cartier
ブレスレットのしなやかなコマが独創的なスタイルの「タンク アメリカン」。クォーツ。18KWG(縦27×横15.2mm、厚さ6.5mm)。347万1600円(税込み)。

「タンク アメリカン」は、1989年に発表された「タンク」のなかでも縦長のケースを持ったコレクションだ。ダイアルは横幅に対して縦幅が2倍ほど長く、剣型針は極端に短く見える。

針が指す方向でダイアルの印象が変わり、時間表示のトリックを感じさせる点がユニークといえるだろう。

ケースはアーチ状のカーブを描くが、長辺が長いために傾斜はゆるやかだ。レクタンギュラーケースの特徴を誇張することにより、幾何学的なデザインを生み出している。

ケースの前面にブリリアントカット ダイヤモンドを配したり、ゴールドブレスレットを採用したりするなど、一流宝飾メゾンらしいデザインがラインナップされていることも特徴だ。

タンク ソロ

タンク ソロ

Photo 2000 © Cartier
1917年に誕生したタンクのDNAをもっとも色濃く残す「タンク ソロ」。自動巻き。18KPG×SS(縦40.85×横31mm、厚さ7.8mm)。日常生活防水。98万4500円(税込み)

「タンク ソロ」は、初代タンクのデザインをよく踏襲したコレクションだ。ストレートに伸びるケースサイドやケースとベゼルのフラットな一体感は、洗練されたエレガンスを感じさせる。

「タンク」のなかでも特にシンプルなデザインで、ビジネスシーンにもドレスシーンにもフィットする、着用シーンを選ばない汎用性も魅力だ。

100年以上愛され続けてきた「タンク」の本質を、存分味わえるモデルといえよう。

タンク MC

タンク MC

Vincent Wulveryck © Cartier
デザインコンセプトはそのままに、カルティエのマニュファクチュールとしての魅力を前面に押し出した「タンクMC」。自社製手巻きムーブメント、Cal.9619 MCをスケルトン加工し、力強さとエレガンスを表現する。手巻き(Cal.9619 MC)。20石。振動数2万8800回/時。パワーリザーブ約3日間。18KPG(縦43.8×横34.5mm、厚さ9.3mm)。日常生活防水。625万6800円(税込み)。

MCとはマニュファクチュール・カルティエを意味し、「タンク MC」は自社製ムーブメントを採用したコレクションである。これにより、ダイアルの中心からは秒針がなくなり、6時方向にスモールセコンドが採用された。

正面からは「タンク ソロ」を思わせる形状だが、ケースサイドはラウンドしており、「タンク フランセーズ」に近い。「タンク」の伝統的デザインを色濃く踏襲しながらも、現代的なセンスを盛り込んだ印象だ。

ダイアルの全面にギヨシェを施し、格式の高さをうかがわせる。裏蓋はトランスパレントバックになっており、ムーブメントの鑑賞も可能だ。

タンク マスト

タンク マスト

© Cartier
カルティエの開発チームが約4年の歳月をかけて完成させた「ソーラービート™」ムーブメントを搭載する。植物素材のストラップには40%がリンゴの廃棄物を採用。(左)ソーラービート™️ソーラームーブメント。SS(縦29.5×22mm、厚さ6.60mm)。予価28万8200円(税込み)。(右)ソーラービート™️ソーラームーブメント。SS(縦33.7×25.5mm、厚さ6.60mm)。予価30万3600円(税込み)。

2021年、タンクの新コレクション「タンク マスト」が登場する。1917年に誕生した「タンク」と、1970~1980年代の象徴として知られる「マスト ドゥ カルティエ」を踏襲するシルエットが特徴だ。

今回の「タンク マスト」では、約8年の長寿命を誇るクォーツムーブメント搭載モデルと自動巻きモデルのほか、カルティエが独自開発した「ソーラービート™」ソーラームーブメント搭載のモデルもラインナップする。

ソーラーエネルギーはローマ数字に開けられた目には見えない穴からダイヤル下の光電池を届け、この最新技術により電池寿命約16年を誇るムーブメントを実現した。

また、クォーツモデルではローマ数字やレイルインデックスなど、タンクのアイコンを取り去ったカラーダイヤルもラインナップ。次世代に向けた新たな「タンク」を世に問う、意欲作揃いだ。


「タンク」コレクションの魅力とは

「タンク」は戦車のキャタピラから着想を得るという、一般的な腕時計の文脈とは異なるコンセプトによりデザインされた。

これにより得られた特異なデザイン性と芸術性は、数多くの著名人から熱烈な歓迎を受けている。ここでは「タンク」が愛される理由について見ていこう。

デザイン性と芸術性

「タンク」は、懐中時計の小型化という流れとは異なる、独自のコンセプトのもとに誕生した。樽型の「トノー」ウォッチからさらに横幅を圧縮して直線的なデザインとし、ストラップと融合するほどスリムかつ軽量なボディを持つ。

横幅を圧縮することは内部構造の制約につながるが、優れたムーブメントを搭載することにより、問題をクリア。そうして得られた実用的かつエレガントなデザインは、比肩するものがないといえるだろう。

ケースとラグに境界はなく、ベゼルすらない。この構造はあまりに挑戦的だが、ドレスウォッチとして見ればこれ以上ないほどに洗練されている。

ダイアル上のブルースティールの剣型針とローマンインデックスは、カルティエの伝統といえるアイコンだが、常に新しさを求める姿勢から、100年以上の歴史を有するとは思えない。アヴァンギャルドであることこそ、「タンク」の魅力である。

著名人も愛用

「タンク」の愛用者を指して「タンキスト」という言葉が生まれるほどに、「タンク」は多くの著名人に愛されてきた。

アンディ・ウォーホルやアラン・ドロンをはじめ、シャーロット・ランプリング、パティ・スミスなど、男女問わず数多くのセレブリティを虜にした。

初代「タンク」の誕生から100年をこえてなお、クラシックへの回帰や魅力の再構築を続け、その情熱はカルティエの新たな「タンク」への渇望なのだろう。