【時計を外し、身を委ねる旅寓】ふふ 河口湖

構想から10年、開業から1年を迎えた「ふふ 河口湖」。なんとも贅沢な近さに聳える霊峰富士、湖、山々が織り成す絵葉書のような致景を望む地に佇み、自然とラグジュアリー、相反するふたつがしっとりと共存する。
“ふふ”とは、女性の微笑みやはにかみに由来するという。大切な相手のそのような表情を見たければ、ぜひこの地を共に訪れてみてはいかがだろうか。

外川ゆい:取材・文 Text by Yui Togawa
福本和洋:写真 Photographs by Kazuhiro Fukumoto

ふふ 河口湖

日が暮れると、テラスのファイヤーピットでは、薪がパチパチと燃え、炎が揺らめく。同様に、ガーデンの「AKARI」や「レストラン 山のは」の入り口でも薪が燃やされ、自然を間近に感じる「ふふ 河口湖」の象徴に。

境界なく森に溶け込む富士の裾野のリゾート

 雄大な自然に包まれた地。その感覚は、館内に入っても続いていく。高く積まれた薪を横目にエントランスを入ると、シンボルである松ぼっくりがお出迎え。河口湖には、赤松が多いことに由来しているそう。ロビーのソファに身を沈めると、どこを見ても草木が目に飛び込み、その緑は窓の外に広がるテラスの緑、さらに周囲の山々に繋がっていく。ロビー、テラス、バーが広がる2階フロアには、ハーブをはじめ、約50種の植物がグリーンベルトをつくり、外界とシームレスな空間になっている。

 随所に置かれた切り株も外界との一体感を生む理由のひとつかもしれない。さらに、レストランとバーにあるケヤキの一枚板のカウンター、コーヒードリップやキャンドルフォルダー。いずれも、かつてこの地に根を張っていた樹木や埋まっていた石たちが、新たに息を吹き込まれたもの。額装された写真の数々は、開業の3、4年ほど前に千房輝氏が撮りためたこの地が森だった時の姿だ。時を超え、姿を変え、命が繋がっている。それは、聞かなければ知り得ない事実かもしれないが、ゲストには、自然に包まれるような心地よさとして伝わってくる。

ロビーに置かれた大きな松ぼっくり。こちらのシンボルであり、館内に点在している。

 日が暮れると、バーの天井から木の実のように吊るされたいくつもの灯りが幻想的に輝く。それは、星のように窓にも映し出され、ガーデンの木に施された灯りにもリンク。夜が深まるにつれ、色濃くなっていく。食事でも薪や溶岩でこの地らしさを、山梨の食材を軸に表現。夕食と朝食は、シアターシートのような設計の「レストラン 山のは」にて提供する。

 樹々、河口湖、富士山と連なる景色は、この施設の一部と化している。季節ごとにこれほどまで違うのかという富士山の表情を捉えられるのもこの距離ゆえ。朝昼の象徴的な姿も優美だが、こちらに泊まったなら、眠る前にベランダに出て眺めていただきたい。周囲には疎らな灯りしかなく沢山の星が見えるような暗さなのだが、くっきりとその輪郭を捉えることができる。暗闇に聳える富士の山は、静寂でありながら悠久泰然。その姿は、森と一体となった「ふふ 河口湖」の存在に重なる。

(左)ゲストの前で藁が燻される「香草 山梨牛香草焼き」。甲州牛やワインビーフなど、山梨県産の牛肉のサーロインを使用。
(右)宿泊棟のフロア表示は、切り株の数と写真の目線の高さで表現するという隠れた遊び心。

シモンズとの共同開発によるベッド。寝そべれば、天井にも樹々を感じる。写真は、かつてのこの地。

西川温泉

全室露天風呂を完備。源泉は西川温泉 麗峰の湯。床板に溶岩石を敷き詰めており、まろやかな湯に。アメニティーは、グリーンフォレストの香り。

ふふ

ケヤキの立派な一枚板のカウンターの上に、温かな光が点在するバーラウンジ。「ふふ」は、来年春には奈良、夏には日光に開業予定。


ふふ 河口湖

山梨県南都留郡富士河口湖町河口字水口2211-1
☎0555-73-9573
チェックイン15:00/チェックアウト11:00 全32室
2名1室利用時の2食付き2名分料金9万2100円~
(消費税・サービス料・入湯税込み)