高い技術力と洗練されたデザインで人気を集めるブランドがジャガー・ルクルトだ。同社には「アトモス」という名の精密時計のコレクションがある。半永久的に動くとされるこの時計の魅力を探りながら、代表的な4モデルについて解説しよう。
ジャガー・ルクルトとアトモス
1833年に創業したジャガー・ルクルトは、スイスのジュウ渓谷に拠点を置く高級時計ブランドである。
時計メーカーとして産声を上げてから現在に至るまで自社一貫製造を行い、数多くの発明と高い技術力によって生み出される緻密でエレガントな時計は、世界中からの支持を獲得している。
ジャガー・ルクルトには特殊な構造で時計界に衝撃を与えたモデルがある。精密に製造された半永久機構の置時計「アトモス」だ。
アトモスとは
ただ置いておくーーそれだけで半永久的に作動し続けるアトモスは、登場するなり世界中を驚嘆させた。
アトモスとは、日本語で「空気・大気」の意味を持つフランス語だ。アトモスの動力は空気なのである。
アトモスをサイドから見ると、内部にカプセル型の箱が設置されていることが分かる。そこにはガスが密封され、気温差によって膨張と収縮を繰り返すようになっている。
その力を利用してゼンマイを巻き上げるのが、アトモスが動く仕組みだ。
密封されたガスは、室内の気温が1℃変化することで約2日分のエネルギーを蓄える。当然のことながら気温が変わらないことなどあり得ず、ゆえにアトモスは半永久的に動き続けるというわけだ。
アトモスのモデル
アトモスのコレクションにはいくつかのモデルがラインナップされている。代表的な4タイプについて解説しよう。
アトモス・クラシック
Cal.560。15石。120振動/時。ロジウムプレート(幅225×奥行155×高さ200mm)。69万8000円(税別)。
まず「アトモス・クラシック」から見てみよう。時代に左右されないクラシカルなデザインと、ジャガー・ルクルトらしい極上の仕上げが堪能できるモデル。
リング型の振り子は、まるで宙を舞っているかのような動きでゆっくりと回転を繰り返す。悠然と時を刻み続ける姿には、荘厳さが感じられる。
ムーブメントは手巻き式で、ジャガー・ルクルト製キャリバー「560」が搭載されている。207個の部品によって構成されており、1℃の温度変化で2日分の作動エネルギーを供給する。
アトモス・クラシック・ムーンフェーズ
Cal.562。15石。120振動/時。ゴールドプレート(幅225×奥行155×高さ200mm)。92万円(税別)。
「アトモス・クラシック・ムーンフェーズ」は時間と月表示に加えてムーンフェイズを搭載し、エレガンスな佇まいにも目を奪われるモデルだ。ダイアル上でゆっくりと歩みを進める時計からは、雄大な時の流れを感じずにはいられないだろう。
優雅な動きの秘密は、ムーブメントにある。1本の髪の毛よりも細い鋼合金の糸で吊り下げられている振子は、ゆったりと厳かに作動する。摩擦に起因するエネルギーロスが、最小限に留められているためだ。
それゆえ、温度差によって生まれるわずかなエネルギーでも半永久的に針を回し続けるのである。
アトモス 568 BY マーク・ニューソン
Cal.568。15石。120振動/時。バカラクリスタル(幅265×奥行230×高さ147mm)。282万4000円(税別)。
クラシカルなアトモスに、オーストラリアのプロダクトデザイナー、マーク・ニューソンが新たな解釈を加たモデルが「アトモス 568 BY マーク・ニューソン」だ。
キャビネットにエクストラホワイトガラスを使用することで、色調を維持しつつ、光が直接アトモスに降り注ぐよう設計した。これにより、キャビネットがほとんど目に見えない透明感を手に入れたのである。
その透明感に魅せられて時計に目をやると、アトモスの輪列に肺のような部分を見つけられるはずだ。混合ガスを封入した密閉カプセルで、呼吸をするようにムーブメントに動力を伝えるのである。
アトモス・トランスパラント
Cal.563。15石。120振動/時。ガラス(幅145×奥行185×高さ250mm)。100万4000円(税別)。
「アトモス・トランスパラント」は、エンジニアのジャン=レオン・ルターにより1928年に発明された半永久ムーブメントの伝説を受け継ぎつつ、新しいデザインを取り入れたモデルだ。
落ち着いたスタイルながら、斬新さを感じられるフェイスを有している。特徴的なタイムピースはアールデコの様式を取り入れ、時代にとらわれない美しさと端正な姿を守り続けている。