時計選びはケース素材も重要。主要ケース素材10種とその特徴

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2021.08.19

時計を選ぶ際に、どのような視点を重視するだろうか。見た目や、駆動方式、機能は大きな選択基準となるが、同様に重要な要素としては「ケース素材」も挙げられる。そこで、時計に用いられる主要なケース素材の種類や特徴について掘り下げていこう。

アルパイン イーグル


時計とケース素材

時計選びの基準はひとつではない。どの部分に着目するかは、その人の好みはもちろん、哲学が反映されるといっても過言ではないだろう。

さまざまな選択基準の中でも、ケースはおそらく大きなウェイトを占める要素のひとつ。特にケースに使われる素材は実に多彩で、何を採用しているかで時計の個性が決まってくるほどだ。

ケース素材の種類は豊富

多くのモデルで採用される素材のひとつにステンレススティールがある。耐傷性に優れているうえに、酸化もしにくく、コストパフォーマンスが高い点が特徴だ。

その他にはゴールドやプラチナといった高級素材から、メーカー独自の素材や各種産業向けに開発された素材まで、実に多種多様の素材が用いられるようになった。

もちろん、高級時計のケース素材には耐久性はもちろん、ビジュアルが美しいことも重要。つまり、複合的な基準によって、採用される素材が決まるのである。

アルパイン イーグル

新たなスチール合金は数多く生み出されており、ショパール「アルパイン イーグル」に採用されている「ショパール ルーセント スティール A223」もそのひとつ。ゴールドに匹敵する美しさを持ちながら、高硬度かつ一般的なステンレススティールの約1.5倍の耐磨耗性を誇る。
自動巻き(Cal.Chopard 01.01-C)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。ショパール ルーセント スティール A223(直径41mm)。100m防水。147万円(税別)。問/ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922

ケース素材とアレルギー

時計を選ぶうえでは、アレルギーを起こさない素材を手にすることにも配慮しておきたい。いくらビジュアルが良くても、健康面に害があっては時計を着けることすら叶わなくなるからだ。

アレルギーを起こしやすい素材には、ニッケル、鉛、コバルト、クロムなどがある。これらは、現在はほぼ使われていないが、一部、安価なメッキ仕上げのケースなどには採用されていることもある。

一方、アレルギーを起こしにくい素材には、純度の高いプラチナやチタンがある。なかでもチタンは、加工が難しいうえに、マットな質感によって高級感を演出しにくいと敬遠されてきたが、最近では高級モデルにもチタンが多く採用されるようになっている。

またセラミックスや人工サファイア、カーボン、プラスチックなどの非金属素材は、アレルギーとは無縁だ。

J12

シャネルの「J12」は、ケースとブレスレットに高耐性のホワイト セラミックを採用。ケースバックにはステンレススティールを使用し、金属アレルギーへの影響を低減させている。

ケース素材と硬さ

時計のケースに使われる素材は、その種類によって硬さも大きく異なってくる。硬度は傷のつきにくさに関係するので、気に留めておきたい要素のひとつだ。

ゴールドやシルバーなどの高級素材は硬度が低いため傷つきやすい。一方でセラミックスなどの特殊な素材の中には、高い硬度を持ち、傷がつきにくいものが存在する。

素材の硬さは、ケースの製法や表面加工によっても変わってくる。最近ではシチズンのデュラテクト加工に代表されるように、各時計メーカーが傷つきにくい時計を作るため、さまざまな工夫をしているのも注目すべきポイントだ。

シチズン「エコ・ドライブ ワン」は、ステンレススティールケースに独自技術「デュラテクトα」を施し、2000Hv以上の硬度によって時計を傷から守る。光発電エコ・ドライブ(Cal.8826)。フル充電時12カ月稼働。SS+デュラテクトα×サーメット(直径39mm)。日常生活用防水。40万円(税別)。問/シチズンお客様時計相談室 Tel.0120-78-4807


一般的なケース素材と特徴

現在、時計のケース素材は実に多様で、それぞれに利点や特徴がある。ここでは代表的な素材について、ひとつひとつ見ていくことにしよう。

プラスチック

製造コストが低く、かつ大量生産が可能な「プラスチック」は、カジュアルなクォーツ時計によく採用される素材だ。

コスト面以外にも、着色性しやすく、さまざまな色合いを表現できる点も魅力で、同一モデルのカラーバリエーションを展開するうえでは有用だ。もちろん、アレルギーフリーという点も見過ごせない。

反面、耐久性や防水性に多くを望むことは難しい。劣化が進みやすく傷みも早いので、高級腕時計には用いられることの少ない素材である。

BIG BOLD BBBLACK

スウォッチ「BIG BOLD BBBLACK」
クオーツ。プラスチック(直径47mm)。3気圧防水。1万2000円(税別)。問/スウォッチ グループ ジャパン スウォッチコール Tel.0570-004-007

SS (ステンレススティール)

機械式時計の世界では最もポピュラーで、数多くのモデルで採用されている素材が「ステンレススティール」だろう。

名称が「ステン(stain)=錆び」と「レス(less)=ない」という言葉で構成されていることからも分かるように、錆びにくく、しかも高硬度で安定した耐久性を保持しているため、多くの高級モデルでも使われている。

またステンレススティールは、その含有成分や特性によってさまざまなメーカーが特許や登録商標を持っている素材で、その種類は実に200を超えるとも言われている。

スピードマスター ムーンウォッチ321 ステンレススティール

オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ321 ステンレススティール」
自動巻き(Cal.321)。17石。1万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径39.70mm)。5気圧防水。151万円(税別)。問/オメガお客様センター Tel.03-5952-4400

チタン

「チタン」は比重がステンレススティールの約6割という軽量素材。軽快に装着できるため、時計のケース素材に多く用いられるようになっている。

特徴は表面に酸化被膜を張っているため海水などに触れても錆びにくく、強度も備えている点。また大きなメリットとして、金属アレルギーを起こしにくいことも挙げられる。

一方では加工がしにくいという一面があり、これが製造上の難点でもある。しかし現在では技術が向上し、美しい仕上げを施したチタンケースが増えている。

1919 クロノタイマー フライバック ブラック&レザー

ポルシェデザイン「1919 クロノタイマー フライバック ブラック&レザー」
自動巻き(Cal.Porsche Design WERK 01.200)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。Ti(直径42mm)。10気圧防水。88万円。問/ノーブル スタイリング Tel.03-6277-1604