ロレックスのダイバーズウォッチが絶大な人気を誇るのは不思議ではない。エキサイティングなヒストリー、専門家とのコラボレーション、唯一無二のデザイン、高い精度と堅牢性を誇る自社開発ムーブメントが愛好家の欲望を刺激する。
マルクス・クリューガー、ロレックス: 写真 Photographs by Marcus Krüger,Rolex
岡本美枝: 翻訳 Transration by Yoshie Okamoto
深海で躍動する計測機器
ロレックスは現在、オイスター パーペチュアル サブマリーナー、オイスター パーペチュアル サブマリーナー デイト、オイスター パーペチュアル シードゥエラー、オイスター パーペチュアル ロレックス ディープシーという4種類のダイバーズウォッチを提供している。ケースサイズの点から言えば、サブマリーナーとサブマリーナーデイトは同じ40㎜である。また、サブマリーナー デイトのコレクションでは、さまざまな素材のモデルと各種カラーのダイアルとベゼルが用意されている。
サブマリーナーの初代モデルは1953年に登場した。
サブマリーナーの日付表示なしのモデルは、ロレックスにおけるダイバーズウォッチのエントリーモデルとして最適と言えよう。サブマリーナーは1953年にロレックスが発表したブランド初のダイバーズウォッチである。潜水時間を計測するためのベゼルは、発表当初はまだ両方向に回転できるものだった。サブマリーナーの防水性能はこの時まだ100mだったが、54年には200mまでに向上した。
ダイバーズウォッチを発表する前からも、ロレックスは「オイスター」と呼ばれる特許取得の防水ケースを備えた防水腕時計として知られていた。そして「オイスター」を、メディアで効果的に演出する方法もロレックスは熟知していた。27年、英国人女性で初めてイギリス海峡東端のドーバー海峡横断に成功したメルセデス・グライツは、15時間を超えるこの遠泳の際、ロレックスの防水腕時計を手首に着けていたのだ。この偉業達成に際し、ロレックスはロンドンの日刊紙、デイリーメールの1面で伝えた。当然のことながら、これはロレックスの腕時計にとって大きな宣伝効果をもたらす。
ロレックスはまた、深海での使用に耐える高い防水性能を備えた時計も開発してきた。ディープシー スペシャルである。50年代より、ディープシースペシャルはいくつもの深海調査に同行している。60年1月23日にジャック・ピカールとドン・ウォルシュが潜水艇トリエステ号でマリアナ海溝の最深部、チャレンジャー海淵からわずか数m上の水深1万916mのポイントまで到達したのはハイライトとも言うべき偉業である。深海潜水艇の外側に取り付けられたディープシー スペシャルはこのミッションも乗り切った。この試作モデルのディープシー スペシャルは、コレクションとして量産されることはなかった。突出した半球形の風防とケースの厚さが36㎜もあるために、日常使用としての仕様ではなかったのである。
試作モデル。1960年1月23日に水深1万916mに到達。
試作モデル。2012年に水深1万908mに到達。
サブマリーナー
現在のサブマリーナーのサイズはケース径40㎜、厚さ12.5㎜(実測値)と、ダイバーズウォッチとしてはスリムである。時を刻むのは、日付表示なしのモデルでは自社開発自動巻きムーブメント、キャリバー3130、日付表示付きモデルではキャリバー3135である。両者ともパワーリザーブは約48時間で、独立検査機関のスイス公認クロノメーター検査協会(C.O.S.C.)と、ロレックスが独自に導入したより厳しい基準による検査によって高い精度が保証されている。ロレックスが定める高精度クロノメーターの基準は、平均日差マイナス2〜プラス2秒以内である。また、ロレックス グライドロック エクステンションシステムによってブレスレットの長さを微調整することができるため、サブマリーナーはダイビングスーツの上からでも着用することができる。ロレックスの他のすべてのダイバーズウォッチ同様、メタルブレスレットとセラミックス製の逆回転防止ベゼルを備えている。
日付表示なしのサブマリーナーはロレックスの初代ダイバーズウォッチのデザインを継承。自動巻き(Cal.3130)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。SS(直径40mm)。300m防水。