ロンジンが送り出した忠実な復刻モデル「ヘリテージ ミリタリー 1938」は何が愛好家に刺さるのか

FEATUREWatchTime
2020.01.15

近年、ロンジンはかつてのヘリテージピースの現代モデルを積極的に投入している。1918年、つまり第1次世界大戦時に発表されたモデルを復刻し、「ヘリテージ ミリタリー」(Ref.L2.811.4.53.0)の名で発表したのが2016年。その2年後である18年には1940年代の英国王立空軍の将校が第2次世界大戦で着用したモデルからデザインの着想を得た「ヘリテージ ミリタリー」(Ref.L2.819.4.93.2)が登場している。そして2019年、このふたつの大戦の間に発表された1938年製のフィールドウォッチを忠実に復刻し、「ヘリテージミリタリー 1938」として送り出した。今回はこの傑作復刻モデルを解説しよう。

Originally published on watchtime.com
Text by Mark Bernardo


ロンジン「ヘリテージ ミリタリー 1938」

ヘリテージ ミリタリー 1938

ロンジン「ヘリテージ ミリタリー 1938」
手巻き(Cal.L507.2、ユニタス6498-1ベース)。17石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約46時間。SS(直径43mm)。3気圧防水。世界限定1938本。29万1000円(税別)。

「ヘリテージ ミリタリー 1938」はサンティミエを拠点とするロンジンが、その名前の通り1938年に作製した1本の時計を現代的に復刻したモデルだ。とはいえ、スペックは現代的に改良こそされているが、デザインはほぼ忠実に再現されている。丸形の控えめな直径43mmのステンレススティール製ケースはオリジナルと同じサイズだ。

ヘリテージ ミリタリー 1938

交換可能なチャコールグレイまたはコニャックカラーのレザーストラップが用意されている。

 ケースは面取りが施された薄いベゼルを備え、刻みが着けられたリュウズはロンジンが「ウニ形」と形容するもので、戦場での操作性が容易となっている。このスタイルはオリジナルモデルが作られた30年代の典型的なものだ。

 バトン状のロジウム仕上げの針、アラビア数字インデックス、レイルウェイスタイルのミニッツトラックを備えた文字盤は、6時位置にある独自のレイルウェイトラックを備えたスモールセコンドのサブダイアル同様、シンプルで高い視認性を持っている点もオリジナルモデル同様だ。

ロンジン 1938

1938年に製造されたオリジナルモデル。新作と見比べれば、ケース造形だけではなくダイアルの意匠や針の形状までしっかりと再現していることが分かる。

 針とインデックスは、クリームカラーのスーパールミノバが塗布され、経年変化が見られるヴィンテージ調の仕上がりとなっている。時計愛好家にとって最も重要な点は、このモデルがこれまでのロンジンによる「ヘリテージ ミリタリー」シリーズで見られた、時代錯誤のデイト表示がないということではないだろうか。

ヘリテージ ミリタリー 1938

マットブラックの文字盤には針とインデックスにクリームカラーのスーパールミノバが施されており、ヴィンテージ感を醸し出す。

 20世紀初頭の時計がオリジナルであるため、時計には基本設計が30年代までさかのぼる、Cal.ETA6498-1をカスタマイズしたロンジンの手巻きCal.L507.2が搭載されている。同ムーブメントの基本的なスペックは17石、1万8000振動/時、パワーリザーブ約46時間となっている。2013年にも同じ個体をオリジナルとした復刻モデルが販売されたことがあるが、こちらにはオリジナルの製造当時には存在しなかった機能である自動巻き機構を搭載したCal.ETA2892が使われていた。

 これだけ忠実な復刻モデルではあるが、当然ながら3気圧防水と現代的な最低限の防水性能は与えられている。そんなヘリテージ ミリタリー 1938は、パティネ仕上げのチャコールグレーレザーストラップとコニャックカラーのNATOスタイルのレザーストラップが、着脱を容易にするツールと一緒に用意されている。価格は29万1000円で、名前にちなんだ1938本のリミテッドエディションである。


Contact info: ロンジン Tel.03-6254-7351