危険な生物は常に、不思議な魅力を伴う。今回は、WatchTimeがアメリカで刊行した「DESIGN ISSUE 2019」から、この魅力を放つ素晴らしい時計を5本紹介する。
Text by Maria-Bettina Eich
(2020年1月22日 掲載)
ブルガリ「セルペンティ スピガ」
手首にうねる官能的な1匹のヘビ。時を告げるために特別な素材をまとって生まれたのが、ブルガリのセルペンティだ。しなやかに曲線を描くセルペンティは、本物の蛇のように手首へ巻き付き、丸みを帯びた三角形の先端は、爬虫類の頭と時計のケース両方の役割を果たしている。
ブルガリは最初のセルペンティを1940年代に発表した。危険な生物は、多くのウォッチデザイナーを魅了してきている。
「セルペンティ スピガ」は、ブラックセラミックスと18Kピンクゴールド、そしてダイヤモンドの組み合わせだ。
カルティエ「レヴェラシオン ドュヌ パンテール ウォッチ」
カルティエを象徴する重要なアイコン、パンテール。パリを拠点とするウォッチ&ジュエリーメゾンのカルティエは、1914年から捕食動物であるヒョウを、繰り返しモチーフとして登場させてきた。
プレシャスメタルでできた野生のヒョウは、時にそれを購入しようとする人の銀行口座を脅かす可能性がある。また、ヒョウの優雅さが、捕食者としての荒々しいオーラと合わないならば、パンテールはそれほどスリリングな時計とはなり得ない。「レヴェラシオン ドュヌ パンテール ウォッチ」の文字盤は砂時計のような構造で、その魅力を芸術的に解き放つ。文字盤を動かすと、ゴールド製の小さなビーズが移動し、パンテールの顔がゆっくりと現れる。そして、再び幻想のように消えていくのだ。
ケースは18Kピンクゴールド製でダイヤモンドをあしらい、手巻きキャリバー430MCを内蔵している。
ジャケ・ドロー「プティ・ウール ミニット ライオン」
ジャケ・ドローのデザイナーの創造力を刺激したネコ科の動物、それはライオンである。細密画でライオンの顔をエナメル文字盤に描き出したのが、プティ・ウール ミニット ライオンだ。ペインターの繊細な技によって、文字盤の限られたスペースに描かれたライオンは、今にも飛び出しそうだ。
ジャケ・ドローは、世界限定28本の作品のそれぞれをユニークな標本として描き出した職人の才能を称えている。
アーティア「ウルフ トゥールビヨン 1/1」
攻撃的なオオカミの形相を文字盤に刻んだのは、アーティアのウルフ トゥールビヨン 1/1だ。文字盤とベゼルのゴシック調の彫金は、ベルギーの彫金師ブラム・ラモン(Bram Ramon)によるものである。文字盤には花飾りとオオカミの頭が精密に彫られている。中世の雰囲気とバイクのライダースタイルが融合したデザインは、ロックンロールと神話、そして精密な職人技という組み合わせはいかにもアーティアらしい。それを更に強調するのがフライング・トゥールビヨンだ。野生のオオカミは、このスイスの時計をタフな男のための表現力豊かなジュエリーとしている。
レペ「アラクノフォビア」
恐怖と魅惑を感じさせる動物をタイムピースに昇華させたのが、クロックメーカー・レペ1839と共同制作を行った、ジュネーブを拠点に活動するマクシミリアン・ブッサーである。クモの姿をしたアラクノフォビアは、腕時計として着用するには大きすぎるため、置時計または壁掛け時計としてデザインされている。8本の足を持った金属時計の創造物は、その体に大きな時計を内包している。アラクノフォビアは、フランス系アメリカ人アーティストのルイーズ・ブルジョワ(1911年~2010年)が作った、高さ約9メートルもの「ママン」という彫刻に触発された、庇護と脅威を感じさせる作品である。アラクノフォビアは、不気味さと優雅さの間に存在する細い線を体現している。
アラクノフォビアはブラック・アルミニウム製で、約8日巻きのムーブメントは鍵巻き上げ式である。