一流のセレブたちは一体どんな腕時計を選ぶのか? 世界のセレブたちのプライベートなワンシーンを切り取り紹介する連載コラム「セレブウォッチ・ハンティング」。今回は往年の音楽家であり、俳優、映画監督としても活躍したセルジュ・ゲンスブールが選ぶ腕時計を紹介しよう!
セルジュ・ゲンスブール
フランスを代表する往年の伊達男といえば、セルジュ・ゲンスブール(1928〜1991年)の名が挙げられるだろう。彼は作曲家、作詞家、歌手として名を馳せ、特に1960年代後半から70年代にかけてフランスのポピュラー音楽の中心的役割を担った人物である。代表曲のひとつは、日本でも耳にすることの多いフランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」だ。他にもかのエディット・ピアフへの楽曲提供や、大女優ブリジット・バルドー、ジェーン・バーキンとのデュエットでも知られる。なお、ブリジット・バルドーとは不倫相手として関係を持ち、ジェーン・バーキンとは彼の3人目の妻として結婚した。
ゲンスブールは、自らのことを「醜男」と呼び、自身の容姿を否定するような名言をいくつか残している。しかしながら、前述したように実際には数多の美女をとりこにしてきた。それだけ彼には人を魅了する才能があり、そして弱さを色気に変える能力があったのだ。
ゲンスブールはまた、映画監督、俳優としても活躍した。今回ピックアップした写真は、1990年に公開された映画『スタン・ザ・フラッシャー』のセットの中で撮られた1枚である。気取りがなく、無造作に装い、胸元のボタンを広く開ける着崩し方はいかにも彼らしい。"モテ男"の象徴のようなゲンスブールのスタイルは、現在でもメンズファッションのお手本となるものだ。
なお、『スタン・ザ・フラッシャー』は彼の最後の作品となった。左手に写るのは、晩年の彼が愛した腕時計である。
その腕時計とは、手巻きのレマニアのムーブメントCal.1873を搭載した、ブライトリングの「ナビタイマー」Ref.81600だ。
「ナヴィゲーション」(航空・航海)と「タイマー」(計時)を合わせた造語をその名に冠すナビタイマー。パイロット向けの回転計算尺、E-6Bの改良版を搭載したクロノグラフとしてブライトリングが1952年に発表した腕時計だ。誕生からまもなく、アメリカのパイロット協会「AOPA」をはじめ多くの航空会社が公式時計として採用するなど、ブライトリングを一躍、航空時計の第一人者として世に知らしめたアイコンモデルである。
また、ゲンスブール着用モデルのブレスレットは大きな丸い穴が開いたパンチング仕様となっている。これは元々レザーストラップが組み合わされていたものを、ゲンスブールがブライトリングに特注でオーダーして取り替えたものだ。ヒストリックカーのハンドルのリムや、空港などで使われる肉抜きされた建築資財を彷彿とさせるデザインがユニークである。2009年に発表された「ナビタイマー 125周年記念モデル」では、このゲンズブール特注デザインを着想源とするブレスレットが組み合わされ、そして「エアレーサーブレスレット」という名称が与えられた。
ブライトリング
「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43 パンナムエディション」
なお、ゲンスブールのナビタイマーはジェーン・バーキンが選んだものという説がある(かの有名なバッグの名は彼女の名前から取られたように、彼女もまたファッショニスタとして知られた人だ)。彼らは離婚し、その後それぞれのパートナーと出会っている。しかし、生涯を通してふたりは良き友人として支え合い、その関係はセルジュが亡くなる1991年まで続いた。彼が亡くなってからも、コンサートでジェーンはゲンスブールの曲を歌い続けている。この時計に、ふたりの深い絆がうかがえるようだ。
ブライトリングの腕時計のなかから、フラッグシップコレクション「ナビタイマー」の現行モデルを紹介しよう。
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