グランドセイコーの時計を良好な状態で長く使うためには、定期的にオーバーホールを依頼しよう。不具合が生じたり動かなくなったりした場合にも有効な対処法だ。オーバーホールの概要や申し込みの流れなどを解説する。
オーバーホールの必要性と流れ
機械製品を部品単位で分解し、点検や修理を行うのがオーバーホールだ。まずは、時計におけるオーバーホールの必要性や、一般的な作業の流れを理解しよう。
劣化放置は故障の恐れ
機械式時計は、動力源のゼンマイがほどける強い力を、歯車の集まりである輪列に伝えることで運針するタイプの時計だ。
機械式時計を使い続けると、各部品の摩耗や潤滑油の劣化が起こる。そのまま対処せずに長い間使用し続ければ、精度が悪化したり通常より早く止まったりするようになってしまう。
特に、機械式時計のテンプと呼ばれる部品は、1日に数十万回、1年間では数億回も往復回転運動しているため、潤滑油の劣化や乾燥は避けられない。
それは、水晶を振動させて動力を得るクォーツ時計も同様だ。輪列などの摩耗や潤滑油の劣化により、長く使い続けていると動作停止が通常より早まってしまう。
コンディション保持
オーバーホールは、時計のコンディションをできるだけ長く良好な状態に保つための作業だ。人間に例えれば、定期健康診断のようなものといえるだろう。
良好な状態を維持するためには、本体内部の保油性や腐食、ネジのゆるみ、汚れや汗によるサビなどを早めに確認し、適切にケアしたい。
オーバーホールにより、故障の原因となる汗や汚れを取り除ける上、摩耗した部品やパッキン類も交換できるため、購入時に近い状態にまで戻るだろう。
特に、機械式時計の場合、新品で購入してしばらくの間は、摩擦による潤滑油の汚れや細かい金属紛が出やすい。そのため、購入後最初に行うオーバーホールは、長く使う上でとても重要な作業といえる。
一般的なオーバーホールの流れ
通常、クォーツ時計は2~3週間、機械式時計は3~4週間の作業期間を要する。オーバーホールの一般的な作業工程は以下の通りだ。
- 時計の状態を細かくチェック
- ケースやベルトを超音波で洗浄
- 時計をムーブメントまで分解し、全ての機械体部品を洗浄
- 劣化した部品を交換・修理
- ムーブメントを組み立て直し、各部に注油
- 精度をチェックし、調整・点検
- パッキンを交換
- ケースへ組み込み、ベルトを取り付ける
- 仕上がり品をチェックし、防水検査を行う
- 一定期間動作させ、最終的な精度をチェック
グランドセイコーのオーバーホール
グランドセイコーでは、メンテナンス作業などをセットにした「コンプリートサービス」と呼ばれるサービスを提供している。詳しい内容を確認しておこう。
コンプリートサービスとは
グランドセイコーのコンプリートサービスは、内装修理、オーバーホールとライトポリッシュがセットになったサービスだ。
機械式時計におけるコンプリートサービスは全部で11工程あり、28項目のチェックが実施される。
クォーツ時計や、機械式とクォーツを融合したスプリングドライブ式の時計に関しては、一部作業が異なるため、機械式とは違う作業工程で進められる。
ライトポリッシュとは
コンプリートサービスに含まれるライトポリッシュは、ケースやベルトの表面を整え、つやを出すサービスだ。
ライトポリッシュの仕上がり具合は、ケースおよびベルトの形状や傷の状態により異なる。外装やベルトが劣化していたり、メッキなどの処理が施されていたりする場合は、ライトポリッシュができないこともある。
ライトポリッシュが不要な場合は、受け付け時に申し出が必要だ。ただし、ライトポリッシュを行わない場合でも、コンプリートサービス料金に変更がないことは注意しておこう。
ライトポリッシュでは、打痕や傷などを取り切れないことがある。これらをケアしたいなら、別途研磨修理の依頼が必要だ。
なお、ライトポリッシュのみの単独サービスは行われていない。
コンプリートサービスの内容
数多くのチェック作業が実施される、コンプリートサービスのおおまかな流れを解説する。費用や申し込みなどについても確認しておこう。
コンプリートサービスの流れ
コンプリートサービスでは、以下に挙げる11工程において、28項目をチェックしながら作業が進められる。
- 時計1個ずつの固有カルテである、問診票を確認
- 受け入れ時における時計の状況を細かく確認・診断
- ムーブメントを取り出し、部品ごとに分解
- 部品を特殊液や超音波で洗浄し、乾燥させる
- ムーブメントの組み立て・注油・調整
- ライトポリッシュを実施する
- パッキン交換やケーシングをした後、操作性や持続時間などの確認を行う
- エアー加圧・防水エアー検査や水中加圧検査
- 仕上がり品をチェックし、出荷前の総合検査
- 修理完了報告書を作成
- 修理の内容を修理履歴データベースに登録
費用は約4万円から 期間は3週間から6週間
コンプリートサービス代の目安は、クォーツが約4万円、機械式が約5万5000円、スプリングドライブが約6~8万円だ。
これらの料金には、一部内装部品代や電池代、パッキン代、防水検査代が含まれ、その他の部品にかかる料金は別途加算される。
コンプリートサービス代に送料をプラスした料金が、請求されるトータルの費用となる。送料は決済方法により異なり、保証内修理であれば往復の送料は無料だ。
修理期間は、時計を預けてから手元に返送されるまで、3~6週間ほどみておこう。ムーブメントや時計の状態によっては、より長くかかる場合がある。
オンラインで見積もりや修理状況確認が可能
グランドセイコーでは、依頼前に概算の見積もりをオンラインで確認することが可能だ。時計情報を入力し、依頼内容を指定すれば、見積もり金額が表示される。
修理してほしい箇所が明確になっている場合は、修理や交換を依頼したい機械体部品以外の外装部分を選択しよう。電池式クォーツ時計なら、電池交換も実施してくれる。
ただしオンライン見積もりの利用は、国内に在住していること、時計の品番か形式番号が分かっていること、メールアドレスがあり電話連絡が可能であることの3つを満たしていることが条件となるので注意しておきたい。
また、専用ページでは、修理状況を確認することも可能だ。依頼日や見積もり開始日などと併せて、作業の進み具合が分かる仕様となっている。
グランドセイコー オンライン修理受付 |セイコーウオッチ株式会社
申し込みから返送までの流れ
見積もり金額を確認し、コンプリートサービスの申し込みをすれば、指定住所に発送キットが送られてくる。
時計を発送キットで梱包し、同梱の発送伝票に記載されている業者へ集荷を依頼しよう。該当する配送業者の取り扱いが可能なコンビニエンスストアへの持ち込みも可能だ。
発送時は着払いとなるため、送料の支払いは必要ない。修理完了後、返送時にコンプリートサービス代と併せて、往復の送料も請求される。
なお、時計を発送した後、費用がオンライン見積もりにより提示された金額を上回りそうな場合は、作業開始前に確認メールが送られてくる。
グランドセイコーのその他のサポート
グランドセイコーでは、クォーツ式時計の電池交換サービスも実施している。概要や申し込みの流れを紹介しよう。
電池交換
グランドセイコーの電池交換は、単に電池を取り替えるだけではない。全部で10工程、24項目のチェックを経て実施される念の入った作業だ。
外観や運針、リュウズの操作性、精度など、本体の確認から始まり、ケースやベルトの洗浄、ベルトアジャスト、ネジのゆるみ調整、さらにパッキン交換や防水検査まで行われる。
修理期間は、時計を預けてから手元に送り届けられるまで、1~2週間ほどが目安だ。検査によってムーブメントなどに異常が見つかった場合は、さらに時間がかかることも覚えておきたい。
なお、3年間の保証期間内であっても、電池の交換は有料となっている。その他の修理や調整は、保証期間内であれば無償だ。
流れはコンプリートサービスと同じ
電池交換を依頼する流れは、コンプリートサービスとほとんど同じだ。
オンライン見積もりページで時計情報を入力し、電池交換を指定すれば、概算の見積もり金額が表示される。申し込みを行い、送られてきた発送キットで時計を返送しよう。
作業の状況はオンラインで確認可能だ。終了後に請求額を決済すれば、時計が手元に戻ってくる。
電池交換にかかるトータルの費用は、電池交換代に送料をプラスした金額だ。見積もり金額以上の請求になりそうな場合は、その旨のメールが届く仕組みとなっている。
適切な管理で長く使う
グランドセイコーのオーバーホールは、コンプリートサービスに申し込むことで、ライトポリッシュなどの作業と併せて実施される。
オーバーホールは、時計のコンディションを良好な状態に保つために欠かせない作業だ。お気に入りの時計をできるだけ長持ちさせるために、定期的なメンテナンスを心掛けよう。
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