フランク ミュラーは、誰が見ても一目でそれと分かる突出した個性を持った芸術的な作品を生み出す高級時計ブランドだ。その魅力を存分に盛り込みつつ、新たなスタンダードを確立したモデル「ヴァンガード」の真価に迫る。
フランク ミュラーとヴァンガード
斬新なアイデアを次々と繰り出し、時計界に衝撃を与えたフランク ミュラーだが、その歴史は意外にも新しい。
世界の高級腕時計界をけん引するフランク ミュラーのこれまでと、ブランドの新たな魅力が詰め込まれたコレクション「ヴァンガード」を掘り下げていこう。
フランク ミュラーの歴史
現代では、独立時計技師によるブランド展開は珍しいものではなくなったが、この先駆けとなったブランドがフランク ミュラーだ。
ブランドの生みの親フランク ミュラーは1958年、スイスのヌーシャテル州に生まれ、時計界に革命をもたらした。
幼少のころから、精密機械の素晴らしさを母から伝えられてきたフランク ミュラーは、ジュネーブの時計学校へ進学。79年に同校を首席で卒業し、時計職人としての華々しい道を歩むこととなる。
92年に自身のブランドを創設後、豊かな想像力から生み出される独創的な作品を世に送り出し、わずか数年で、1世紀超の歴史を有する高級ブランドと肩を並べるまでに成長させた。
新たなラインナップ ヴァンガード
ヴァンガードは、2014年にフランク ミュラーが世界に向けてリリースした新しいコレクションである。
コレクションはメンズとレディース両方のラインナップを展開。メンズモデルは立体的なインデックスが目を引くパワフルさが際立ち、レディースモデルは、丸みを帯びたデザインとなっている。
15年には、文字盤にクルージングを想起させるコンパス図が描かれた「ヴァンガード ヨッティング」も追加されるなど、新たなモデルも展開されている。
ヴァンガードの特徴や魅力
「ヴァンガード」は、時計界の歴史を塗り替え続けるフランク ミュラーにおいて、新たなスタンダードを打ち立てたコレクションである。その魅力や特徴を探っていこう。
独特な一体型トノーケース
比類なき独創性と、そこから生み出される美しいデザインが、フランク ミュラーの最大の魅力であり特徴だ。そして、ブランドの代名詞ともなったのが「トノーケース」である。
トノーとは樽型を意味する。1920年代に流行したアールデコの芸術様式をベースとし、あらゆる角度から眺めても緩やかな湾曲が堪能できる、技術的にも芸術的にも高度に設計されたデザインだ。
また、ヴァンガードは他のラインアップとは異なり、ラグを無くした点も特徴的だ。ベルトの接続部であるラグを内蔵させることで、丸みを帯びた独特の一体型フォルムを作り出している。
独自にデザインされた文字盤
ヴァンガードは、ケースやガラス面の美しさだけでなく、文字盤にも他のコレクションとは一線を画すアイデアが盛り込まれている。
時を示す数字に用いられているのは、ヴァンガードのためだけに特別にデザインされた字体だ。立体的で力強いアラビア数字が迫力のある表情を作り上げ、圧倒的な存在感を生み出している。
フランク ミュラーの文字盤は、全体的に華麗でフェミニンな印象が強いが、ヴァンガードにおいてはどこか幾何学的だ。
文字盤で踊る針も、他のコレクションに見られるしなやかで美しい造形から一転、角ばった力強いデザインである点もポイントだ。6時のポジションには丸くくり抜かれたカレンダーが配置され、実用性も備えている。
ラバーベルトを採用
フランク ミュラーが一流の腕時計に託すものは、優れたデザインや芸術性だけではない。実用性においても、最高のクォリティーを追求している。
ヴァンガードの多くのモデルには、ラバーとクロコダイルを縫い合わせたストラップを用いている。
身に着けた瞬間、腕にフィットし、これまでのフランク ミュラーのどのモデルよりもソフトなタッチとカジュアルなテイストを実現。水や汗への耐性が高く、優れた実用性を誇っている。
このラバーベルトがケース内部に埋め込まれていることも、美しいルックスと心地よい装着感を生み出す要因である。