具体的なベゼルの名称と種類
ここまでは、腕時計の最低限の機能と、ベゼルの計器としての側面について解説した。ベゼルはダイアルとともにひと目で確認でき、さらに風防の外側にあるため視認性が高い。
これにメーター(目盛り)機能を持たせることは、計測機器としての腕時計にとって合理的といえるだろう。ここでは、各種の計測機能を備えた6種類のベゼルについて解説する。
ダイビングベゼル
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「ダイビングベゼル」とは、その名の通りダイバーズウォッチに採用される、潜水時間を積算するためのベゼルだ。ダイバーが潜水前にベゼルのゼロ位置を分針に合わせ、潜水時間と酸素残量を見合わせるために用いる。
潜水中に誤ってベゼルを操作して酸素残量を多く見積もってしまうことを防ぐため、基本的に逆回転防止ベゼルが採用される。これはダイバーズウォッチに必須の機能として、国際規格ISO 6425に定められた規格のひとつである。
過去には5分刻みの目盛りであったが、現在では1分刻みのモデルも多い。カウントアップ機能は潜水以外にも用いられるため、潜水仕様ではないモデルに採用される例もある。
カウントダウンベゼル
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ほとんどのダイバーズウォッチが時計回りに積算するが、カウントダウン方式で60分位置からスタートする(目盛りの数字配置が減っていく)モデルも存在する。これを「カウントダウンベゼル」と呼ぶ。
「ゼロ位置に向かって進むタイマー」として使えるため、着用者によってカウントダウンの用途は多彩だ。カウントダウンの残時間は任意に設定できるので、タスクにかけられる時間の限界をあらかじめ設定しておける。
GMT
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「GMT機能」を搭載したモデルには、24時間表示の回転ベゼルが採用されることがある。
GMT機能とは、ホームタイム(母国時間)を24時間かけて1周する「GMT針」で表示し、12時間表示の時分針によるローカルタイム(現地時間)と同時表示する機能だ。
ダイアルの外周に24時間表示のアワーサークルを表示するGMTモデルもあるが、回転ベゼルを用いれば時刻設定の簡便さと視認性の高さが得られる。
タキメーター
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「タキメーター」とは、クロノグラフ(ストップウォッチ機能)の秒針とメーターを関連付けることで、走行時速や単位時間(60秒まで)あたりにこなせる仕事量を計算できる計算尺である。
例えば、車の走行開始とともにクロノグラフをスタートさせ、1km走行した時点でストップすると、走行区間の時速がわかる。
また、ある作業を30秒で終えられる場合、1時間では120回(1時間は3600秒のため)、60秒かかる仕事なら60回こなせるという計算も可能だ。この計算尺を応用して、仕事の平均時間や必要人数も計算できる。
パルスメーター
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「パルスメーター」とは、タキメーターと同様の発想により設計された、センターセコンドあるいはクロノグラフ秒針で計る簡易脈拍計である。
15回または30回の拍動があった時点で秒針が指した先の数値が、おおよその心拍数だ。この回数の違いは、採用する目盛りの間隔の違いによる。古くから懐中時計型のナースウォッチにダイアル上で表示されてきた機能だ。
テレメーター
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腕時計における「テレメーター」とは、光速と音速の速度差を利用して、遠隔地との距離を計測する機能あるいは目盛りである。
光が届いた瞬間にクロノグラフをスタートさせ、音が届いた瞬間にストップさせることになるが、正確な測定には高精度なクロノグラフが必要だ。
第一次世界大戦の頃に考案され、相手方の大砲までの距離を測るために使われていたが、現在では落雷の位置評定や、砲弾の発射地点の特定といった利用方法が一般的だ。
回転ベゼルの使い方
ここまで見てきたように、ベゼルを活用した計測機能の実現方法の幅は広い。
それぞれのベゼルに計測の目的があり、ユーザーのニーズに合致すれば心強い味方となる。改めて回転ベゼルの使い方について見ておこう。
基本的な使い方
回転ベゼルを使う際には、まずメーターが何を目的としているかを理解することが必要だ。
GMTモデルであれば、異なるタイムゾーンに移動しなければ、基本的に操作する必要はない。ダイバーズウォッチであれば、水中に入る時に、分針にベゼルのゼロ位置を合わせる。
クロノグラフモデルなら、ラップ計測と回転ベゼルを組み合わせることで、複数回のラップタイムを測定して正確な平均タイムを計算することも可能だ。この場合には、頻繁な回転ベゼルの操作が必要になるだろう。
逆回転防止の意図
ユーザーが自由に操作できる双方向回転ベゼルの方が、都合のよい場合もあるだろう。逆回転防止ベゼルの意義は、第一に安全性の確保である。
ダイバーズウォッチの場合は顕著で、目盛りが逆回転してしまった場合には命に関わる。酸素残量の目安となるダイビングベゼルは、ダイバーにとって生命線なのだ。
ベゼルを知って時計の理解を深めよう
ベゼルの目盛りはなぜ存在し、なぜ回転するのか。それらは単なるギミックではない。
時計には時刻表示のほか、計測機器という重要な側面があり、ベゼルもその性能を高めるために開発されてきた。
現代において時計は、装飾的な要素が強くなっている一面もあるが、依然として計測機器としての機能も備えている。ベゼルの意味を知ると、時計の個性がわかり、自分のライフスタイルに沿うかも判断しやすいだろう。さらなる時計の深い魅力を楽しんでもらいたい。
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