ロレックスのアイコニックなクロノグラフ、コスモグラフ デイトナの60年近い歴史を振り返る。
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2020年2月掲載記事
ロレックス デイトナ、1963年誕生
ロレックスの歴史を振り返ると、クロノグラフの存在は3針モデルの陰に隠れていることが多い。ロレックスは、1920年代にはすでにいくつかのクロノグラフを生産していた。しかしそれらはオイスターケースにではなく、一般的なケースに外部製造のクロノグラフ ムーブメントを搭載したものであった。ロレックスが初めてオイスターケースのクロノグラフ搭載モデルを発表したのは第2次世界大戦中のことであった、しかしそれは大きなヒットには至らなかった。
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1955年にロレックスはRef.6234というクロノグラフを発表する。文字盤には「コスモグラフ」とも「デイトナ」とも記載されておらず、単に「クロノグラフ」とだけ記されていた。この時計をロレックスはリファレンスが廃止される1961年まで年産500本ほど作り続けた。1960年代初頭での価格は、200USドル程度。このモデルはあまり成功しなかった。なぜならば、クロノグラフの専門性においてロレックスよりも長い歴史と知名度を持つ時計メーカーは他にあり、そのためにロレックスのクロノグラフウォッチは取扱店の棚の上で埃をかぶる結果となっていたからである。しかし現在"プレデイトナ"と呼ばれるこれらの時計は非常に希少性が高くなり、求める人が激増している。ステンレススティール製ケースにシルバーカラーまたはブラック文字盤の仕様で、低く見積もっても2万USドルぐらいからしか入手ができない状況である。
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フロリダのデイトナビーチでのカーレースは1902年に初めて開催され、その後、何年にもわたり最速記録は更新され続けた。中でも、成功を収めたレーサーのひとりとして名高いのが英国のマルコム・キャンベル卿だ。彼が最速記録を保持していた1930年代初め、サーキット上でもオフシーンでもいつも彼の手首にはロレックスの時計があった。キャンベルは1931年にロレックスに感謝状を送り、オイスターケースの耐久性に敬服していると書き綴った。
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かつてのデイトナのレースコースは、長細い楕円形で、一部がくぼんでおり、ビーチと海沿いの道路にまたがるように造られていた。それが1959年からは、すべてがアスファルトで舗装され、その名も新しくデイトナ・インターナショナル・スピードウェイとなったのである。
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コスモグラフ デイトナRef.6239が発表される1年前の1962年に、初めてロレックスがデイトナのオフィシャル・タイムキーパーとなった。ロレックスはこれに合わせてクロノグラフウォッチを「デイトナ」と名付け、名門自動車レースと提携していることを強調した。この時計はカーレーサー向けに特別に考案されたもので、ベゼルのタキメータースケールが他の時計のタキメータースケールよりもかなり大きく設けられたものだ。
そして1963年に登場したコスモグラフ デイトナRef.6239は60年代後半からはカーレースに夢中なセレブリティたちをも魅了した。ポール・ニューマンは、俳優業だけでなく、全盛期には自身のレーシングチームを率いるほどカーレーサーとしても成功していた。彼はレース中にもその手首にデイトナを着けていた。1980年代、コレクターたちは文字盤外周部のクロノグラフのスケールが、コントラストを成して色分けされたこのモデルを"ポール・ニューマン"と呼んでいたほどである。
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ポール・ニューマンダイアルのコスモグラフ デイトナは、ホワイト文字盤にブラックのカウンター、視認性の高いアールデコ調のアラビア数字といった、明らかに他と異なる特徴がある。他の文字盤では、小さくシンプルな数字がサブダイアルに採用されているのが一般的だ。ポール・ニューマンダイアルモデルの、現在のオークション落札価格の上昇は驚くべきものだ。これらの時計は1980年代のオークションでは3000USドルから4000USドルで取引されていたものだった。
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