2020年はシーンにおいて実に興味深い年になりそうな予感がするが、いま一度、2019年に発表された時計を振り返ってみたい。今回は、時計愛好家たちの琴線を刺激した、GMTとデュアルタイム・ウォッチを紹介する。
Text by Mark Bernardo
Edit by Yuzo Takeishi
A.ランゲ&ゾーネ
2019年にアニバーサリー・イヤーを迎えた時計のなかにA.ランゲ&ゾーネの旗艦モデル「ランゲ1」がある。誕生から25年の節目を迎えた「ランゲ1」の多彩なバリエーションに、それぞれリミテッドエディションを展開する内容だが、なかでも特に注目に値するのが「ランゲ1・タイムゾーン “25th アニバーサリー”」だ。シルバーのダイアルにブルースティールの針とブルーのインデックスを組み合わせたデザインは、ユーザーがローカルタイムと第2時間帯を同時に読み取れるようにしたもの。第2時間帯の設定はケースサイドにあるプッシャーを押し、24の都市名が記されたリングを東方向に回転させて行うのだが、プッシャーを押すたびにダイアル4時位置にある第2時間帯表示の針も1時間単位で進むようになっているなど、容易になっている。もちろん、従来の「ランゲ1・タイムゾーン」と同様、昼夜表示(第2時間帯表示と連動)、2時位置のアウトサイズデイト、2時と4時位置の間にあるアップアンドダウン(AUF/AB)式のパワーリザーブ表示といった機能も装備されている。ホワイトゴールドのケースを採用した世界25本の限定モデルで、ムーブメントには自社製の手巻きキャリバーL031.1を搭載。サファイアクリスタル製のケースバックから、その美しい仕上げを鑑賞できるようになっている。
手巻き(Cal.L031.1)。54石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KWG(直径41.9mm)。548万円(税別)。(問)A.ランゲ&ゾーネ Tel.03-4461-8080
チャペック
チャペック「プラス・ヴァンドーム オンブル」は12時位置にオフセンターで配置された時分表示をはじめ、4時位置には第2時間帯表示、8時位置にはワンミニッツ・トゥールビヨンのサブダイアル、そして6時位置にはGMTディスクのように反時計回転する控えめな昼夜表示を配した、独特なダイアル・レイアウトとなっている。これらの機能を司るのが、サンドブラスト加工が施された地板とブリッジを採用したアンスラサイトカラーのムーブメントだ(オンブルはフランス語で影を意味し、この時計が持つグレーカラーを指していると考えられる。コレクション名の「プラス・ヴァンドーム」は、フランスの有名な広場から取られたものであり、フランソワ・チャペックが初期にハイエンドなウォッチブティックを開いたことでも知られる)。また、スモークグレーのシャンルベダイアルに配されたもうひとつの控えめながらも機能的な表示として、12時位置のダイアルに組み込まれたパワーリザーブ表示も挙げられるだろう。グレード5のチタン製ケースには、コンプリケーションのスペシャリスト集団Chronode SAとともに開発した自社製手巻きムーブメントSXH2が収められ、オープンワークが施されたラチェットを通じて眺められるようになっている。
手巻き(Cal.SXH2)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。Ti(直径43.5mm)。5気圧防水。1650万円(税別)。(問)ノーブル スタイリング Tel.03-6277-1604
フレデリック・コンスタント
フレデリック・コンスタントがクラシカルなドレスウォッチのコレクションに自社製ムーブメントを搭載したGMTモデルを発表したのは2011年のこと。それから8年後の19年、ジュネーブを拠点に“アクセシブル・ラグジュアリー(Accessible Luxury=手の届くラグジュアリー)”を掲げるこのブランドは、海をテーマとした「ヨットタイマー」コレクションにおいて、新たにトラベラー向けのコンプリケーションを追加した。「ヨットタイマーGMT」の42mmケースは、ローズゴールド・カラーを施したステンレススティール製。シルバーホワイトまたはアンスラサイトのギヨシェ文字盤にはローズゴールド・カラーの針とインデックスを組み合わせ、3時位置にはデイト表示を備えている。ダイアルには24時間表示のGMTリングを配しており、先端が赤いGMT針によって第2時間帯を指し示す。また、午後6時から午前6時までの夜間をブラック、それ以外は日中を示すライトグレーで色分けすることで昼夜がひと目で判別でき、デイト表示がローカルタイムと連動しているのもユーザーフレンドリーな仕様と言えるだろう。搭載するのはセリタSW200をベースとしたフレデリック・コンスタントの自動巻きキャリバーFC-350で、自社設計のGMTモジュールを組み合わせている。
自動巻き(Cal.FC-350)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径42mm)。10気圧防水。日本未入荷モデル。
ジャケ・ドロー
2016年に登場したジャケ・ドローの革新的タイムピース「グラン・セコンド デュアルタイム」は2019年、新たにケース直径43mmの4モデルを発表。いずれも、メゾンの特徴である8の字型のダイアルレイアウトを採用したモデルだ。新たな要素としては、6時側にオフセンターされたダイアルに正距方位図法(北極側から見た)の地球儀が描かれており、ミラーポリッシュを施したブラック、またはアンスラサイトで表現された海が大陸を囲む美しい仕上がり。24時間表示のホームタイム表示は、日中をホワイト、夜間をブラックで12時間ずつに色分けしており、直感的な認識を可能にしている。また、12時側のダイアルはジャンピングアワーを採用したローカルタイム表示となっており、時刻の調整も容易。そしてデイト表示は、円形のスケールを赤い針で指し示し、こちらは時刻調整と連動するようになっている。搭載されているジャケ・ドロー キャリバー2663H24はヒゲゼンマイとアンクルの先端にシリコンを採用。スケルトン仕上げの扇型ローターを用い、パワーリザーブは約65時間をマークしている。
自動巻き(Cal.Jaquet Droz 2663H24)。42石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KRG(直径43mm)。3気圧防水。292万円(税別)。(問)ジャケ・ドロー ブティック銀座 Tel.03-6254-7288
(後編に続く)