2020年はシーンにおいて実に興味深い年になりそうな予感がするが、いま一度、2019年に発表された時計を振り返ってみたい。今回は、時計愛好家たちの琴線を刺激した、GMTとデュアルタイム・ウォッチを紹介する。
前編は下記より
https://www.webchronos.net/features/41279/
Text by Mark Bernardo
Edit by Yuzo Takeishi
モリッツ・グロスマン
モリッツ・グロスマンの「アトゥムGMT」は、このドイツの気鋭ブランドにとって第2時間帯表示機能を備えた初のタイムピースとなる。ごくシンプルなダイアルデザインとなっており、ホームタイムはセンターの時分針によって表示するが、第2時間帯表示用の針を同軸上に組み込む代わりにアラビア数字のインデックスを配した24時間リングをダイアル外周に設け、三角形のマーカーがこのリング上を移動して第2時間帯を示すようにしているのだ。しかも、この第2時間帯表示は10時位置のリュウズによって設定でき、1時間単位で先送りや後戻しができるのも便利だ。ムーブメントには自社製のキャリバー100.8を搭載。約42時間のパワーリザーブを有しているほか、グラスヒュッテの伝統である3分の2プレートを備え、GMT機能はダイアル側に組み込んでいる。
手巻き(Cal.100.8)。26石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KWG(直径41mm)。420万円(税別)。(問)モリッツ・グロスマン ブティック Tel.03-5615-8185
ポルシェ デザイン
2019年のバーゼルワールドで発表されたポルシェ デザイン「1919 グローブタイマーUTC」の特筆すべきポイントは、シンプルなデュアルタイム機能にある。ローカルタイムはユーザーが人間工学に基づいたプッシャーを押すことによって1時間単位で設定でき、しかもその間、UTC針(ホームタイム表示)と分針は影響を受けない設計なのだ。「+(プラス)」のボタンは時計回りに、「−(マイナス)」は反時計回りにそれぞれ針を動かし、また、ダイアル9時位置に設けられた窓ではホワイトとブラックで昼夜表示を行い、ローカルタイムの午前と午後を設定するのに役立っている。ケースは3ピース構造のチタン製で、わずか15mmほどと非常に薄く、軽量で、ダイアルは3種類のカラーをラインナップしている。ケースバックには24のタイムゾーンがエングレービングされ、その内部にはこのモデルのために開発されたGMTモジュール採用のクロノメーター認定ムーブメントWERK 04.110を搭載している。
自動巻き(Cal.WERK 04.110)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。Ti(直径42mm)。10気圧防水。92万円(税別)。(問)ノーブル スタイリング Tel.03-6277-1604
ロレックス
2018年、ロレックスはレッド×ブルーの“ペプシ”ベゼルにジュビリーブレスレットを組み合わせた「オイスター パーペチュアル GMTマスターⅡ」を発表。その翌年に、別バージョンとしてブラックとブルーの“バットマン”ベゼルを採用したモデルを送り出した。オイスタースチールのケースは直径40mmで、特殊なツールによってねじ込まれたケースバックによって100m(330フィート)の防水性能を確保。双方向回転の24時間ベゼルにはセラクロムを採用し、目盛りと数字にはPVD加工によってプラチナコーティングを施している。ベゼルにインサートされるセラミックスはキズや腐食、紫外線に対して特に強い耐性を持つ素材だ。バイカラーベゼルの24時間表示は、GMT針と連係しており、第2時間帯をスピーディーに読み取れる。ケース内部には“ペプシ”モデルでも採用された自社製キャリバー3285が収められており、これは2019年の時点で10の技術的特許を出願しているという。
自動巻き(Cal.3285)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。オイスタースチール(直径40mm)。100m防水。92万8000円(税別)。(問)日本ロレックス Tel.03-3216-5671
ヴァシュロン・コンスタンタン
「オーヴァーシーズ・デュアルタイム」の最新モデルはブラックラッカー仕上げのダイアルに加え、マルタ十字に由来する六角形のベゼルや22Kゴールド製ローターを備えた自社製の自動巻きムーブメント、さらにストラップやブレスレットの長さ調整や交換が簡単に行える特許取得のシステムなど、2016年のデザイン変更時に導入されたすべての要素を備えた1本。直径41mmのステンレススティールケースは15気圧の防水性能を実現しているのみならず、ムーブメントを磁場から保護するために軟鉄製のインナーリングを採用している。自社製キャリバー5110 DTによってサンバーストラッカー仕上げのダイアルに表示されるふたつのタイムゾーンを同時に判読可能。また、メインの時針はローカルタイムを、先端が赤いGMT針はホームタイムまたはリファレンスタイムをそれぞれ指し示し、9時位置にある昼夜表示(午前・午後)と連係することで、着用者はひと目でホームタイムの昼夜を確認できる。6時位置にローカルタイムと連係したポインターデイトを配しているのも便利だ。
自動巻き(Cal.5110 DT)。37石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径41mm)。15気圧防水。246万円(税別)。(問)ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755