Q:金属アレルギーなのですが、お勧めのケース素材はありますか?
A: 一部の人にとって厄介なのが、金属アレルギーという問題。一部の時計メーカーはステンレススティールから、アレルギーの原因となるニッケルを省くことで、アレルギーを起こりにくくしています。また、現在多くの時計が採用するステンレススティールのSUS316と316Lは、それ以前に好まれていたSUS304に比べて、アレルギーが起こりにくくなっています。「サージカルステンレス」と言われる理由ですね。ロレックスなどが用いる904Lも、ニッケルの含有量は高いものの、アレルギーを起こしにくいと考えられています。なおジンのテギメント加工を施したスチールケースは、904L素材を用いています。
極めてアレルギーに反応しやすい人には、純チタンやプラチナといった選択肢があります。ですが、必ずしもアレルギーフリーでないため、人によっては反応する場合もあるでしょう。現在、チタン製の時計の多くは混ぜ物の含有量を増やした、いわゆるグレード5チタンを採用しています。これらはアレルギーを起こしにくい素材ですが、純チタンに比べるとアレルギーは起こりやすくなっています。
ステンレススティール以上に金属アレルギーが出づらいとされるのがチタンだ。腕時計で多く用いられるチタンはグレード5に分類されるチタン合金で、加工がしやすく発色も良いが、グレード2の純チタンと比較してしまうとアレルギーが生じやすい。写真のチューダー「ペラゴス 39」では純チタンを採用しながら、サテン仕上げを巧みに与えている。動巻き(Cal.MT5400)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径39mm、厚さ11.8mm)。200m防水。65万7800円(税込み)。
なお、時計業界の中でアレルギーの起きにくさで注目されているのは、タンタル素材です。ですが、加工に時間がかかるため採用はごく一部の時計に限られます。
また、万人向けではありませんが、外装をすべてセラミックスで作った時計や、ケース表面をDLCコーティングした時計などは、金属製の時計に比べて、理論上アレルギーを起こしにくいと言われています。セラミックスは当然ながら非金属ですし、DLCコーティングはカーボンの皮膜で金属を覆うためです。
セラミックスを外装に使った、オメガの「スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン アポロ8号」。本作もセラミックスという硬度の高い素材を使いながら、スピードマスターの造形を再現し、かつポリッシュとサテンの仕上げ分が施されるなど、高度な技術力が感じられる仕上がりとなっている。手巻き(Cal.3869)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。セラミックケース(直径44.25mm、厚さ13mm)。5気圧防水。220万円(税込み)。
もっとも、どの素材に対してアレルギーが反応するかは人によってそれぞれです。もし、金属アレルギーを持っていて、気に入った時計がアレルギーフリーをうたっていなくても、諦める前に店頭で試してみてください。