2019年に「アース・トゥ・スカイ」という統一テーマを発表したジラール・ペルゴ。1年を通して宇宙を想起させるDLC加工のブラックチタンケースと透明なブルーのポリクリスタル文字盤による作品を展開した。その中で筆者が最も興味をひかれたのは、アールデコ調のレトロな「ヴィンテージ 1945」シリーズからの1本だ。
Text by Mark Bernardo
2019年のテーマ「アース・トゥ・スカイ」と、2014年から続く「ヴィンテージ 1945」シリーズの融合
この時計の名は「ヴィンテージ 1945 アース・トゥ・スカイ」。ジラール・ペルゴは2014年に、20世紀初頭を想起させるアールデコ調のレクタングルケースに現代的な素材を融合させた「ヴィンテージ 1945 ラージデイト ムーンフェイズ」を発表している。その時計を基とした派生モデルだ。オリジナルモデルと同様に、12時位置にオーバーサイズのデイト表示と、6時位置にスモールセコンドと合わせて配したムーンフェイズ表示を備える。また、仄かにスモークをかけた透明な文字盤によって機構やディスクを垣間見せる手法もオリジナルモデルに同じだ。オリジナルモデルではグレーを採用したこのスモーキーな効果は、今作ではブルー基調に変更されている。
多くのメーカーと同様にビッグデイトにはふたつの別々のディスクに数字を配す。ディスプレイの視覚的調和を損なう可能性のある「2層効果」を、ジラール・ペルゴは革新的な技術を使用して最小限に抑えている。ディスクの1枚は透明なサファイアクリスタル製であり、その位置はもう1枚のディスクの僅か0.1mm上だ。そのためほぼ段差がなく2枚が重なっているような印象を与える。日送り機構が駆動すると、ディスクは0.5秒で所定の位置に移動する。ムーンフェイズ表示はスモールセコンドと同軸にあり、透明なサファイアクリスタルの「ダブルバブル」プレートを通して、その下のメカニズムが見えるようになっている。アールデコ調のアワーマーカー、インデックス、ドーフィン針の時分針はブラックPVD加工が施されており、明るい採光下では機構が透けて見えるブルーの文字盤と明確なコントラストを成している。オリジナルモデル同様、インデックスなどに夜光処理が施されていないため、採光が充分でない場合は一目での時刻の確認は少々難しい。
筆者はジラール・ペルゴの1945年製モデルをベースとしたヴィンテージ 1945のケースを高く評価する。上下左右に曲線を描くレクタングルケースは優美さを演出するだけでなく、人間工学に基づいて着け心地を追求したものだ。レトロなケース形状と、現代的なブラックDLCの素材という組み合わせの視覚的な不一致に慣れれば、着用者はこの審美的な大胆さを気に入るだろう。
丸型のムーブメントは自動巻きキャリバー GP03300-0105だ。レクタングルケースに合わせて作られたものではないが、高級時計にふさわしい仕上げが施されている。裏蓋の丸い窓から鑑賞できるムーブメントは、282点の部品で構成され、32石、毎時2万8800振動、約46時間のパワーリザーブを有する。ケースは30mの防水性を保持し、裏面がラバー素材のアリゲーターストラップが合わせられ、ブラックDLCコーティングが施されたステンレススティール製フォールディングバックルが付属。本作はすでに販売開始しており、店頭で実機を確認することができる。