時計の駆動を司るムーブメントは、クルマではエンジンにあたる部分。時計の駆動方法には数種類あり、それぞれに異なる魅力と特徴がある。ここでは世界に名を馳せる高級腕時計ブランド「オメガ」が採用するムーブメントについて解説していこう。
ムーブメントとは
ムーブメントとは、時計の動力部分のこと。その駆動方法にはいくつかの違いがあるが、そこに注目すると、多様な種類の腕時計から、それぞれのメリットや魅力を見分けられるようになる。
ムーブメントの種類
ムーブメントには、「機械式」「クォーツ式」「ソーラー」などの種類が存在する。
機械式は、巻き上げたゼンマイが解ける力を利用して作動させるもので、さらに「自動巻き」と「手巻き」に区分される。
自動巻きとは、身に着けた腕時計内部のローターが身体の動きによって回転し、自動的にゼンマイが巻き上がる仕組みで、一方の手巻きは、リュウズを手で回してゼンマイを巻き上げるタイプである。
「クォーツ」の動力源は電池。電池により発生する水晶(クォーツ)の振動を利用して時刻を調整している。
また、「ソーラー」は太陽光や電灯の光を利用し、ソーラー発電のエネルギーにより作動させる仕組みだ。
ムーンウォッチのキャリバー321が有名
「ムーンウォッチ」は、オメガの顔ともいえる手巻き式クロノグラフ「スピードマスター」の別名。1967年7月に行われたNASAのアポロ計画で、宇宙飛行士が月で着用することになった栄誉から名付けられた。
「スピードマスター」が誕生したのは1957年で、この初代モデルに搭載されたムーブメントが「キャリバー321」。複雑で美しいデザインを有し、時計愛好家の間で伝説のムーブメントと呼ばれているものだ。
1968年に惜しまれながらも製造を終了したが、時計ファンの要望を受け、2019年にアポロ月面着陸50周年を記念した新型ムーンウォッチのムーブメントとしてキャリバー321は復活を遂げた。
オメガにとってアイコニックなムーブメントであるキャリバー321の復刻にあたり、専用の工房で入念な研究が続けられた。当初の仕様を緻密に再構築することによって、見事に現代へと蘇ったのだ。
オメガへの供給メーカー
自社ムーブメントにも定評があるオメガだが、他社からの供給も受けている。スウォッチグループという巨大なコングロマリットに所属し、ムーブメントにおいて他社との協力関係を築けることもオメガの強みだ。
高精度なムーブメントを供給し、高品質なオメガの時計作りを支えるメーカーについて解説していこう。
ETA社
「ETA社」は、時計作りの本場であるスイスが誇る、業界最大手のムーブメントメーカー。オメガをはじめとして、数多くの時計メーカーにムーブメントを提供している。
ETA社のシェアは圧倒的だ。現在でこそ自社製ムーブメントを採用する時計メーカーは増えているが、1990年代ではスイスの時計の約90%がETA社のムーブメントを採用していると言われていたほどだ。
その始まりは、スイスのムーブメントメーカーの連合組織。18世紀末に生き残りをかけた数社が協力体制を取り、技術力を持ち寄って高品質なムーブメントを製造し始めたことがETA社の母体となっている。
フレデリック・ピゲ
「フレデリック・ピゲ」は、オメガの時計作りを語る上で欠かすことができないムーブメント供給源である。なぜなら、オメガのハイエンドクラスの腕時計の多くで採用されているメーカーだからだ。
フレデリック・ピゲは、1858年にスイスで誕生したムーブメントメーカーで、卓越した技術を持ったルイ・エリゼ・ピゲによって設立。
緻密な技法により製造されるムーブメントは、世界の高級腕時計メーカーからの厚い信頼を獲得しており、一流の名をほしいままにする高貴な時計ブランドの数々が、フレデリック・ピゲのムーブメントを採用している。
レマニア
「レマニア」は、1884年に時計技師のアルフレッド・ルグランによって創設されたスイスの老舗ムーブメントメーカーが母体だ。
その技術力にいち早く目を付けたのがオメガだった。レマニアとの出会いこそが名機ムーンウォッチ誕生の原点とも言われ、その後のオメガの繁栄を支えたといっても過言ではない。
1981年にブレゲ傘下となり、2007年にはブレゲのムーブメント製造部門に吸収されたため、企業としてのレマニア社は消滅しているが、高品質のムーブメントを製造するブランドとして今もなおその名を轟かせている。