精度とクォリティに定評のあるオメガの腕時計は、コーアクシャル脱進機の開発によりさらなる信頼性を獲得した。なかでもマスター クロノメーターは、精度はもちろん、耐久性や耐磁性といった面でも高い性能を誇る。ここではコーアクシャル脱進機と、その精度をさらに向上させたマスター クロノメーターの仕組みや搭載モデルを解説する。
コーアクシャル脱進機を理解しよう
オメガの腕時計は、NASAの有人宇宙飛行に携行され、オリンピックのオフィシャルタイムキーパーにもなった輝かしい経歴を持つ。
そもそも機械式時計は主ゼンマイが生み出す動力の伝達効率の低さが難点であったが、オメガは「コーアクシャル脱進機」を開発することにより、この問題を克服した。まずは、オメガの時計を次のステージに進めたコーアクシャル脱進機について解説しよう。
オメガのみ搭載する機構
オメガの現行コレクションは、モデル名に「コーアクシャル(Co-Axial)」と付いたものが大半を占める。これは、ムーブメントに「コーアクシャル脱進機」を採用したモデルであることを示すものだ。
コーアクシャル脱進機は、1974年にジョージ・ダニエルズ博士が発明した機構である。1999年にオメガが開発と量産化に成功すると、「壊れにくく」「丈夫で長持ちする」という評判が瞬く間に世界中に広がった。
以来、採用する時計メーカーはオメガのみであり、オメガの腕時計の精度や信頼性を象徴する機構となっている。
パーツの摩耗が少ない
コーアクシャル脱進機は、通常の脱進機に比べてパーツの摩耗が少なく壊れにくいことが大きな特徴だ。注油をほぼ必要とせず、メンテナンスにかかる費用を抑えられる。
一般的にオーバーホールは3〜5年周期で行うものとされているが、オメガのコーアクシャル搭載機では8〜10年周期で行うことを推奨している。
さらに、2018年7月1日以降に購入されたすべてのオメガウォッチは、国際保証を5年にしている。保証期間を1年や2年とする時計ブランドがまだまだ多いなかで、オメガは高い信頼性とサポート体制を提供するブランドのひとつと言えるだろう。
コーアクシャル脱進機の仕組み
脱進機は、ガンギ車とアンクル、爪石といったパーツで構成されている。調速機であるテンプを規則正しく振り子運動させるために動力を伝達するアンクルの爪石は通常2個だが、コーアクシャル脱進機では3個だ。
爪石がかかるガンギ車は輪状ではなく風車状になっており、爪石とガンギ車の歯の接触面積を極小化することで摩擦を抑え、少ないトルクで高効率な動力伝達を可能にしている。
さらに、時代を経て改良が進み、ヒゲゼンマイとテンワは非磁性のシリコン製に。その他の部品も耐磁性の高いニヴァガウスやアモルファス合金を採用するなど研究に余念がない。
マスター コーアクシャルとマスター クロノメーター
1999年にコーアクシャル脱進機を開発して以降、オメガはその独自機構をさらに進化させている。
2014年に登場したマスター コーアクシャル・キャリバー8400と、その翌年から導入された「マスター クロノメーター」について解説しよう。
マスター コーアクシャルとは
2014年に発売された「シーマスター 300 マスター コーアクシャル」は、新設計のコーアクシャル脱進機を採用したキャリバー8400を搭載し、1万5000ガウスという驚異的な耐磁性を誇るモデルであった。
もちろん、それまでも軟鉄製のインナーケースにムーブメントを収めて耐磁性を高める手法は存在したが、これでは1000ガウス程度の耐磁性能がせいぜいである。
これに対し、キャリバー8400は3万ガウスの磁場を持つMRIに通しても精度を落とさず、スイス公式クロノメーター検定協会(C.O.S.C.)のテストにも合格した、非常に信頼性の高いムーブメントだ。
ただし、発表当時には耐磁性について実証できるテスト装置がなく、厳密な証明には至らなかった。
マスター クロノメーターとは
コーアクシャル搭載モデルの性能を客観的に評価するために、2015年に制定されたのが、スイス連邦計量・認定局(METAS)との共同開発によるテストだ。
このテストでは、C.O.S.C.のテストをクリアしたムーブメントを搭載した腕時計に対して、8つの厳格な検定基準を設けている。
それは、1万5000ガウスの磁場にさらした場合にもムーブメントの機能を保持していることや、6姿勢における精度誤差、パワーが低下した状態での精度や防水性といった内容。
そして、C.O.S.C.とMETASのテストをクリアした超耐磁性のクロノメーターだけが、マスター クロノメーターの称号を得る。
マスター クロノメーターの代表コレクション
マスター クロノメーターは、高精度と耐磁性を誇るハイエンドモデルだが、さらに5000Gの衝撃を与えるテストをもクリアしている。
ここでは、非常に高い信頼性を誇る、マスター クロノメーターの代表2モデルを紹介しよう。
スピードマスター ムーンフェイズ クロノグラフ マスター クロノメーター
自動巻き(Cal.9904)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径44.25mm)。10気圧防水。116万円(税別)。
「スピードマスター ムーンフェイズ クロノグラフ マスター クロノメーター」は、月面に初めて降り立った記念碑的モデルであるスピードマスターに、ムーンフェイズ機能を搭載したモデルだ。
スピードマスターのデザインコードであるタキメーターを備えたベゼルには、コレクション初となるリキッドメタルを採用した。
3時位置には同軸上で動作する60分積載計と12時間積算計、9時位置にはスモールセコンドと日付表示を備える。
この卓越したデザインと機構のクロノグラフにはCal.9904かCal.9905を搭載しており、ケース素材やカラーを変え、多彩なバリエーションを展開している。
シーマスター プラネットオーシャン マスター クロノメーター
自動巻き(Cal.8900)。39石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径43.5mm)。60気圧防水。68万円(税別)。
「シーマスター プラネットオーシャン マスター クロノメーター」は、深海での完全な動作を約束する、600m防水のプロフェッショナル・ダイバーズウォッチだ。
セラミック製の逆回転防止ベゼルにはリキッドメタルでダイビングスケールを記し、優れた耐食性と耐傷性を誇る。
ツインバレルのCal.8900を採用することで、パワーリザーブは最大約60時間を実現。もちろん、マスター クロノメーターなので超耐磁性かつ超高精度である。
600mという高い防水性能でありながらも、サファイアクリスタルによるシースルーバックを実現している点も驚異的だ。
ケース径43.5mmモデル、39.5mmモデルともに10種類以上のバリエーションがあり、45種類の膨大なパターンのストラップと組み合わせる事ができる。
搭載モデルを着けてみよう
オメガの腕時計は精度はもちろん、信頼性においても揺るぎない地位を確立している。ましてや、マスター クロノメーターともなれば、耐磁性や耐久性といった面で他ブランドの追随を許さない。
また、マスター クロノメーターは性能に反してリーズナブルで、100万円以下で手に入るモデルが多い点も特筆だ。コストパフォーマンスの高いオメガの逸品を身に着けてみてはいかがだろうか。
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