2020年の新作がアナウンスされ始めたが、いま一度、2019年に発表された時計を振り返り、その魅力を確かめてみたい。クロノグラフに焦点を当てて紹介する。
Text by Mark Bernardo
Edit by Yuzo Takeishi
オーデマ ピゲ 「ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ」
2019年、オーデマ ピゲは新たに「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」を投入。同コレクションはさまざまな意見を呼んだが、それ以外にも同社は注目すべき新しい時計を発表している。「ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ」の新作は、ベゼルとプッシュボタン、ねじ込み式リュウズにカラーセラミックを採用し、さらにカモフラージュパターンのラバーストラップとの組み合わせが印象的なモデル。ベゼルはこのモデルの特徴であるメガ・タペストリー模様が施されたダイアルのカラーや、カモフラージュパターンを配したストラップと同系色でまとめている。シースルーバックから望めるのは2万1600振動/時で、50時間のパワーリザーブを備えた自動巻きクロノグラフ搭載ムーブメント3126/3840。また文字盤レイアウトは12時、9時、6時にインダイアルを配し、3時位置には丸窓のデイト表示を備えている。
自動巻き(Cal.3126/3840)。59石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径44mm)。100m防水。335万円(税別)。問/オーデマ ピゲ ジャパン Tel.03-6830-0000
ブルガリ 「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT オートマティック」
世界最薄記録を更新し続けるブルガリは、2019年のバーゼルワールドにおいて新たな努力の成果を披露した。それが「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT オートマティック」。ムーブメント厚はわずか3.3mmと世界最薄自動巻きクロノグラフムーブメントの記録をマークし、新しい自社製の自動巻きムーブメント(約55時間のパワーリザーブを備えたCal.BVL 318)は、2018年に発表された「オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック」と同様、ムーブメントの裏側にペリフェラルローターを装備している。サンドブラスト仕上げのチタン製ケースも非常に薄く、厚さはわずか6.9mm。防水性は30mを実現している。ストップウォッチに加えてGMT機能も備えており、プッシュボタンの操作だけで時針を進められる利便性も特筆である。
自動巻き(Cal.BVL 318)。37石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。Ti(直径42mm)。30m防水。192万円(税別)。問/ブルガリ ジャパン Tel.03-6362-0100
カール F. ブヘラ 「バイコンパックス クロノグラフ」
カール F. ブヘラの本拠地ルツェルンで発見された「バイコンパックス クロノグラフ」は、1956年に誕生した直径34mmのモデル。「ヘリテージ バイコンパックス アニュアル」はこのアーカイブピースに着想を得た新作で、アニュアルカレンダーとクロノグラフを搭載したものだ。直径は41mmで、シルバー×ブラックのパンダダイアルにステンレススティールを組み合わせたモデルと、ローズ×シャンパンカラーのダイアルにステンレススティールと18Kローズゴールドのツートーンケースを組み合わせた2種類をラインナップ。
アニュアルカレンダーはダイアルの12時側にあるビッグデイト、同じく4時と5時の間にある月表示で構成。スーパールミノバが塗布された時分針にヴィンテージ調のアラビア数字インデックス、長方形のプッシュボタン、ボックススタイルのサファイアクリスタル製風防といったディテールはアーカイブピースに着想を得たもので、パンダダイアルのモデルにはブラックラバーのストラップ、シャンパンダイアルのモデルにはブラウンのカーフレザーストラップをそれぞれ組み合わせている。搭載しているのはETAムーブメントをベースに、デュボア・デプラのモジュールを組み合わせた自動巻きキャリバーCFB 1972で、パワーリザーブは約42時間を実現。各モデルともブヘラの創業年である1888年にちなみ、世界888本の限定となっている。
自動巻き(Cal.CFB 1972)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS×18KRG(直径41mm)。30m防水。136万円(税別)。問/ブヘラジャパン Tel.03-6226-4650
グランドセイコー 「スポーツコレクション スプリングドライブ20周年&NISSAN GT-R 50周年記念限定モデル」
現在、多くの高級時計ブランドが自動車メーカーとパートナーシップを結んでいるが、アメリカであまり知られていないのがグランドセイコーと日産という2社の提携だ。これまでもグランドセイコーは日産の「GT-R」に着想を得た限定モデルを製作していたが、販路はあくまでも日本限定だった。2019年にリリースされたグランドセイコー「スポーツコレクション スプリングドライブ20周年&NISSAN GT-R 50周年記念限定モデル」は、世界200本の限定モデル。「NISSAN GT-R 50周年記念エディション」の車と同時リリースされ、その名が示すとおりGT-Rの50年とスプリングドライブの20周年を記念したものだ。このモデルで目を惹く「ワンガンブルー」は1969年の初代GT-Rにちなんだカラーで、ケースやダイアル、ストラップを彩っている。直径46.4mmのケースはブライトチタン製。NISSANレーシングでお馴染みのホワイトのレーシングストライプをホワイトシルバーのダイアルにあしらっており、これがインダイアルとシャイニーホワイトのストラップにマッチしている。ムーブメントは、セイコーの独自機構であるスプリングドライブを採用したキャリバー9R96で高精度を実現している。
スプリングドライブ(Cal.9R96)。50石。パワーリザーブ約72時間。セラミックス×ブライトチタン(直径46.4mm)。10気圧防水。220万円(税別)。問/セイコーウオッチ Tel.0120-612-911
ウブロ 「クラシック・フュージョン アエロ・フュージョン クロノグラフ オーリンスキー レッドマジック」
ウブロの「クラシック・フュージョン アエロ・フュージョン クロノグラフ オーリンスキー レッドマジック」は世界200本の限定モデルで、最大の特徴は直径45mmのケースに採用されたレッドセラミックである。シャープなエッジやベゼルはウブロの研究開発チームが4年もの歳月をかけて実現したディテールで、これは鮮やかな色調を損ねないように高温高圧でセラミックを生成するという特別なプロセスによるもの。すべてが自社内で行われているため、詳細なプロセスは非公開だが、この特許取得済みの製法によって難易度の高いレッドのカラーリングのみならず、既存のセラミックよりも高い硬度を実現した。こうして誕生した鮮やかなカラーと幾何学的なファセットカットは、フランスの芸術家リチャード・オーリンスキーの彫刻作品で、鮮烈なレッドをポップアート・スタイルの一部として確立した「Born Wild Crocodile」を彷彿とさせるデザインワーク。美しくポリッシュ仕上げが施された真紅のケースには、約42時間のパワーリザーブを誇る自動巻きキャリバーHUB1155を搭載。9時位置のインダイアルは30分積算計で、3時位置にはスモールセコンドを配置。時分針もレッドラッカーで仕上げ、徹底してそのカラーをアピールしている。
自動巻き(Cal.HUB1155)。60石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。レッドセラミック(直径45mm)。5気圧防水。256万円(税別)。問/LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ Tel.03-5635-7055
(後編へ続く)