2020年の新作がアナウンスされ始めたが、いま一度、2019年に発表された時計を振り返り、その魅力を確かめてみたい。今回はクロノグラフに焦点を当てて紹介する。
Text by Mark Bernardo
Edit by Yuzo Takeishi
モンブラン 「1858 スプリット セコンド クロノグラフ リモテッドエディション 100」
ここ数年のモンブランの時計コレクションは、その多くがデザインをミネルバのヒストリカル・ピースから引き出している。そもそもミネルバはスイスのクロノグラフメーカー。2006年にリシュモンの傘下に入り、その後はモンブランの工房としてムーブメントを供給してきた。ここに紹介する「1858 スプリット セコンド クロノグラフ リモテッドエディション 100」は、1930年代のミネルバのミリタリーウォッチを現代的なラグジュアリースタイルで再構築したモデルで、サテン仕上げを施した直径44mmのブロンズケースに、ローズゴールド色のディテールを施したブラックラッカー仕上げのダイアルを組み合わせている。伝説的なミネルバのクロノグラフウォッチにならい、ダイアルにはクラシカルな機能をレイアウト。外周部には可視、可聴現象に基づいて距離を測定するテレメーターを、そしてダイアル中央には特定時間における物体の速度を測定するタキメーターをそれぞれ備えている。これらの機能はモノプッシャーのスプリットセコンド・クロノグラフを用いることで中断することなく計測できるようになっている。搭載するムーブメントは手巻きのキャリバーMB M16.31で、クロノグラフの駆動とスプリットセコンドを制御するために二つのコラムホイールを備えているのが特徴だ。
手巻き(Cal.MB M16.31)。25石。1万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。ブロンズ(直径44mm)。3気圧防水。327万5500円(税別)。問/モンブラン コンタクトセンター Tel.0120-39-4810
オメガ 「スピードマスター アポロ11号 50周年記念 ムーンシャイン ゴールド リミテッド エディション」
2019年はオメガにとって重要な1年となった。月面に降り立った世界初の時計メーカーとしてその50周年を祝う年となり、1969年にアポロ11号が初の月面着陸を行なった際、宇宙飛行士たちが着用していた「スピードマスター プロフェッショナル “ムーンウォッチ”」のスペシャルエディションを発表した。数ある特別モデルの中で一つだけにフォーカスを当てることは難しいのだが、ここでは18K ムーンシャイン ゴールドを採用した「スピードマスター アポロ11号 50周年記念 ムーンシャイン ゴールド リミテッド エディション」を紹介する。これは、月面着陸を祝して1969年にヒューストンで開催された「Astronauts Appreciation Dinner(宇宙飛行士感謝ディナー)」で贈られた、イエローゴールドのケースとバーガンディのベゼルを組み合わせた希少なモデルに、現代的解釈を加えたもの。オリジナルモデルに使用された18Kイエローゴールドよりも淡い色合いのムーンシャイン ゴールドは、ゴールドとシルバーにパラジウムを合わせた退色しにくく輝きを失わない合金で、このモデルではケースのみならず、ダイアルや針、ブレスレットにも使用されている。バーガンディカラーのタキメーターベゼルはオリジナルではアルミニウムだったが、このモデルではセラミックを採用。搭載するムーブメントはマスター クロノメーター キャリバー3861。これはオリジナルモデルのキャリバー861と同様に手巻き式だが、コーアクシャル・エスケープメントやシリコン製ヒゲゼンマイといった新しい要素が組み込まれ、地板とブリッジにはゴールドプレート仕上げが施されている。
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。ムーンシャイン ゴールド(直径42mm)。5気圧防水。371万円(税別)。問/オメガお客様センター Tel.03-5952-4400
パテック フィリップ 「アクアノート・クロノグラフ 5968A-001」
2019年、パテック フィリップは最もスポーティで手の届きやすい「アクアノート」において、コレクション初となるクロノグラフモデルを発表した。「アクアノート・クロノグラフ 5968A-001」のステンレススティールケースは丸みを帯びた八角形のベゼルを特徴とし、直径42.2mm、厚さ11.9mmのケース表面と側面にはサテンとポリッシュ仕上げを交互に施している。ねじ込み式リュウズには緩やかなカーブを描くリュウズガードが備わり、その両端には長方形のプッシュボタンを装備。そしてグラデーションを施したブラック・ソレイユのダイアルにはコレクション共通のエンボスパターンを採用し、ホワイトゴールドのインデックスを合わせている。6時位置のインダイアルはクロノグラフの60分積算計で、その形状は八角形のケースとシンクロするデザインだ。自動巻きフライバック・クロノグラフムーブメントCH 28-520 Cは、クラシックなコラムホイールと現代的な垂直クラッチを組み合わせた設計。垂直クラッチがクロノグラフ秒針の針飛びを起こしにくくすると同時に、ほぼ摩擦なく作動するため、クロノグラフ秒針を常時回転させてセンターセコンドのように使うこともできる。また、このモデルでは独立した4つの留め金を備えた折り畳み式のバックルを採用し、開閉時の安全性を高めていることも付け加えておく。
自動巻き(Cal.CH 28-520 C)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。SS(直径42.2mm)。12気圧防水。477万円(税別)。問/パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109
タグ・ホイヤー 「モナコ 1969-1979 リミテッドエディション」
2019年に発表されたクロノグラフを総括するうえで、タグ・ホイヤーの「モナコ」50周年を抜きには語れない。5つの限定モデルが発表され、10年ごとの「モナコ」の歴史からインスパイアされた内容となっている。その第1弾を飾ったのが、独創的なルックスを備えた169本限定の「モナコ 1969-1979 リミテッドエディション」だ。ダイアルは1970年代の雰囲気を感じさせるカラーリング。ダークグリーンにブラウンとイエローのアクセントを配し、3時位置と9時位置のインダイアルはグレイッシュな“サンレイブラック”で彩っている。さらに、コート・ド・ジュネーブによってエレガントな雰囲気をプラスし、コレクターの興味をかき立てるデザインに仕上げている。縦横39mmのスクエアケースはステンレススティール製で、プッシュボタンは右側の2時位置と4時位置にレイアウト。リュウズはオリジナルモデルと同様、9時位置に付いている。搭載するムーブメントは、有名なキャリバー11の現代版で、クイックチェンジデイト、40時間のパワーリザーブを備えている。
自動巻き(Cal.11)。59石。2万8800振動/時。パワーリザーブ40時間。SS(縦39mm×横39mm)。100m防水。70万5000円(税別)。問/LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー Tel.03-5635-7054
ゼニス 「エル・プリメロ A384 リバイバル」
ゼニスは2019年に名機エル・プリメロの50周年を迎え、それにちなんだ新作を投入した。なかでもヴィンテージウォッチの愛好家やコレクターが興味を示したのが「エル・プリメロ A384 リバイバル」。エル・プリメロを最初に搭載したパンダダイアル・モデルの復刻である。このモデルを製作するにあたり、ゼニスは「リバースエンジニアリング」を採用。これはオリジナルモデルのパーツを一つ一つコンピューターによってトレースする手法で、これにより、ファセット加工された直径37mmステンレススティールケースやタキメーターを備えたブラック×ホワイトのラッカー仕上げ文字盤、2時位置と4時位置のマッシュルーム型プッシュボタンなどが正確に再現されたわけだ。一方、オリジナルはソリッドバックだったが、復刻に際してはモダンなアプローチを採用。シースルーバックに変更され、エル・プリメロ・ムーブメントの進化型であるエル・プリメロ400を鑑賞できるようになっている。そして、ゼニスのこだわりの仕上げとして、この復刻モデルには1969年のオリジナルと同じラダーブレスレットと、写真のブラックアリゲーター・ストラップを用意しているのも、愛好家の琴線を大いに刺激する。
自動巻き(Cal.El Primero 400)。31石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径37mm)。5気圧防水。82万円(税別)。問/ゼニス ブティック銀座 Tel.03-3575-5861