今回はパイロットや航空関係愛好家をターゲットにした、パイロットウォッチを紹介していきたい。
Text by Mark Bernardo
Edit by Tsuyoshi Hasegawa
2020年3月 掲載記事
ベル&ロス
ベル&ロスの「BR 03-92 MA-1」は、パラシュート部隊に使用されたナイロン生地を発想源とするユニークなモデルだ。そのナイロン生地は1950年代には軍で使用され、70年代のファッション業界にて流行したMA-1ボンバージャケットと繋がっている。42ミリ径のケースはダークカーキのセラミック製であり、文字盤も同様のカーキカラーで統一され、2つのメタルプレートによる“サンドイッチ”構造がひとつの特徴となっている。下部に位置する層はスーパールミノバ加工のオレンジにて塗装されており、インデックス型に切り抜かれた上部の層の開口部から、ステンシル風に覗く仕立てとなっている。
カーフスキンのレザーストラップは、ボンバージャケットを思わせるダークなカーキカラー。縁に沿うようにオレンジを配したリバーシブル・デザインであり、PVD加工されたガンメタルカラーの尾錠が付属する。この“手首に装着するフライトジャケット”には、セリタのSW.300-1をベースにアレンジを加えた自動巻きBR-CAL.302が搭載され、2万8800振動/時、約38時間のパワーリザーブを保持している。
ブレモン
英国のブランド、ブレモンは航空関係の歴史に着想を得た「H-4 ヘルキュール リミテッドエディション“Spruce Goose”」を、2019年のWatchTimeニューヨークにおけるコレクターズイベントで発表。「Spruce Goose」という名前は、1940年代にホワード・ヒューグによって設計されたアメリカ製飛行機のプロトタイプに由来しており、当時スチール素材の不足から構造部分に木製素材が使用されていたのである。H-4とは第二次世界大戦時に活躍した輸送機であり、320フィート11インチという当時最も広い翼を備えた機体であった。現在もオレゴン州 MacMinnvilleにあるEvergreen Aviation & Space Museumに展示されている。
ブレモンのTrip-Tickケース構造が採用されたこの記念モデルは、玉ねぎ型のねじ込み式リュウズとステップベゼルが合わせられ、ケース素材としてステンレススティール、ローズゴールド、プラチナの3種がラインナップされている。パイロットスタイルのミニッツトラックと注射器型の針の外側に、GMTリングを配置。搭載する機械はブレモンの自動巻きキャリバーBWC/02であり、発想元であるH-4ヘルキュール機体の胴体部分に使用されていた、バーチウッド製4枚のブレードからなるローターがひとつの特徴だ。そしてその個性的なムーブメントは、サファイアクリスタルのケースバックから観賞可能である。
ブライトリング
典型的な航空関連のブランドといえば、ブライトリングが筆頭格だ。直近でもパイロットのタイムキーパーとして稼働する新作を多数投入するなか、特に際立ったモデルがミリタリー関連の新コレクション「アビエーター8 カーチス P-40 ウォーホーク」であり、その3モデルのなかでも自社製ムーブメントcal.B01が搭載された43㎜径の「B01クロノグラフ」は特に注目に値する。
アメリカの航空会社、カーチス・ライトによって1938年から1944年にかけて製作された戦闘機にインスパイアされたモデルであり、この戦闘機は第二次世界大戦中にフライング・タイガーと呼ばれた中国空軍に参加した、アメリカ人志願パイロット達が操縦したことでも知られている。C.O.S.C.認定取得済みの自動巻きムーブメントには、クロノグラフを司るコラムホイール機構が採用され、約70時間ものパワーリザーブを保持する。文字盤のレイアウトは、ミリタリー・グリーンをベースに、シルバーホワイトのサブダイアルが3時・6時・9時位置に、そして4時半位置にはデイト表示が配されている。B01モデルは「カーチス ウォーホーク」コレクションのなかでも唯一サファイアクリスタル製ケースバックが奢られており、そこには“フライング・タイガー”のサメのイメージと共に、カーチスのロゴがプリントされている。
シチズン
シチズンは自身のスポーティコレクション「プロマスター」の30周年記念モデルとして、リミテッドエディションを3作発表した。それぞれが、陸・海・空に対応しているところがポイントだ。“空”を活躍の場とするパイロット達に対し打ち出したのが、1,989本限定の「エコ・ドライブGPS衛星電波時計プロマスター30周年限定モデル」だ(1989年はシチズンが最初のプロマスターを発表した年)。
47㎜径のケースにはシチズンのスーパーチタニウムを採用し、さらにデュラテクトMRKとデュラテクトDLCを組み合わせた硬化処理を行い、打ちキズに強い表面を実現している。ベゼルに配したパイロット達に使用されるビジュアルシグナルコードもひとつの特徴。複雑な構成のコックピットをイメージした文字盤には、大きな針とマーカーがベースとなる文字盤と、クリスタル層との間に配置され、オレンジのアクセントと夜光処理が組み合わされている。光により駆動するエコ・ドライブのムーブメントはGPS衛星電波受信、1/4秒から12時間までを計測できるクロノグラフと、2つのタイムゾーンを同時に表示できるディスプレイを装備する。