自動巻き時計を手巻きするとローターが回ってしまう/ぜんまい知恵袋〜時計の疑問に答えます〜

2020.03.15

Q:自動巻き時計を手巻きするとローターも回ってしまいます。どこが壊れているのですか?

広田雅将

A: しばしば自動巻き時計をリュウズで手巻きすると、ローターも回ってしまうことがあります。本来、自動巻き時計は手巻きすると、自動巻き機構がスリップしてローターが回らないようになっています。ですが自動巻き機構が油切れを起こしたり、不具合が生じると、手巻きの際にローターも回ってしまいます。高級機では起きにくいとされていますが、リバーサーを使った汎用エボーシュや、長期間使っていない自動巻きでは生じやすいと言われています。

ほとんどの場合はムーブメント内の油切れや油の固着が理由なので、オーバーホールすれば直ります。一昔前は自動巻き機構だけを外して油をさすという修理方法もありましたが、現在、部分的な修理を受けてくれるメーカーや時計師はいないでしょう。一般的に、こういう不具合が生じた場合は、自動巻き機構を丸ごと交換して対応となります。

では、どうすれば問題は起こりにくくなるのか。油切れはどうにもなりませんが、油の固着は気を付ければ防げます。普段使わない時計でも、週に1度は動かしてあげること。フルに動かす必要はなく、油を回してあげればいいのです。時計を多く持っているコレクターは大変でしょうが、時々動かすことで、自動巻き機構を含めて時計の不具合は起こりにくくなります。

リバーサー

ETAやセリタなど、汎用エボーシュで多く用いられるリバーサー。切り替え伝え車(リバーサー)を使うことでローターの左右回転を一方向に整流する巻き上げ機構で、歯車と小さな爪だけで構成されるため、コンパクトなうえ大量生産に向く。しかし、油が固着した場合は交換対応となる場合が大半だ。