ウォッチジャーナリスト渋谷ヤスヒトの役に立つ!? 時計業界雑談通信
ブルガリ、ジェラルド・ジェンタ、ブライトリング、ジラール・ペルゴ、ユリス・ナルダン、MB&F、ドゥ・ベトゥーン、ウルヴェルクは、新型コロナウイルス問題で中止になった「WATCHES & WONDERS GENEVA」の開催期間とほぼ同じ4月26日~29日の4日間、ジュネーブで「ジュネーブ ウォッチ デイズ 2020」を開催すると発表した。
「ジュネーブ ウォッチ デイズ 2020」とは?
去る3月2日、ブルガリ、ジェラルド・ジェンタ、ブライトリング、ジラール・ペルゴ、ユリス・ナルダン、そして独立系のMB&F(マキシミリアン・ブッサー&フレンズ)、ドゥ・ベトゥーン、ウルヴェルクは、新型コロナウイルス問題で中止になった「WATCHES & WONDERS GENEVA(ウォッチイズ&ワンダーズ ジュネーブ)」の開催期間とほぼ同じ4月26日(日)から29日(水)の4日間、ジュネーブで「GENEVA WATCH DAYS(ジュネーブ ウォッチ デイズ)2020」を開催すると発表した。
その後に届いた参加予定ブランドのリリースでは、このイベントはあくまで今年の緊急事態に対応する代替イベントで、長期的なものではないと断った上で、ジュネーブ市と協力しながらスイス時計誕生の地で、各国開催の個別イベントではなく、一挙にブランドの新作に触れることのできる機会を作ろうというもの。参加ブランドは運営委員会を立ち上げ、会場となるホテルやブティックなどで、スイス連邦政府が新型コロナウイルス対策のために定めた基準に該当する安全なかたちでイベントを開催したいとしている。
また参加ブランドは、上記の8ブランドだけでなく、現在調整中で、さらに増える可能性が高い。ブルガリと同じLVMHグループの他ブランドや、ジュネーブに拠点を持つ大手ブランドなどが続々と参加して、より多くのブランドを巻き込んだイベントになるかもしれない。
この情報を知ったのは、ジュネーブとバーゼルの2大時計フェアの中止と「その後」をお伝えした前回のコラムを書いた直後だった。エアチケットとホテルの予約キャンセルを考えていたところでもあり「これは、少なくともジュネーブでは取材ができるのでは」と思った。海外出張に会社からNGが出ている社員編集者を除けば、筆者のように考えた時計関係者も多いのではないだろうか。
しかし、発表されたリリースを細かくチェックし、さらに参加予定ブランドの関係者に確認すると、どうやらこのジュネーブ ウォッチ デイズ 2020に日本から参加するのはかなり難しいイベントのようだ。
突如浮上した新イベントはヨーロッパ向け!?
まずこのイベントは「ヨーロッパのリテーラー、メディア関係者向けのイベントだ」と記されている。また参加ブランド関係者からは、筆者の問い合わせに対して「アジアからの参加者は予定されていないようだ」との情報もある。
まだハッキリと断言したブランドはなく、あくまでも運営委員会や各ブランドの判断だが、「アジアから来た=新型コロナウイルス感染者の可能性が高い」と考えて、日本からの参加および取材が現地で断られる可能性は否定できない。
2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)騒ぎのとき、香港や中国からの出展関係者がシャットアウトされたことを考えれば、時計ブランド関係者がOKを出しても、ヨーロッパからの参加者から不安や抗議の声が高まることは、残念だが十分に考えられる。現時点で明確な宣言はないが「日本からの参加はお断り」となる可能性もある。
ただ、スイス・ジュネーブへの入国は、日本やスイスでパンデミック(感染爆発)がこれから1カ月後の4月中旬まで起きない限り、おそらく従来通りに可能だろう。なぜなら、スイス連邦政府の新型コロナウイルス対策は、日本のように場当たり的で衝動的、非科学的で政治的でもなく、冷静で適切だからだ。
これは筆者の私見だが、この日本では、感染症の専門家や教育関係者の意見を一切聞かずに学校の一斉休校を首相が独断で決めるなど、科学的な根拠に乏しい衝動的な対応を採っているため、新型コロナウイルスのリスクが正確に評価されていない。そのため、必要以上に恐れている人が多いと思う。
だがスイスはそれとは対照的だ。3月14日午前9時の時点で、スイス国内で確認された新型コロナウイルスの感染者は1139名。日本と同様にスイスもすでに「誰が新型コロナウイルスに感染してもおかしくない」市中感染と呼ばれる段階にある。そのためか、この状況で、日本は感染国に認定されているが、特に日本やアジア各国からの旅行者を国別にシャットアウトする措置は取られていない。
つまり、日本からの参加の可否は、スイス連邦政府の防疫対策よりも、このイベントに参加する時計ブランドの判断にかかっている。こう考えた方が適切だ。まだイベント開催まで1カ月以上あるが、現時点での情報を総合すると日本からの参加・取材は難しいと考えておいた方が良いだろう。
運営委員会の中心的な役割を果たしているビッグブランドには、日本からの参加・取材の可否を、できるだけ早くハッキリさせてほしいものだ。
渋谷ヤスヒト/しぶややすひと
モノ情報誌の編集者として1995年からジュネーブ&バーゼル取材を開始。編集者兼ライターとして駆け回り、その回数は気が付くと25回。スマートウォッチはもちろん、時計以外のあらゆるモノやコトも企画・取材・編集・執筆中。